全然好きじゃない人と結婚したら幸せだった
私は多分、夫にときめいた事がない。
顔がタイプな訳じゃないし、好きな食べ物も、好きな映画のジャンルも、好きな漫画のジャンルも全然違う。
彼は私が大好きな「3月のライオン」を全巻買い揃えておきながら、1度も読んでくれた事がないし、私が大好きなチーズケーキも嫌いだ。
私が高校生だったとしたら、多分、恋愛に発展しない相手だ。
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元々、愛されるより愛したい病の患者だった私。
それ故に数々の失敗を経験してきた。「なんで私は普通の恋愛が出来ないんだろう?」とか言いつつ、すーぐ脈のない相手に恋しちゃってたし、彼氏ができても地雷化する「鉛よりも重たい女」を繰り返してきた。
そして、私は26歳になった。
その当時付き合っていた大好きな人に「もう、疲れた。」とか何とか言われて振られた。
傷心で、でもこれはアカン、と本気で焦った。
大好きなドラマ、「やまとなでしこ」の桜子さんの統計によると「女の1番の売り時のピークは27歳」とのこと。
よし、次に付き合う人と、ぜーったいに結婚する。
「たった1人の人」を見つける!
私の決意を聞いた友達が、それはそれは色んな合コンを開いてくれた。誰かを紹介してくれたりもした。
私も、積極的に出会いの場に足を運んだ。
性根が引きこもりだから、合コンなんて嫌いだけど、26歳、彼氏なしで、田舎で働いていて、自分で努力しないで素敵な出会いが自動的に降ってくるなんて有り得ないと思ったから。
あの桜子さんだって、合コンで欧介さんに出会ったんだから!
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夫とも、合コンで知り合った。
なんでか何度もごはんに行こうと誘われて、なんとなく行って、告白されて、友達からでお願いします。と答えたのに、それから1ヶ月くらい、なんだかんだ理由をつけて会わなかった。
なんと、それでも彼は諦めずに私を誘い続けてくれた。
「今日は資格試験があるから会えません。」
「試験頑張ってね。終わったら、打ち上げしよう。」
「具合が悪くて会えません。」
「お大事にね。治ったら元気が出る美味しいもの、食べに行こう。」
彼は断っても断っても、優しい返信をくれた。絶対に怒ったりしなかった。永遠に穏やかで優しいのだ。
うーん、こんな人、初めてだ。
こんなに私を好きでいてくれる人はそうそう居ない。そう思ったけれど、正直会うのは乗り気がしなかった。最低な女だ。
でも、こんなに私を好きでいてくれて誠実な人だ。
もしもこの人を好きになれたら、幸せになれるかもしれない。
彼には、そう思わせる不思議な力があった。
「鉛よりも重たい女」でおなじみな私だけど、彼の前では冷静に、思いやりのある言葉を選んだり、判断する事ができた。
そうこうして過ごしているうちに、ある時気が付いた。
彼といる時の自分が大好きだ、と言うことに。
これって、俗に言う「安心感」ってやつなのか?恋には色んな形がある。この穏やかで、幸せな感じ。これも、恋とか愛に入れても良いんじゃないのか?
こんな事を考えているうちにいつの間にか、友達じゃなくて、ちゃんと付き合うようになっていた。
出会ってから7年ちょっと。思った通り、最初から今までずーっと幸せだ。
私にとって大切なのは、誰を好きなのかよりも、誰といる自分が好きか、だったみたい。夫といる私は穏やかで冷静だ。やっぱり私は今でも、夫といる時の自分が大好きだ。
ときめきがなかったら、ドキドキしなかったら「好き」じゃないのか?いや、多分それは違う。
穏やかで優しい、私にとって「たった1人の人」。10年後も20年後も、一緒にいたい、大切な人。
残念ながらときめきはないけれど、夫といると私は幸せなんだ。
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愛されるより愛したい病の全女子に告ぐ。騙されたと思って愛されてみて欲しい。
あなたに幸あれ。