
2024.2 トヨタ産業技術記念館【愛知旅Day1】
こんにちは。
もう2025年なので一年前のことですが、2024年2月に行ったトヨタ産業技術記念館&トヨタ博物館の訪問記を書きます!
こちらの記事は、1日目「トヨタ産業技術記念館」のレポです。
トヨタ産業技術記念館とは何ぞや
愛知県名古屋市にある「トヨタ産業技術記念館」は、トヨタのメーカーとしての歴史や築いてきた産業技術を知ることのできる企業ミュージアムです。
クルマ好きそしてトヨタ好きの自分としては、かねてより行きたいと思っていた博物館でした。
ちなみに今回の旅の2日目の目的地である、愛知県長久手市の「トヨタ博物館」もトヨタが運営する博物館のひとつ。そちらは実車展示がメインの博物館です。
トヨタは今でこそ自動車メーカーとして世界に名を馳せていますが、はじまりは「豊田自動織機」という糸や布を織るための機械の会社でした。
日本初の自動はた織り機(動力織機)、世界初のシャトル交換式織機の発明など、繊維産業の発展に大きく貢献しました。

記念館はそんな自動織布工場の第一号の跡地、名古屋のまちなかにあります。
名古屋駅から一駅・名鉄本線の栄生(さこう)駅から徒歩3分というとんでもない好立地、すでに王者の風格…と思っていたら、そもそもの創業の地がここなんですね。
まずは繊維産業の展示から
初めの展示室は、連なった三角屋根から外光の差し込む広〜い空間です。

展示室を見るだけでも圧倒されますが、展示された機械の前に何名もガイドさんが立っており、説明&実演で機械の仕組みが手に取るようにわかります。
綿花から糸を作る仕組み、布を織る仕組み、この歳になって初めてちゃんと理解できた…
展示や教育普及の行き届き具合がハンパなく、伝えようとする努力をめちゃくちゃ感じました。

これだけの機械の動態保存、さらにガイドさんがフロアに何名も。運営を続けていくのは並大抵のことではないはず。
3000円は払いたいくらいの素晴らしい展示ですが、この時の入場料(*)はなんと500円でした…
(*2024年4月1日より大人1000円に値上がりしました。いや、それでも安すぎでは…⁉︎)


記念館の広大な展示室は大きく2つのパート(織機パート/自動車パート)に分かれており、織機技術の展示はここで一区切り。
すでに圧倒されていますが、このあとは個人的にお待ちかねの自動車パートが待ち構えています。
豊田さんちとの嬉しい共通点
トヨタの成り立ちを学べるミュージアムということで、創業家の豊田家、父・佐吉さんと息子・喜一郎さんの人物史の展示も。実はそこで嬉しい発見がありました。

トヨタ自動車創業者の喜一郎さんは6月11日生まれでなんと自分と同じ誕生日!
さらにトヨタグループ創業者・佐吉さんの誕生日(2.14)が母と同じ、喜一郎さんの命日(3.27)が祖父と同じことが判明しまして、勝手に運命を感じてしまいました。
展示パネルによると、この記念館も喜一郎生誕100周年の節目となる1994年6月11日に、産業遺産の保存活用・トヨタグループのモノづくりの理念を広く社会に伝えることを目的に開館したようです。

続いては自動車製造業の展示へ
父・佐吉がはじめた自動織機事業を大きく発展させることに成功した喜一郎が次に取り組んだのが、そう、自動車の開発でした。
1933年9月に豊田自動織機製作所が社内に自動車部を設置し、10月にアメリカのシボレーを購入して構造と材料研究に着手。
1934年の試作工場・製鋼所やA型エンジンの完成を経て、1935年に彼らが作った初めての生産型乗用車が「トヨダAA型」でした。
(時を同じくして、日産自動車も横浜で自動車作りをスタートさせています)
アメリカのオートメーカー・フォードが量産車の先駆け「T型フォード」を作ったのはそれより30年も前の1908年ですから、当時アメリカという国がどれだけ技術が進歩していたか、と驚かされます。
(ちなみにフランスの一大オートメーカー・シトロエンは1919年の設立でした)

「自動車づくり」と聞いてパッと思い浮かべるのは「すでにある部品を組み立てて車の形にする」というイメージでしたが(とはいえ、自動車のパーツは1台で何万個にも及ぶので、組み立て工程を考えるだけでも相当なものですが)、当時は国産自動車の前例が存在しない時代。
ボディやエンジン全てをゼロから作りだすところからトヨタの「自動車づくり」がスタートしました。


そして、創業期は戦時下。
激動の時代を駆け抜けたトヨタ自動車の苦労や気概の一端を、当時の社内報「トヨタニュース」や、資料展示を通して知ることができました。



戦後の自動車開発
歴史展示の部屋を抜けると、目の前に広い吹抜け空間が。

まずは2階の「時代を見据えた車両開発」と題された展示コーナーを進みます。
ここでは戦後のトヨタが時代のニーズを捉えてさらに発展していく過程を、実車(シャシーやエンジンも)や広告などの展示とあわせて追体験できます。

セルシオめっちゃ格好良い
個人的にひときわ魅力的に感じたのが、1989年発売の「セルシオ」(レクサスLS400)の開発エピソード。
国内顧客向けに作られた最高級車がセンチュリーやクラウンとすれば、セルシオは米国市場を相手にしたトヨタ代表ともいえるフラッグシップカーです。
発売当時の日本はバブル経済の真っ只中。国内のニーズもキャッチしてヒット作を作り続けていたトヨタですが、海外でも通用する高級セダンを作ろうとしました。
当時、まだまだ未踏の地であった海外の高級車市場にロックオンして見事に成功をおさめた…だけでなく、高級車開発に求められる世界基準が上がったとも言われるほど、トヨタのみならず世界の自動車づくりにおいてエポックメイキングな一台だったようです。
こちらのクルマ、調べれば調べるほどワクワクする開発エピソードがたくさん。
とてもここには記しきれないので、ぜひまた詳しい記事を書きたいと思います。

この角張りつつも滑らかなフロントフェイスが好みなんですよね…。
製造機械の展示も
実車展示の奥側では、製造工程で使われる実際の機械たちが動態で展示されています。



そこかしこで駆動音が響き渡っており、ものすごいインダストリアルな空気(?)に興奮してしまいました。
材料/評価技術の変遷
エンジン・塗装・ボディ・テストコースでの実験・環境への配慮…など、材料や評価技術の変遷を学べる展示も。


実車展示や製造工程展示に比べると見る人が少ないように感じましたが、個人的にはこちらもめちゃくちゃ面白く、冗談抜きで一日居られると思いました…
展示では年代ごとの技術の発展を示すために実際の車種を用いた比較がいくつかあったのですが、その例として先ほどの「セルシオ」(1989発売初代)はよく引き合いに出されていました。
そこから鑑みても、セルシオという車がトヨタの開発史にとって非常に重要なマイルストーンになっていることが窺えます。


(ナンパすな…)

総括
この時期、豊田自動織機による不正の報道があり、やや複雑な気持ちのなかでの訪問だったことを記しておきます。
また、トヨタのみならず世界中のオートメーカーにとっても昨今の社会状況は厳しく、伝統の継承だけでは続けていけないという意識がグローバルに共有されていることも確かです。
現状は要改善であることは紛れもない事実ですが、少なくともトヨタという会社が過去に産業界で築いてきた功績は間違いないものであり知る価値がある、と思いましたし、
研究、開発、発明…と自動織機時代からのたゆまぬ努力の継続こそトヨタがトップ企業たる所以だと実感しました。
自身は本業も自動車づくりではなく、ただ趣味で擬人化創作をしているだけの身ではありますが…トヨタのものづくりへの情熱に触れて創作への気が引き締まったような気がします。
例えば実車を見に行く、自動車カタログも原典に触れてみる、知り合った方から実際の愛車エピソードを聞いてみる、など「一次情報をもとに厚みのある擬人化創作を続けたい!」と再認識できました。

記念館のポスターが格好良すぎて…
自社のもつ産業遺産を余すところなく展示普及するトヨタさん、その態度には尊敬しきりです。
閉館ギリギリまで居てしまった上、それでも時間が足りないくらい濃厚なミュージアムでした。
🚗トヨタ産業技術記念館 公式サイト🔧
https://www.tcmit.org
次の記事では、2日目のトヨタ博物館のレポートをお届けします。
1日目で既にホクホクなんですが、はたして身体が保つのかどうか…。
1110