見出し画像

39.永代橋の傍で自己主張するー豊海橋


ドイツのウエストファリア自然史博物館

 2億5千万年前に始まる中生代のジュラ紀と白亜紀の主役は、何といっても巨大な「恐竜」であろう。比較的温暖な時期が続いたことで、爬虫類はちゅうるいが大繁栄した。

 人気が高い肉食恐竜の「ティラノサウルス」は、全長:約13m、体重:4.5~8トン、また、植物食恐竜の「アルゼンチノサウルス」は、全長:30~40m、体重:50~100トンと規格外の大きさが注目を集める。

 ドイツ北西部の都市ミュンスターにあるWestfälische Museum für Naturkunde(ウエストファリア自然史博物館)には、この地方で発堀された多くのアンモナイト化石が展示されている。
 中でも、白亜紀後期の直径約1.8mのアンモナイト化石が有名で、「パラプゾシア・セッペラデンシス(Parapuzosia seppenradensis)」と名付けられている。人気は恐竜に集まるが、ここでの主役はアンモナイトである。

 「アンモナイト」は、4億年前の古生代デボン紀から6千5百万年前の中生代白亜紀まで繁栄した頭足とうそく類で、イカやタコの仲間である。現在も生きているオウムガイに近く、殻を有する軟体動物で、外套がいとう腔内に取り入れた海水を漏斗ろうとから噴射することで、ゆっくりと遊泳したと考えられている。

 アンモナイト類は現存のオウムガイに良く似た外殻性頭足類であるため、体の構造や生態について比較して議論されている。パラプゾシアの化石では軟体動物が生息していた住房部が欠損し、最終隔壁が確認できることから、元の殻の直径は3mに達すると推測されている。

写真1 ウエストファリア自然史博物館、ここでの主役はアンモナイト

日本橋川に架かる豊美橋

 東京都中央区の日本橋川に架かる豊美橋とよみばしは、日本橋川が隅田川に流入する河口部に位置し、「永代橋」の約50m上流に隣接する。
 震災復興橋であり、1926年(大正15年5月)に着工し、1927年(昭和2年9月)に完成した。ここでの主役は「豊美橋」である。

 永代橋との景観の調和を考慮して、内務省復興局嘱託の福田武雄により設計され、横河橋梁製作所(現横河ブリッジ)により製造された。橋長:46.13m、幅員:8.00mの、鋼製の下路式Vierendeel bridge(フィーレンディール橋)である。

写真2 日本橋川が隅田川に流入する河口に架かるラーメン構造の「豊海橋」

Vierendeel bridge(フィーレンディール橋)とは

 ベルギーのリエージェ大学Arthur Vierendeel(アーサー・フィーレンデール)教授により考案された橋梁形式である。
 外観からトラス橋と見間違えることがあるが、格子点がピン結合でなく剛結合となっており、Rahmen(ラーメン)橋に分類される。

 当時、橋梁の先進国である英国や米国でも建設例のない先進的構造で、日本でも初めての建設となった。シンプルなデザイン、白い塗装、丸みを帯びた角部が、周辺ビル群とも不思議に調和し、見事に自己主張を続けている。

写真3 剛直な橋門構は永代橋にも見劣りはしない

豊海橋の歴史

 1698年(元禄11年)に初めて架けられた「豊海橋」は木造桁橋で、別名「乙女橋」とも称された。橋の北詰めに火除ひよけ地の「永代橋西広小路」、「船見番所」、「御船蔵」などが置かれた水運の要所であった。

 老朽化した豊美橋は、1903年(明治36年1月)、橋長:22間(約40m)、全幅:4間(約7.3m)の鋼製の下路式プラットトラス橋に架け替えられた。

 1923年(大正12年9月)に関東大震災で落橋したが、震災復興橋として、1927年(昭和2年9月)に現在のフィーレンディール橋に架け替えられた。

 1984年(昭和59年)に、鉄筋コンクリート床版から鋼床版へ変更され、2018年(平成30年)~2019年(平成31年)に治水安全性の向上と観光船の運行のため、桁下高さを0.4m嵩上げする工事が行われた。

 1995年(平成7年4月)、東京都中央区の区民有形文化財に登録された。 また、2022年(令和4年9月)、土木学会選奨土木遺産に認定された。

写真4 震災復興事業により架けられた「豊美橋」の銘板

いいなと思ったら応援しよう!