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不登校の子の背中を押すのと見守ることのバランスを高卒認定試験の事例より検討

不登校になると、見守ることと背中を押すことのバランスに悩みます。

基本的に思春期になると、大人に干渉されたくはありません。
とはいえ、不登校という難局で自分一人で自発的に動き出せるかというと微妙なところです。

このバランスは人によってかなり違います。
人によっては「殴ってでも動かしてくれれば良かった」と後で文句を言う人もいます。

逆に「一切、干渉してくれるな」という子もいます。

難しいのは言葉で明確に説明してくれることは「少ない」ということです。
行動や表情などから読み取るというか、推理しなければなりません。

今回は高3の子が高卒認定試験をきっかけに動き出した事例についてご紹介いたします。


親と口をきかないS君

S君は中3で不登校になりそれ以来、部屋にひきこもりがちで親と話すことは全くなかった。
そして高3の9月。

カウンセラーやお医者さんからは見守るようにと言われていたが親もさすがに焦りだす。
もう4年になるのだ。

私はS君の親御さんにこうアドバイスした。
「高卒認定試験の出願をしましょう」と。
S君の友達は大学受験をするようで、S君は大学に行きたがっている節があると聞いたからだ。

そこで、S君の親は高卒認定試験の願書を出願。
とはいえ、本人は受ける気配はない。
親としては受験料の8千円が無駄になっても仕方ないという心境であった。

そこでS君に耳寄りな情報が届けた。
科目履修制度というものがあり、1科目合格すれば他の科目はレポートで良いこと。

つまり、国語だけ合格すれば他の科目はレポートで良いという制度なのだ。
にわかには信じがたい制度だが事実である。

詳しくはこちらより

さらに、国語で出際されるのは古文や漢文の範囲は少ない。
基本的には簡単な日本語の文を読んでマークシートに〇をつけるだけ。

マークシートは5択なので仮に日本語が一切読めなくても20点は取れるのである。
そして合格点は40点。
中3まで学校に行っていたS君であれば楽勝である。

この2つをお伝えした。
S君は黙って聞いていたがピクっと動いた。
人間、希望が見えれば動きたくなるのが人情である。


試験まで動かず


試験の1週間前、S君は勉強する気配がない。
試験の前日も試験を受ける気配はない。
しかし、印刷した過去問が動いている形跡からS君は過去問に目を通したようだ。

さて当日、S君は会場まで一人で行き、帰ってきた。
久しぶりの外出である。

もちろん受けたのは国語だけ。
自己採点をすると合格のようであった。

さて、国語以外の科目のレポートはどうしたか?
科目履修制度で合格するにはレポートを出さなければならない。

S君の親が3日で仕上げた。
英語に数学に社会に理科に。
親というものは有難いものである。

さて、これで高卒認定試験は合格である。
そのことをS君に伝えると、S君は涙を流して喜んだ。

「もう人生終わりだと思っていたが、なかなか動き出せなかった。
動こうとしても動けなかった。」

「でも希望が見えた。
またやり直せるかもしれない」と。

S君は予備校に行くようになり、現役で受験した。
そしてなんと駒澤大学の文学部の心理学科に合格し、将来は心理士を目指すとのことだ。

親は言う。
「現役で合格したので1年や2年留年しても大丈夫ですね。」

親と言うものは有難いものである。

まとめ

こういうケースは高卒認定試験や大学受験などで意外にあります。

動きたいけど動けない。
そこに希望が見えると人は動けたりするのです。

もちろん、似た状況でいっさい働きかけないという場合もあります。
ただ、S君は同学年から遅れることを非常に嫌がっていました。

人生はいつからでもやり直せますが、それもその人の気質にもよるでしょう。

S君の場合は選択肢を与えつつ、干渉しないという形が最適なようにも見えました。

こういうやり方もあるという話でした。




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