B.革新 サラリーキャップ論について
B.革新の会見で大きな話題になったのが、バスケ界において、以前は存在してたサラリーキャップ(一クラブあたりの選手人件費総額上限※日本人・外国籍・帰化枠・アジア枠含む)。
導入目的は、3つ。まず、戦力均衡策としてです。どっちが勝つか、わからない面白い試合を意図的に創り出す手段がひとつ。また、クラブ運営における最大の費用である選手人件費の上限、つまり、損益分岐点が見えることで経営管理をし易くする。そして、損益分岐点を超える利益をビジネスサイド、主に興行やスタッフ人件費などに転嫁しやすくするためです。
もう少し長いスパンでみると、選手以外のチームやフロント、ユース、スクールスタッフなどの待遇改善が可能な リーグにしていかないと、今いる現役選手のセカンドキャリアの選択肢にも影響すると考えています。巡り巡って選手の引退後にとっても、大切なアプローチだと思っています。
サラリーキャップですが、B.LEAGUEが誕生する前のリーグであるNBLで概算1.5億円、bj リーグが概算7,000万円と設定されていました。今ではトップ選手であれば、1人で当時の1チームの総選手人件費を凌駕します。
2022-23シーズンのデータを確認すると、コーチやチームスタッフの報酬も含まれますが、 B1の平均のチーム総人件費が概算6億円、 B2の平均は、概算2.5億円です。僅か7年で、プロ選手として、夢のある世界に変りました。しかし、 B1のチーム総人件費が最も大きなクラブは、概算12.7億円、最も少ないクラブで概算3.1億円。B1内でもここまで差が生まれている現実もあります。
サラリーキャップを新たに制度化する上で大切なことは、過去のように夢のない世界に戻すようなことではないということです。あくまでも現実の経営力に対する適正化です。
報酬制限が無いこと、昇降格制度があること、クラブのオーナー変更によって資金投下力が格段に上がったことにより、選手人件費が高騰し続けています。選手たちにとっては短期的にハッピーかもしれませんが、難しい問題も引き起こしています。高騰することで補うべくオーナーの資金投入は加速していくということです。いつまで続くかわからないという状況もあります。オーナーにとってもこんなはずではなかったと…
クラブの現場は経営努力を行いますが、補える金額ではなく、フロントスタッフの待遇、環境改善への投資が進まず、離職を招き、ビジネス現場の弱体化が進む危惧もあります。
そうなると、集客やスポンサー営業など経営の根幹が崩れるため、チーム強化やファンサービスの質低下を招く可能性があります。また、オーナーが大きな資金拠出することがスタンダードになると、現場の費用に対するシビアな感覚が鈍ることを懸念しています。どこかでオーナーが撤退するようなクラブが出てくると存続の危機になり得ます。
このような現実から目を背き、勝つために資金を出せるなら良いではないか、選手たちの年俸が上がることは良いことではないか、と言われる人もいます。しかし、成長性と健全性を保たないといずれ厳しくなるか、リーグ戦は、オーナーがどれだけ資金拠出できるかの勝負になってしまいます。それが悪いのか?少なくとも、 B.LEAGUEは、巨大な資金力がなくもと、地方クラブでも優勝のチャンスがある、そんなリーグにしたいと思っています。
ありがたいことに上場企業がオーナーとして、多数参入しています。しかし、スポーツビジネスへの投資も株主に対しての説明責任もあります。 B.LEAGUEが成長することで多額の投資をするに値するとう評価を目指すということは当然ですが、クラブ自体が、株式会社として、経営として健全性、事業採算性を大切にするべきだと考えています。
B.LEAGUEのビジネスとしての将来性、社会性を示しながら投資と費用のバランスを考慮していかなと健全に継続していくことは困難です。
現在の相場感、 B.プレミアのクラブ数、到達した際の戦力均衡具合などを考慮して、各ディビジョンのサラリーキャップを設定したいと思います。また、会見でも少し話しましたが、下限も決めることで選手人件費を不当に下げるバイアスを牽制したいと考えています。海外のスーパースターやNBAでプレーする日本人選手の凱旋に耐えうるようにするためにラグジュアリータックスの導入も検討することになると思います。
最後に、サラリーキャップは、外国籍選手の契約人数などが決まらないと決まりません。また、クラブの実質的な稼ぐ力がついてくれば、サラリーキャップの総額は継続的に増やしていくことが大切だと思っています。
この施策は、 広義な意味でB.LEAGUEの魅力向上に繋がっていくと信じています。
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