「アンリの靴」という作品に触れて。
先にamazonのリンクを貼っておきます。
アフィリエイト等はやっていないので、お気軽にアクセスしてみてください。
そして、ぜひ作品に触れてみてください。
何度か私の記事で取り上げていますが、私は靴が好きです。
特段こだわりが強いわけでも、知識があるわけでもないですが、頑丈な靴に憧れます。
だからなのか、日常履きの靴はつま先に鉄芯が入った安全靴が多いです。
(((危険な場所にはいきませんが)))
今回冒頭でリンクを貼った漫画作品「アンリの靴」は靴職人が主人公のお話です。
とても素敵な作品でした。
全2巻を完走しましたが、なんともなんとも。
今回の記事は、感想よりも読んで思い出した話をつづらせていただきます。
さて、靴に関する思い出というかエピソード。
どなたでもお持ちなのではないでしょうか。
私には、大切にしたい思い出の靴があります。
私が今より若い頃。
払わなければならないものを払うのが苦しく、衣食住の衣と食を削っていた頃がありました。
服や靴は動ければいいし、お腹が空いたら鶏がらスープの素を口に含んで水を飲んでいました。
そんな生活なので、生活に必要な物であっても、こだわる余裕はありませんでした。
私は靴が好きです。
高校生の頃に"スニーカー"の楽しさを知りました。
バッシュでムーンウォークの練習をしていました。
いつかはいい靴を履きたいと願いつつも、無味乾燥した日々を過ごしていました。
ある日のこと。
見たら買い換えないといけなくなるので、見ないようにしていた靴底を見てしまいました。
悲しいほどにすり減り、ツルツルのペッタペタでした。
生活の中に買い替える余裕は無かったので、その日も仕事へ行きました。
仕事中、外で話していると雨が降ってきました。
私「あ、降ってきましたね、中入りましょうよ」
と、話しながら歩いていると鉄板に足を滑らせて派手に転びました。
上司「Soneちゃん大丈夫か!」
担ぎ起こしてくれた上司に感謝を伝えつつ、カメラバッグのカメラを急いで確認します。
私「カメラ無事っす、ビビったっす」
上司「Soneちゃん、うで、腕!!」
目をやるとシャツが破れ、腕時計のガラス風防が割れていました。
私「あー、気に入ってたのに…」
上司「腕やってないか?大丈夫か?」
私「大丈夫です、擦ってますが痛くないです」
上司「ここ滑るから気を付けないとだね」
私「そうですね、先輩も気を付けてください!うへへ。」
「靴が寿命なんだと思います…」とは言いかけて言えませんでした。
ある日のこと。
何がどうなって、どんな流れの話だったのかは覚えていませんが、家族が私に靴を1足、くれました。
オックスフォードシューズと言うのでしょうか。
私ですら知っていた、けれど縁がないと思っていたブランドの靴でした。
私「いやいや、働いてるんだから自分で靴、買い換えるよ」
家族「いや、あの靴はダメでしょうが」
私「ありがとうございます」
私は深々と頭を下げました。
高級な靴とは言わん、普通の靴が欲しい。買えないのがやるせない。
そう思って、少し泣いた気がします。
そして、私の足には少し大きな靴でカッポカッポ歩く日々が始まりました。
雨の日に白線を避けなくてもいいグリップ力に感動したり、数億年前に購入したであろう備品で靴を磨いたり。
生活は地味でしたが、家族からいただいた靴は最高に最高でした。
そんな靴と歩いて数年。
甲の部分が痛んできたり、靴のかかと部分のヒールが削れてきたり…と、少し気になり始めたので、ネットでたまたま検索した靴屋さんに連絡を取って、靴を見てもらいました。
大きな病院のそばにその靴屋さんはありました。
店内には沢山の木型が並んでいます。
靴屋さん「あー、けっこう履いてるね、うーん。でも、まだ革も柔らかいし、ソールも大丈夫かな。でもオイルは入れすぎかな、大事にしてる人ってオイル入れがちだから、大事にしてるんだね。カカトのヒール付け替えれば、まだ履けると思うよ」
私「ありがとうございます、実はこの靴、生活がどうしようもなくて靴すら買えなかった時代に、家族が贈ってくれたんです。靴の修理を靴屋さんにお願いするのって初めてなんですけど、多少お金がかかっても大丈夫です、修理をお願いします」
靴屋さん「そういう話を聞いたら直さないわけにはいかないね」
後日、ガッチガチのヒールがついた靴が返ってきました。
その靴屋さんは装具士さんでもあり、市販の靴を改造していたり、オーダーメイドで靴を作ったりしているそうです。
私がそれまで持っていた靴へのイメージは、装飾性が強く、いずれ壊れるものにお金をかけるなんて…というものでした。
安全靴は様々な基準はあれど、使い捨て。
ファッションにも流行で流行り廃りがあるんじゃないの?と。
しかし、その靴屋さんで見せてもらった整形靴は質実剛健で、素敵でした。
1人1人に合わせた特別な靴。
その靴で歩けるようになった人も、きっといらっしゃるのでしょう。
靴は大切。本当に大切。
靴に対しての誤解があった事を私は恥じました。
「靴は無くてはならない基本で、まずはその基本がなければ応用も何もないよな」
そう思いました。
そこから数年。
カッポカッポ歩く靴はまだ健在です。
靴屋さん「靴底を全部張り替えることもできるから、まだまだ歩けるよ」
と、言ってくれています。
しかし、やはり私の足には大きくて。
足が靴の中で滑るんです。
中敷きを足しても、滑り止めを入れても、靴ひもをガチガチに締めても、歩きにくいのです。
少し前に足を図ってもらったところ、私の足とその靴は1.5cmのサイズの差がありました。
私「うーん。この靴をオールソールしてもらって履くのもいいんだけど、歩きにくいし走れないんだよなぁ…うーん…」
私はその靴を最初に来た時の靴箱に仕舞って、少し高いところに置きました。
そして
「お世話になりました、あの頃、本当にありがとうございました。ゆっくり休んでください。」
と、頭を下げました。
手放すには、あまりにも多くの思い出が詰まっています。
せめて手元に置いておきたい。
そして、カビも乾燥もしないように定期的に手入れをしていこうと思います。
まずは一歩。
カッポカッポ歩いていた日々は忘れずにいたいし、あの靴はずっと大切な相棒です。
これから先も大切にしたい靴の話でした。
…みたいな話を思い出してnoteに書き込みたくなるから、「アンリの靴」ぜひ読んでください!
すごく素敵なお話でしたよ!!
オススメです。
現場からは以上です。
ではまた。