旅する日本語「熱い舌」
「盆を過ぎるとクラゲが出るよ」
友人の忠告も無視してお盆過ぎに休みを取り、我々は白浜海水浴場を訪れている。
風が強いためか海はザパーンではなくてドゴン、ドゴン!とおぞましい音を立て波が割れる。割れる。
紺のビキニで胸まで海水につかった私は自然の脅威に慄き全く前に進めない。そんな私を3メートル先にいるあなたは「やーいビビり」と言いにやにや笑った。
ほら今、浮き輪に座って波乗りしていた女の子が悲鳴と共に波に飲み込まれた海怖い!
散々海に翻弄された後、手を繋いで水着姿でコンビニに向う際にあなたはそっとバスタオルを私の肩にかけて胸を隠そうとした。
「他の男に裸見られたくないとか?」
訊ねれば、そう考えて頂いて差し支えないですと前を向いたままあなたが答え、まあねと笑う。
愛おしくなって、繋いだまま彼の手の甲を舐めたらほんのりしょっぱい海の味。ああ、舌が熱い。
短くて暑いにっぽんの夏。
どうか、もうちょっと夏でいて。
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