見出し画像

還暦は、二度目のハタチ。

2024年9月 還暦の出来秋


私のライフワークである本連載企画についてご紹介しています
#coin-scope 001(序章)
#coin-scope 002(続 序章)


必需品? 嗜好品? コメとハ

 米が姿を消した。
 テレビで何度も品薄が報道され、インバウンド需要激増説があげられたり、眉唾ネタとは思うが南海トラフへの備えが拍車をかけているとの説もあったので、関東以南での話だと思っていた。
 が、新米が出回るひと月前になった頃、私の住む地域でも忽然と消えてしまったのだった。

 スーパーの米売り場には代替商品でもないカップ麺が大量に陳列され、
米については欠品を告げる小さな張り紙があるのみ。
 玄米はおろか、もち米の小袋さえも見当たらない。
 またか、と思う。卵、トイレットペーパー、マスク・・・。
「無い!!」はいつも突然にやってきて、暮らしの調子を掻き乱す。

 9月下旬になり、新米が出回ってきてやれやれと思いきや、その高いの何のって。値上げ幅がえげつない。命に直結する主食なだけに、他の食材の値上がりとは違う根本的な先行き不安をもろに感じさせられる。
 この法外とも言える値上げを押し通すために、いったん市場から無くして自然に「欲しがらせる」演出だったのではと疑ってしまう。

 米騒動に仕立てるマスコミの報道バイアス。踊らされているのはわかっているが、買わないわけにはいかず、苦肉の策でちょっとランクを落としたり、いつもは買わないメーカーの米を食べてみたりしているため、おいしいはおいしいけれど新米ならではのおいしさなのか、その米のいつもの味なのか判別できない一見さんの立ち位置にいる。無洗米に慣れていたので、精米の研ぎ加減に左右されている面もあるだろう。

 今までが安過ぎたのだという声もあるが、そんな後出しの擁護説に即時賛同できるわけもなく、今年から私の中で米はもう、必需品から嗜好品のカテゴリーに移行しつつある。

 もうひとつ、白く粒立つ嗜好品、が私にはある。
 「歯」だ。
 かかりつけの歯科で9月初旬に受けた定期クリーニングで奥歯の銀の詰め物の劣化とその原因として虫歯の可能性を歯科衛生士に指摘された。
 中旬に改めて診察を受けたところ、やはりそうであったため、早速治療を開始。金属部分を外したところ、手前の歯の隣接面も虫歯になっているということで、2本治療することと相成った。

 歯は命だ。
 芸能人でなくても命だ、と私は思う。
 もともと歯並びが悪く、歯科に対する意識が全くない母のもとで育ったため、成人後の口内の仕上がりに強いコンプレックスを抱いていた。
 ボーナスを貯め、審美歯科で自由診療を受けたのが30歳の時。なので、あれからちょうど30年。途中で二度ほど軽微なメンテナンスはしたが、勤めていた会社が倒産するなど大きな状況変化の中で、普通の歯医者に通うのとは桁違いの出費になることもあって、自然と定期チェックに通わなくなっていった。

ここから先は

2,810字

¥ 100

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?