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「もう絶対にやらない」と思っていた仕事に戻ってきた話
出戻りWebライターの伊藤七(いとう・なな)です。2021年に「もうWebライターはやらないぞ」と決めたはずなのに、3年半経った今、Webライターとして前向きに仕事をしています。
キャリアカウンセラーの知人いわく、一度離れた仕事に戻ることは、よくあることだそうです。
自分に合う仕事が分からなくてモヤモヤしているときでも、意外と身近なところに、いい仕事があるかもしれない。それを伝えたくてnoteを書きました。
クライアントワークではなく「自分の仕事」をやりたい
2023年の秋、これからは会社員でもクライアントワークでもない「自分の仕事」をやっていこうと思っていた。
2年半勤めた会社を退職し、収入は激減したものの、かつての職業「Webライター」に戻るつもりもない。
じゃあどのように収入を得るかといえば、イベントやプログラムを作ったり、占い師の活動を本格化させたりしたい。
事業者さんを相手にしたクライアントワークではなく、個人のお客さんを相手にした「自分の仕事」だけでやっていきたかった。
それが自分の理想であり、性質に合った働き方なのではないかと想像していた。
今思えばちょっと極端な考え方だ。だけど自分の過去の経験をふまえると「それしかないのでは」と感じていたし、半年くらいの自由な時間があれば、ある程度形にできるのではないかと思った。
しばらくはキャリアブレイク期間を過ごしながら、仕事づくりをしよう。そう思っていた。
ライターを辞めたくなった理由
そもそもライターを辞めたくなった理由は、関心の薄い仕事ばかりに取り組み、辛くなったからだ。
本当に書きたいのは、自分の関心ごとや体験にまつわること。特にエッセイや詩のような文章に憧れていた。
でも仕事として採用されるのは、あまり関心のない分野のSEOライターの仕事や、SNS運用の仕事ばかり。
たとえば、脱毛器、クレジットカード、電子タバコなど。いわゆる「アフィリエイト商材を売るための記事作り」ばかりしていた。ライターというよりも、アフィリエイターの末端に位置する作業者といったイメージだ。
「書く」という行為は好きなはずなのに、「書く」の中でも、自分の関心からは遠く離れたことをしていた。
ライターを名乗ることすら嫌だった。なぜなら、ライターのイメージが悪かったからだ。
「書く仕事」としては、エッセイストや小説家の格下の存在だ
ライターは、他のWebスキルを持たない人がやるものだ
簡単に言うと、ライターのことを何かと「下の存在」だと思い込んでいたのだ。
「デザインやコーディングができない人は、まずライターから始めるのがいい」という教えをよく耳にしていたことも、思い込みを加速させた。
確かに「フリーランスとしてお金を稼ぐ」が目的で、手段を選ばなくてもいいのであれば、ライターは手を出しやすい仕事かもしれない。
でも「ライターは他のことができない人がやるもの」という考え方はあまりにも視野が狭かった。
手を出しやすいだけであって、イコール専門性が必要ないわけではない。抽象的なスキルが求められる、複雑な仕事だと思う。
Webライターが活躍する媒体も、もちろんアフィリエイトサイトだけではない。とくに新聞社や出版社系のメディアは、何かを直接売るよりも、情報を届ける側面が強い。
そういう「ちょっと良さそうな場所」に自分が入り込めるという考えも湧いてこなかった。別の世界すぎて。
「なんにも持たないわたしは、アフィリエイト記事を量産するしかない」という思い込み。
当時のわたしは、日々の業務に追われたり、現実逃避に勤しんだりしていた。
「ライターとしての居場所をズラしていこう」「ロールモデルになるライターさんを探そう」というエネルギーもほとんど湧いてこなかったのだ。
とにかく視野が狭かった。
挫折とピンチをきっかけに確認した、自分の手札
「自分の仕事で食っていくぞ」と願って、ちょっとした会を開いてみた。「自分の仕事をつくる会」だ。ゆくゆくはイベント、講座、コミュニティにしていきたいと思っていた。
でも、そもそも自分に実績のあるジャンルではないし、手法も知らないし、大きくするイメージがわかなかった。ガッツがあれば0からでも立ち上げられるのだろうが、それほどのガッツもない。優先度を下げた。
次に占いが好きなので、占い師として動き始めた。100人以上の鑑定をさせてもらった。
リピートしてくれる方もいたし、やりがいを感じた。でも、生活費を稼ぐだけの大きな収入にしていくイメージがわかなかった。できるできないというより、自分が占いを中心にやっていくイメージがわかない。副業のようなイメージから抜け出せなかった。
会社員だけでなく、クライアントワークという手段すら断つと、お金を稼ぐことのハードルは急に高くなることを改めて感じた。
「事業づくり」と「売る」の2つをしなきゃいけないのに、わたしは2つとも初心者。両方のプロがたくさんいる中で、両方とも初心者で、なおかつ急いで形にしようとしている。しかも1人で。ハードルが高い。
そこに金銭的な事情が重なり、「マイペースに自分の仕事をつくるぞ」なんて呑気なことを言ってられなくなってきた。
改めて「自分の手札」を確認してみると、ライターの仕事は、強力に思えた。
少なくとも、お金をもらってやってきたのだから、お金をもらってもいいレベルではあるはずだし。
仕事面でも、仕事以外の面から見ても、「書く」は自分に紐づいていた。
スキルもコネもないところから文章を書いて生計を立ててきた胆力。小3から日記を書き続けてきた習慣。noteの毎日更新を1年半以上続けても苦痛ではないという性格。180ページにわたるエッセイ集を制作・販売した体力。
これは「書く」をやってきた方だろう。当たり前すぎて、過小評価しがちだけど。
理想を追い求めて、あれもこれも足りないと焦るよりも、すでにある手札を使った方が、人の役に立ちやすい。その方が自分も楽だ。ようやく気づいた。
もちろん、すでにある手札を生かした方が良いことは、以前から頭では分かっていた。でも納得感が弱かった。
「自分の仕事をつくる」というハードな道に一度足を踏み入れたからこそ、すでにある手札を生かした方が良いと、実感をともなって理解できたのだ。
会にしろ、占い師にしろ、もし挑戦していなかったら、「やったことないけど、本気でやればできるはず」といつまでも思い込んでいたのだろう。
それはやったことがないからこその、見積もりができないがゆえのポジティブさだ。そのポジティブさを消せたので、やってみてよかった。
「できること」の中で条件を調整する
以前ライターという仕事に疲れてしまったのは、関心のないジャンルの仕事ばかりに取り組み、関心のないことに時間を使い、自分が何の役に立っているのか分からない毎日を過ごしていたからだ。
おまけに顔の見えない人とばかり仕事をしていたから、自分がちゃんとこの世界に生きているのか分からなくなった。バーチャルすぎて現実感が乏しい。
では、条件として何を変えればライターができるのか。
関心のあるジャンルを整理して、その分野の仕事をする
セールスだけでなく、「情報を伝えること」に注力できる場所を見つける
顔の見える人、尊敬する人、気になる人と一緒に仕事する
一周まわったけど、ライターの仕事は、自分の関心を反映できる良い仕事に思える。
元の仕事に戻る人は多いらしい
「しばらく経ってから、元の仕事に戻る人は多いですよ。」
キャリアカウンセラーの知人がかけてくれた言葉だ。新たに挑戦した仕事を諦める人が多い、という意味ではない。
一度仕事から離れて、できることを見直して、条件を整え直せば、元の仕事の良さを感じられる人は多い、という意味だ。
今まさに仕事を辞めたい人だって、職場を変えたり、働き方を変えたりすれば、近い領域の仕事をそのままできる可能性がある。一大決心をして、180度違う仕事を探す必要はない。
不快感があるからといって、今の環境を丸ごと否定するのはもったいない。一度離れてみたり、条件を細かく洗い出して調整したりすれば、今の仕事を大事にしながらも、新しい仕事を探求できる。
嫌になってしまったもののプラス面は、見えにくいかもしれない。ストレスがかかっている時は尚更だ。でも冷静になって書き出せば、確実に良さも見えてくる。
今住んでいる家が気に食わないからといって、急に更地にして新築を建てる必要はない。内装をリフォームしたり、家具をちょっと入れ替えるだけでも快適に過ごせる可能性がある。
そんな普通のことも、やってみたからこそ納得できた。やってみて、納得して、またやってみて、振り返る。すると、ちょっとだけ進んでいることに気づく。
これを繰り返しながら、ライターとしての幅を広げていきたい。
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