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わたしの本棚125夜~「それいけズッコケ三人組」

 10月16日、noteフェスで「岸田奈美さん×高林淳一氏」の対談がありました。お二人の対談が実現した理由、岸田さんの児童書発売への道などが、MCの志村優衣さんの軽妙な進行で、テンポよく語られていきました。岸田さんは今、ポプラ社からだす児童書を執筆しているそうです。その担当編集者が高林氏で、岸田さんにオファーをしたそうです。どんな児童書を書いてくれているのか、わくわく楽しみです。

 対談の最初に、岸田さんが、今日の対談にあたって、話すネタがなくなったときを想定して、3本ほど話を用意してきた、とおっしゃりました。そのうちの1本が「それいけズッコケ三人組」のあとがき、について、というものでした。結局、他の話が盛り上がって、「それいけズッコケ三人組」のあとがきについての話は出なかったのですが、あとがきも気になり、子どもが小さいころ読んだので懐かしくなって、対談後に本を再読しました。

https://note.com/events/n/n96e030dd79a6

☆それいけズッコケ三人組 作・那須正幹 絵・前川かずお ポプラ社 600円+税

 価格は2002年第79刷のときのものです。

1.登場人物

花山第二小学校6年1組の三人の少年が主人公です。

・奥田三吉  あだ名はもーちゃん。おおきな身体で、のんびりした性格。

・八谷良平  あだ名はハチベエ。三人のリーダー的存在。   

・山中正太郎 あだ名はハカセ。眼鏡をかけ、博学ではあるけれど、成績はそんなによくない。 

宅和先生→花山第二小学校6年1組の担任の先生

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2.もくじ

1.三人組登場

2.花山駅の決闘

3.怪談ヤナギ池

4.立石山城探検記

5.ゆめのゴールデンクイズ

 本には5つの話が収録されています。それぞれ独立して読めます。昭和的というか、スマホやゲームのない小学校生活なので、今読み返すと、どことなくのんびりした感じ、牧歌的な感じがしました。

1.三人組登場では、それぞれの性格を考慮して、さらりと自己紹介されます。特に、ハカセは、トイレで勉強し、泥棒に遭遇するも、トイレットペーパーで窓からSOSを発信し、助けられます。今なら、スマホで片付いてしまう連絡手段ですが、スマホのないころは、こんな感じだったかも、と懐かしく思いました。

2、花山駅の決闘では、本屋さんで万引きをする女の子3人を懲らしめる話です。忘れてはいけない道徳を、声高くではなく、ずっこけた展開のなか、挿入してあります。3.怪談ヤナギ池、4.立石山城探検記は冒険談でわくわくします。怪談ヤナギ池はラストにオチもあり、落語の小話を読んだ感じで、立石山城探検記は貝塚、防空壕など歴史をも学べます。

5、ゆめのゴールデンクイズは、もーちゃんが15万円の賞金めざしてクイズ番組にでます。お小遣いをはたいて、トランシーバーという小さな秘密兵器を使って、物知りのハカセがもーちゃんに答えを教えて快進撃。あと1問のところで、宅和先生にみつかり、正解を逃してしまう、最後にずっこけると話です。どの話も、読み終えたあと、くすりと笑えて、温かいです。

3.あとがき

 わたしが持っているのは、2002年6月の79刷のときの文庫本です。だから、岸田さんの「あとがき」とひよっとしたら、違うかもと思いました。

ここでは、「解説」として、神宮輝夫氏がこの本は、「めずらしい本、おもしろい本、じょうずにできた本、楽しむ心」だと書いています。めずらしい本では、評判の児童書(灰谷健次郎氏の「太陽の子」など)にみられる感動ものではなく、子どもだけに目をむけて書かれている点をあげています。おもしろい本では、3人の性格、等身大以上に登場人物を描くことによって、人間の真実をしかりみつめることの重要性。じょうずな本では、ストーリーのうまさ、優れた技術とゆたかな想像力の必要性。そして、楽しむ心では、読者からこんなアイデアを書いてほしいという注文をうけても書かれ、作者と読者が楽しんでいる・・・。読み終えると、この解説は、すべての優れた児童書にあてはまるのではないかしら、と思ってしまいました。

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#読書の秋2021  #noteフェス #岸田奈美 #高林淳一 #志村優衣

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