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還暦は、二度目のハタチ。

2024年12月 ラストマンスのパーフェクトデイズ


私のライフワークである本連載企画についてご紹介しています
#coin-scope 001(序章)
#coin-scope 002(続 序章)



何があっても、何てことなくても。

 早いもので、二度目のハタチとなって11カ月。年明けの一月が誕生月のため、本年最後のこの月が、ハタチを謳歌できる最後の月でもある。
 二度目の還暦、すなわち40年後に百歳でゴールを迎えられるその日まで、どうかどうか生き続け、書き続け、られますように。

 プライムビデオで役所広司の『PERFECT DAYS』を観た。
 ひこばえを土ごと慈しんで持ち帰るシーンが印象的で、木を鉢から育てる暮らしに強く惹かれた。幸田文の「木」をAmazonで買い直したまま、読まずに脇机に積んであったせいもたぶんある。

 もうひとつ印象的だったのが、フィルムカメラで撮ったこもれびの写真を角缶に収め、何年何月とラベルを貼って押し入れにアーカイブしていたことだ。自分のこのnoteの営みと同じだと思い、思わずニヤついた。『還暦は、二度目のハタチ。』は、私にとってのパーフェクトデイズなのだ。 

 パーフェクト、が何か特別なものではなく、そこここにある、ありふれているものであることを何度も知り、何度も教えられていくこと、それがたぶん生活というもので、私はその小さな内なる世界の中で生きている。外の世界で起きる様々な出来事に影響を受けながら。

 大学生暴行死事件の女子大学生二人が傷害致死ではなく強盗致死で起訴される。
 あまりに残虐な事件で、報道を見聞きするたびに胸が絞られて苦痛だったが、少しでも法定刑が重くなりますようにとの願いが叶っていくらかほっとした。年をとると、悲哀の共感度が間違いなく上がるようで、事件や事故の報道が肉体的にもしんどく感じる。先月末の議員宅の火災報道でも、正直相当辛かった。
 私などがいくらしんどくなっても、悼んでも、それで時間を巻き戻せるわけではないが、一人一人のこういった想いや祈りが目に見えない力の集合体になって、世の平穏を護ることに繋がっていきますようにと願う。

 中山美穂、あまりにも突然の死。老いでも病でもない何かに、コトッと追い越されるようなあっけない落命は、同じ時代を生きてきた者にたくさんのなぜを突きつけてくる。

 そんな生き死にの出来事で日々揺さぶられながら、私は私の立ち位置で生きている。現実100%の地味な生活にむしろ救われながら。
 
 セブンイレブンでたまたま手にした三連納豆が、レジで税込62円。棚から手に取った時、値札をちらっと見て162円かと思っていたが、まさか62円とは。 さては賞味期限間近だったか? とシールを探すが、そうではなく、正規の値段。調べると、たれ・からしが付いていないPB商品であった。
 ものすごい発見をした気分になる。「どうせ捨てるたれ・からしがついている百数十円の納豆」しか知らなかったので、目の前に何やら新しい小道が開けた感じがした。

 姉が来た。夏に続き、二泊三日で来てくれた。
 雪囲いにネットやシートを掛けるのを手伝ってもらったり、母を補聴器デビューさせるためにメガネ屋に一緒に連れていってもらったり、年内にやるべきミッションについて事前に打ち合わせ済みだった。アクシデントもなく、打ち合わせ通りに完遂できた。

 耳の聞こえの悪さを本人は頑として認めないが、大きな声で話しかけるということは、言葉数を省略したり、大仰に発音したり、ジェスチャーを交えたりせねばならず、そうすると、単純に耳が遠いだけなのに、頭も遠い人のように傍目からは見えてしまう。当然、本人の自尊心も傷つくだろうし、それが続くことで今度はそのやりとりに本人が慣れ始めて、老人なのに老人のふりをして聞き流そうと芝居じみた振る舞いをする場面が増えてきているのが気になっていた。母方の祖母もそうだったことを思い出し、DNAだなと思ったりもした。

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