見出し画像

フィンランド、NATOに加盟:世界が注目する戦略的な動き

なぜフィンランドのNATO加盟決定がロシアを終わらせるのか?

2023年4月4日、驚くべきニュースが届きました。フィンランドがNATO(北大西洋条約機構)に正式に加盟したのです。これまでフィンランドは軍事的中立の立場を保ってきましたが、ロシアのウクライナ侵攻を受け、この重大な決断を下しました。そして、この動きはフィンランドをNATOの31番目の加盟国にしたばかりでなく、世界的な話題となりました。

この加盟により、NATOの戦力がさらに拡大することが確定しました。しかし、一方でロシア側は西部と北西部で軍事力の強化を進めると宣言しました。また、現状ではスウェーデンのNATO加盟は未だ確定しておらず、ハンガリーとトルコが証人保留の立場をとっています。

フィンランドがNATOに加盟するまでには、まずアメリカを含むNATO加盟30カ国全ての承認が必要でした。トルコは最後まで証人の立場を保っていましたが、ついにフィンランドの加盟申請を承認。トルコ議会での投票は276対0という圧勝で、その結果がアメリカ政府に通知され、フィンランドは新たな加盟国として受け入れられました。

フィンランドはもともとNATO同盟国と協力的な関係を持っていましたが、この公式加盟により、今後フィンランドはNATOの第5条と集団防衛政策によって保護され、フィンランドへの攻撃が全てのNATO加盟国への攻撃とみなされることとなりました。

しかし、フィンランドのNATO加盟による影響は、ロシアとの関係にも及びます。フィンランドとロシアは1300km以上の国境を共有しており、フィンランドの加盟により、ロシアとNATOの国境が大幅に広がることとなりました。これはロシアにとって不利な条件となるでしょう。

フィンランドの大統領、サウリ・ニニストは、NATOの30カ国の支援に感謝し、フィンランドがNATO同盟の安全保障に全力で取り組み、強力な同盟国となることを約束しました。また、トルコのエルドアン大統領がフィンランドのNATO加盟に承認を出した理由として、フィンランドの安全保障に対する本格的で具体的な取り組みを評価していたことが明らかになりました。一方、トルコはスウェーデンがクルディスタンの過激派や反イスラム事件に関する懸念を十分に解決していないと主張しており、スウェーデンの加盟にはまだ承認を出していません。

これらの動きは、今後の世界の安全保障情勢に大きな影響を及ぼすことでしょう。私たちは、これらの国々の戦略的な動きに注目しなければならないでしょう。


フィンランドのNATO加盟とその波紋:地政学的な視点から見る

エルドアン大統領が5月の重要な選挙を控え、国内政治的な利益を考慮し、スウェーデンのNATO加盟に対する支持を保留しているという憶測も飛び交っています。選挙後に反対立場を撤回する可能性も存在します。

フィンランドのNATO加盟は、スウェーデンにも重大な影響を及ぼします。地理的に見れば、フィンランドの加盟により、スウェーデンはNATO加盟国に完全に囲まれることになり、これにより一部の安全保障上の問題が軽減されるでしょう。フィンランドの首相、サンナ・マリンは、フィンランドがスウェーデンのNATO加盟を支持する意向を示しています。

また、このフィンランドの加盟がロシアとウクライナの紛争にどのような影響を与えるかについても考察する必要があります。フィンランドのNATO加盟により、NATOが最終的な勝利を得る可能性が大幅に高まったとも言えます。ロシアはウクライナ侵攻で10万平方キロメートル以上の領土を占領しましたが、既に何十万人もの兵士を失っています。

ロシアの侵攻は、元々、NATOの進展に対する恐れから始まったものでした。しかし、フィンランドのNATO加盟により、ロシアが守ろうとしていた国境線が逆に広がる結果となり、最悪の事態に陥ってしまいました。

地理的にも、フィンランドはロシアのコラ半島に近く、そこにはロシアの核兵器の大部分と最大の海軍基地であるムルマンスクが存在します。北極北西温帯気候のコラ半島は北大西洋海流の影響で海が一年中凍結しないため、世界最北の不凍港とも呼ばれています。

フィンランドのNATO加盟により、これらの戦略的な地点がNATO軍の砲撃範囲に入る可能性があり、特殊部隊がこの地域を制圧する機会

が増えます。また、供給路であるR21高速道路の遮断も容易になるでしょう。これはロシアにとって、その地域における戦略的な優位性を損なう可能性を意味します。


フィンランドのNATO加盟とロシア: 冷戦時代の影響と新たな勝利

ロシアはウクライナに対する侵攻の目的が、NATOの国境への接近を阻止すること、あるいは国土を広げることであったとすれば、大きな視点で見るとロシアは戦争に敗北したと言えます。ロシアはウクライナ戦争で大きな損失を出しましたが、フィンランドは一撃も打たずにNATOに加盟することができました。これは、NATOとフィンランドにとって大きな勝利となりました。

しかしながら、ロシアはフィンランドの問題に対してウクライナと比較すると、それほど深く関与していないように見えます。フィンランドはウクライナよりも堅固な防衛体制を整えているため、侵攻は非常に困難と見ているのかもしれません。また、過去にフィンランドとソビエト連邦が交えた冬戦争の経験も、この視点に影響していると考えられます。

冬戦争は、ソビエト連邦がフィンランドの領土を要求し、その要求をフィンランドが拒否したことで開始されました。しかし、フィンランド軍は予想外の抵抗を示し、ソビエト軍を苦戦させました。フィンランド軍は地形や気候を活用し、スキーで機動力を発揮し、火炎瓶を使った独特の戦術を用いてソビエト軍を撃退しました。

そして、フィンランドの狙撃手たちの活躍が素晴らしかったとされています。白い死神と呼ばれる狙撃手が有名ですが、他のフィンランド狙撃手たちも、800m以内での射撃はほぼ外さず、高い技術力を持っていました。特に巧みな狙撃手たちは、マキシム機関銃の盾に空いた隙間から敵を倒すことも可能だったと言われています。

冬戦争中の一戦、スオムッサルミの戦いでは、フィンランド軍は村を焼き払い、進軍するソ連軍をマイナス40度の寒さに晒しました。これにより、ソ連軍の指揮系統が低下し、フィンランド軍はソ連軍を壊滅させました。この戦いでは、フィンランド軍は数で劣る自軍に対して、ソ連軍に10倍の損害を与えることができました。この出来事は"雪中の奇跡"と呼ばれています。

冬戦争は1940年3月にモスクワ条約が結ばれ、終わりを迎えました。フィンランドは領土の一部をソ連に割譲しましたが、国体は維持できました。この戦争はフィンランドの国民的誇りと団結の象徴となりました。

その後のフィンランドは、冬戦争の経験からロシアの侵攻に対して長年に渡って備えを続けました。戦争は完全には思う通りにはいかなかったものの、フィンランドがロシアに対して十分に戦うことができる力を持っていることを示しました。そのため、フィンランドはロシアの攻撃に対して常に警戒を続けていると言えます。


フィンランドのNATO加盟とロシアの戦略: 増大する脅威とロシアの対応

フィンランドは、NATOにとって非常に価値のあるメンバーとなっています。その理由は、ロシアと戦う準備ができているだけではなく、軍事力の大部分がNATOの基準に達しているからです。フィンランドは長い間、NATOへの加盟を視野に入れていました。その結果、フィンランドは現在、NATO基準に適合する高度な軍事能力を保有しています。

ロシアにとって、フィンランドのNATO加盟は脅威となっています。ウクライナ戦争で多くの兵士と戦車を失ったロシアは、フィンランドのNATO加盟により更なる困難を抱えることとなりました。そして、その困難はNATOの勢力が拡大することでさらに高まっています。

しかし、ロシアは戦争を続けています。その理由は、NATOの国境を自国からできるだけ遠ざけるためです。その一環として、ロシアはベラルーシに戦術核を配備し、ウクライナへの支援を牽制しています。

それにもかかわらず、核兵器がロシアにとってそれほど重要ではないとも言えます。実際には、ロシアの核兵器の大部分はモスクワではなく、コラ半島に存在しています。そして、この地域の核兵器が問題となっています。しかし、NATOがこの地域に介入できるようになったため、核兵器の議論はあまり意味をなさなくなっているかもしれません。

現在の状況から見ると、ロシアが戦争で大逆転するシナリオは、ウクライナで現在の3倍以上の勢力を展開できた場合だけです。しかし、その可能性はかなり低いと考えられています。このような背景から、ロシアはかつてないほどの困難な状況に直面しています。

地図を一目見るだけでも、その状況は明らかです。彼らは今や西部戦線でNATOに囲まれ、かつての優位性はほぼ喪失されているのです。

この状況に誰が責任を問われるべきでしょうか?ロシアのウクライナ進行は、彼らが複数の国を侵略する意図を露わにしています。この事実に対し、フィンランドは一貫してロシアの脅威を認識し、対抗策を講じてきました。フィンランドの歴史には、冬戦争という苦い経験があります。そのため、彼らは再び同じような戦争を避けるためにNATO加盟を主張してきたのです。

フィンランドがNATO加盟を求めたのは、間違ったことではありません。それはロシアを脅威と捉える彼らの立場から自然な選択でした。フィンランドはロシアと国境を接する数少ないNATO非加盟国の一つで、ロシアの侵略的行動を直視せざるを得なかったからです。

現在、ロシアはNATO非加盟国の侵略を続け、ウクライナを占領し、その土地を併合しています。フィンランドはこの現実を目の当たりにし、自身がウクライナのように侵略される前にNATOの助けを求めました。これは、プーチンのリーダーシップ下で始まったロシアの行動が、皮肉にも他国のNATO加盟を促進する結果を生んでいるという事実につながります。

もしNATOの拡大が問題であるなら、ロシアはその理由を世界に示し、各国を説得すべきだったでしょう。しかし、彼らはそれを成し遂げられず、国内で人口危機に直面する中、若者たちを戦争へと送り続けています。

ロシアが何を目指しているのかは不明です。もしかしたら、彼らはかつてのソ連帝国を再現しようとしているのかもしれません。しかしながら、東ヨーロッパは強く反ロシア的

であり、特にバルト三国(エストニア、リトアニア、ラトビア)やポーランドなど、ロシアに対する評価が悪い国が多く存在します。ロシアの影響力は大きく失われており、かつてのようなヨーロッパに対する影響力はほとんどありません。ウクライナでの戦争は、ロシアにとってNATOの国境拡大と重要な戦略拠点の危機をもたらす結果となりました。


欧州エネルギー依存とプーチンの権力: スウェーデンのNATO参加と新たな揺れ動き

更に、ヨーロッパ各国はロシアのガスや石油への依存が問題であると認識し始めています。ドイツなどの国々は、ロシアのエネルギー資源から離れ、アメリカのような国々に目を向ける動きを見せています。

プーチンがこの戦争から実際に得るものは何なのでしょうか。ウクライナ侵攻では多くの自国の兵士を犠牲にしているにも関わらず、彼が権力を維持できる理由が疑問です。その秘訣は、国民を自分の側につけることにあるかもしれません。国境なき記者団によると、ウクライナへの軍事侵攻が始まってからロシア国内の報道の自由度が下がっているとのことです。これはニュースや情報がプーチン政権によって完全に支配されていることを示しています。

プーチンが権力を手放さない理由の一つは、彼の豪華な邸宅や膨大な財産かもしれません。彼はこの戦争を続けることで権力を維持しようとしているのかもしれません。しかし、ウクライナ戦で敗北しても、彼が権力を手放すことはないでしょう。

NATO加盟とクルド問題: スウェーデン、トルコ、フィンランドの緊張関係

世界の注目は今後どこに向かうのでしょうか。

スウェーデンのNATO加盟が一つの焦点となっています。クリステンション首相はフィンランドのNATO加盟を祝福し、NATOとその近隣国が強くなっていると述べています。しかしながら、スウェーデン国内では不安も高まっています。実は、フィンランドと同時にNATO加盟申請を行ったスウェーデンは、フィンランドに先を越されてしまったことで、自国がNATOの外に置かれることを心配しているのです。これは、ロシアによる挑発や影響にさらされる危険性が増しているとの指摘もあるようです。

さて、トルコとスウェーデンの関係はどうなっているのでしょうか。2023年1月下旬には、ストックホルムのトルコ大使館前でデモが発生し、イスラム教の聖典コーランが焼かれたとの報道があります。

この緊張が高まる一方で、スウェーデンのNATO加盟申請はトルコにとって最初から問題だったのです。独立を目指す※クルド人の非合法武装組織、クルド労働者党PKKがスウェーデンに活動拠点を持っているとされているためです。

エルドアン大統領はこの問題に対応するため、スウェーデンに対して身柄の引き渡しを求める120人のリストを送り、NATOへの加盟にはこれらのテロリスト問題を解決する必要があると迫りました。この問題は、2011年にシリアで内戦が勃発した際にも影響を及ぼしています。内戦時にクルド人勢力が台頭し、NATO加盟国であるアメリカなどはシリア政府打倒のためにクルド人勢力を支援したのです。しかし、これはトルコにとってはアメリカがテロリストを支援しているという解釈となり、トルコは独自にシリアに介入し、クルド人勢力を攻撃しました。

エルドアン政権は、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟申請に対してテロリストを支持していると批判し、反対の立場を続けています。一方、フィンランドとスウェーデンは人道的な観点からクルド人難民を受け入れ、その政治活動を容認してきました。これらの国は欧米でも特に人道問題に敏感な国として知られており、このクルド人問題がNATO加盟交渉の中で焦点になりました。しかし、最終的にはクルド問題よりNATO加盟が優先されたようです。

クルド人について

クルド人は、西アジアのイラン、イラク、シリア、トルコの四カ国にまたがる地域に住む民族です。彼らの人口は全体でおおよそ3000万人から4000万人と推定されており、彼らはイスラム教(主にスンナ派)を信仰することが多いです。

クルド人は彼ら自身の民族国家を持つことなく、四カ国に分割されています。これは、彼らの歴史的な要求に対して、四カ国それぞれの国家主義と相反するためです。それぞれの国で、クルド人の文化や言語、政治活動が抑圧されることがあり、これがクルド人の反乱や抵抗運動を引き起こす要因となっています。

特に注目すべきは、イラク北部のクルド人自治区と、シリア北部でクルド人が自治を実質的に実施している地域です。これらの地域では、クルド人が自己決定を行い、自分たちの社会と政治システムを形成しています。

クルド人は、中東地域の様々な軍事的な衝突に関与してきました。イラクのサッダーム・フセイン政権の打倒や、イスラム国(IS)との戦いでは、西側諸国と提携して積極的に戦ったことで知られています。しかし、このような彼らの活動は、特にトルコやイランなどの国にとって脅威となるもので、そのため彼らはクルド人の独立運動を弾圧し続けています。

クルド問題は非常に複雑で、地政学的な緊張や歴史的な背景、民族対立、宗教的な問題など、多くの要素が絡み合っています。この問題の解決は容易ではなく、中東地域の平和と安定を巡る重要な課題となっています。

いいなと思ったら応援しよう!