うそをついたときは

土曜日の昼下がり小学4年生の石田咲衣(さえ)は自宅で母に出された課題をしている。

日曜日以外は学校の宿題とは別に母親から課題のドリルを渡される。
課題と言ってもそれほど多くなく集中させすれば1時間もかからず終えることができる。

しかし、今日は違った。
どうしても集中ができない。
何故なら見たいテレビがあるからだ。

もう始まりの時間まであと5分を切っている。

どうしてもみたい。
ずっと楽しみにしていたのだから・・・

しかし咲衣の家のルールでテレビは課題が終わってからというものがある。

よし、課題は夜にしちゃおう!
最悪、明日は休みだ。少しぐらい夜更かししても大丈夫・・・

咲衣はそう決め、椅子から降り急いでテレビの前のソファーに座りテレビの電源を入れた。

「あら、課題は終わったの?」

15分ほどたち、リビングに現れた母から問われる

「う、うん」

「あらそう、じゃあ見せて」

「あ、あとで見せる!」

「どうして?今ちょうどCM中だから持ってきなさい」

「えっ・・・あの・・・え~・・・」

うまい言い訳が思い付かない

気まずい時間がリビングに流れる
番組はすでにCMをあけたが内容は聞こえてこない

咲衣は覚悟を決めて話すことにした

「お母さん、ごめんなさい!本当はまだやってないの!でもこれを見たら必ずやるから!」

「・・・嘘をついたってこと?」

「本当にごめんなさい!今すぐやるから!」

「・・・畳のお部屋に行きなさい」

お母さんの一言で全てを察した咲衣は必死に訴える

「お願い!!許して!!嘘をついて本当にごめんなさい!!」

「畳のお部屋に行きなさい」
石田家ではこの一言には
「畳のお部屋に行ってお尻を出して叩かれる準備をしなさい」
という意味がある。

お母さんはゆっくり冷静に
「咲衣、行きなさい」

と一言だけ告げた。
「うぅ・・・うぅ・・・」

これから身に起こることを想像すると涙が止まらない
しかし、これ以上抵抗したらもっとひどいことになるということを知っているためテレビを消して重い足取りで畳の部屋に向かった。

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