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第11回 お店の真向かいにもう1店本部が出店するみたい…心配です。

立地と商圏のの見かたを知ろう

ほとんどのコンビニ経営者は、自分のお店のすぐ近くに新しい店舗ができると聞くと自店への影響はどうなるのかとても心配になります。しかし既存店への影響は、単に新店舗との距離だけでは測れません。既存店の商圏と新店舗の商圏がどれだけ重複するかで決まります。例えば商圏が違えばお店同士の距離が至近でも、全く影響を受けずに2店舗が成り立つと言え、店間距離に関わらず、それぞれの商圏をターゲットにした出店可能ゾーンが設定できるということです。
言い換えるとひとつの出店可能ゾーンに自チェーンのお店は1店が大原則です。

簡単な例で見てみましょう

幹線道路の中地の既存店でお店の前には中央分離帯があります。商圏は背後の住宅、事業所と前面道路を通行する車です。一番立地となる角地には出店余地が無く、図①のように反対車線側の目の前の中地に新店が出店した場合はどうでしょうか?

(note)2020年11月号図表1


既存店を利用しているお客様は、日常の通勤通学や買い物等の生活シーンの中で新店舗の前を歩く人は殆どいません。また既存店を利用している車で新店舗の前を通行する車も全くありません。一方、新店舗の商圏は駅側の住宅、事業所と中央分離帯で分断された既存店の反対車線側を通行する車です。
これは別商圏として出店可能ゾーンが新店舗側にもうひとつある事を意味します。故に至近であっても既存店への影響は全く無く、新店舗との共存が可能です。

図②のように、同じ距離、位置関係でも駅から既存店に向かう道路が繋がっていたらどうでしょう?

(note)2020年11月号図表2

既存店を利用しているお客様が駅から帰ってくる場合、殆どが新店舗の前を歩いて帰ってきます。こうなると新店舗のターゲットとする商圏は駅側に加え、既存店の商圏と重複する事になり、大きな影響を受けます。この場合は駅から既存店へ向かう道路上がひとつの出店可能ゾーンとなります。
新店舗は既存店と同一のゾーンに位置する事になり、併存が難しい事がわかります。

ロードサイド立地の場合

お店の前を通行する車客だけを商圏とするロードサイド立地の場合、既存店と新店舗の距離が1km離れていたとしても、新店舗が同じ車線側で間に交差点が一つも無いとしたら、出店可能ゾーンはひとつとなり併存は出来ません。
なぜなら既存店の前を通行する車のうち、新店舗の前を通行する車が100%重複することになるからです。この重複比率を車導線の『共通比』と言います。交差点等で車が流入出を繰り返す事で共通比が下がれば別の出店可能ゾーンとして考えることが出来るようになります。
共通比の考え方は、また別の機会に説明させていただきます。

既存店の受ける影響度とは

これらの考え方をベースに新店舗との距離、共通比(人・車)、商圏との位置関係(商圏に近い方が優位)、駐車場要素(面積、視界性、接近性)、店舗面積、免許条件等の優劣により既存店の受ける影響度は大きく変化します。
仮に同一出店可能ゾーン内で新店舗の候補地が一番立地で、且つその立地に相応しい店作りが出来る場合は、スクラップ&ビルドでの移転が望まれます。逆に候補地が既存店よりも劣る立地の場合は同一出店可能ゾーンに1店のセオリー通り、出店すべきではありません。また「他チェーンに出店されてしまうから」という理由であれば尚更です。他チェーンが出店しても既存店に勝つことは出来ませんし、無理に複数店での出店をしたとしても商圏が拡大する訳ではないのでトータルの売上と経費で今まで以上の利益を上げることは難しいでしょう。それよりも既存店の活性化(駐車場面積の拡大、進入口の改善、売場面積の拡大等)の対策が有効です。
但し例外もあります。それは既存店の商圏のボリュームが非常に大きく、現時点で機会損失を多く発生させている場合です。例えば超高層のオフィスビルでは一棟の中の低層階と高層階で2店舗が成り立っている事例もあります。

noteアイコン(ドミナント)

ドミナント出店(高密度多店舗出店)

コンビニエンスストアの出店戦略の要です。本部とオーナーさんが既存店周辺の出店戦略(①既存店をどのように活性化し、②どこに商圏を設定して出店可能ゾーンを増やし新店舗を開店していくか)のプランを常日頃から共有していれば、ドミナント問題が発生することはあり得ません。
ただ問題の多くは本部による唐突な出店説明から始まります、何故ならコンビニエンスストアを『出したい場所』と容易に『出せる場所』が違うからです。
オーナーさんが無闇に出店を反対しチェーン全体の繁栄を阻害する事は、延いては自店を弱めることになるため戒めるべきですが、本部が『容易に出せる場所』を提案してきた場合は、出店コンセプトについての徹底的なディスカッションが必要でしょう。
本部とオーナーさんの対等な立場での切磋琢磨がチェーンを強くします。

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