場づくりはぬか床を育てるように。
どうも10YCです。
今回は10/4に配信した10YC Podcast#12の書き起こしを公開。
第10回に引き続き、シーシャカフェいわしくらぶ店主の磯川 大地さんをゲストに呼んでの開催です。
10YC Podcast #12 場づくりはぬか床を育てるように。
話し手:磯川 大地(いわしくらぶ)、下田将太(10YC)、岡山史興(70seeds)
聴きながら読んでもいいし、聴けない人は書き起こしだけ読んでもいいね。
それではどうぞ!
過去の回はこちら >
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下田「今日はいわしくらぶの磯川さんを招いての3回目ということで、パーソナリティーは引き続き岡山さんです。よろしくお願いします。」
岡山「よろしくお願いします。」
下田「ゲストは引き続き磯川さんです。よろしくお願いします。」
磯川「よろしくお願いしまーす。」
下田「ということでね、2回話してきましたけれども、全然自分たちが話したいところまで行けなかったということで、延長戦3回目です。今日は『場作り』について話していきたいと思います。磯川さんにとっての場作りとはなんでしょうか?」
磯川「場作りってね、僕は最近ぬか床だなぁと思っていて。」
下田「ぬか床ですか。」
磯川「そうなんですよ。いろんな人が集まってくるんですよね、場をやっていると。で、いろんな人がいろんなこと、要素を持っていて、みんながみんな同じような感じかっていうと意外とそうでもないんですよね。バラバラなんです。それって遠目に見ると、みんな野菜みたいだなと思っていて。岡山さんとかはね、なんかこうナスビっぽいですよね。」
岡山「髪型じゃなくて?」
磯川・下田・岡山「(笑)」
磯川「すみません(笑)髪型と服の色じゃなくて…」
下田「あぁ今着てる、ね。」
磯川「でもまぁそれは冗談として。僕らもお店の運営とか場作りって、ぬか床をかき混ぜるイメージでやるんです。だから毎回『この人を誰かに紹介する』みたいなことはなくて、あくまでも『ふとした瞬間にちょっと気になったら、こことここだけ紹介してみる』とか。あるいはもう『全く声かけない』とか『紹介しない』とか。だからうちのスタッフもなかなか苦労してると思うんですけど、特に『こうして』みたいなマニュアルはないんですよね。ただ、そのときの雰囲気とか、あるいは『お客さんのことはよくちゃんと観察してね』みたいな話はしてるんで。そのときそのときでその人がベストな状態になれるようにお手伝いさせてもらおうかな、みたいな風には思ったりはしてるんですけど。」
岡山「ぬか床って、いろんな野菜を入れてくじゃないですか。その野菜を入れるときの基準ていうか、いわしくらぶのぬか床にはこんな野菜が合うとかも考えたりしてるんですか?」
磯川「それがね、一応あるっちゃあるんだけど、最近思ったのは、自分らしく生きたい人とか、自分らしく生きてる人、そっちの方向に行きたい人、みたいな人が結構多いかも、みたいな話はしていて。僕とかうちのスタッフも然りなんですけど、要するに素直に生きたいというか。お客さんとか常連さんを見ていても割と素直に生きてる人が多そうだなっていうイメージがあって。下田くんはちょっと素直じゃない感じかもしれないですけどね。」
下田「まぁねぇ、やさぐれヤンキーですから。」
磯川「ねぇ、天邪鬼を絵に描いたような感じの。」
下田「まぁそうですねぇ。今となってはそういう感じじゃないですか、お客さん。きっかけとかって何かあるのかなぁ。急に最初からそういう風になるのかなぁ。」
磯川「全然ならないですよ。最初なんか本当…」
下田「たぶん今ある僕らが通ってるいわしくらぶと、1番最初に東京店でできたいわしくらぶって違うわけでしょ?」
磯川「全然違う。でも1人だけいたんですよ。いわゆるぬか床の最初の菌糸というか。ひとつの菌がいたんですよ。それが東京店でいうと『トッキー』っていう人なんんですけど。彼が間違えてグランドオープン前日に来て。そこからいわゆる友達になったんですよね。まずは僕がね。で、ヒマだから普通に遊ぶんですよ、店の中でずっと。」
下田「あぁオープンした時はね、まだ人があんまり来てないからね。」
磯川「そう。僕がすき焼きを店の中で食ってて、トッキーにも『食え』とか。営業活動とか関係なく、遊んでたんですよね。そうしたら、そいつが友達を呼び出したりとか、そいつの噂を聞いて来た人がいるとか。だんだん人が溜まってくるようになったんですよ。で、丸1年ぐらい経ったらなんとなくお店っぽくなるようになってきて。で、丸1年経った頃に、逆に今度、『イノウエタクミ』っていうのが新しい菌みたいな感じで入ってきて。イノウエ菌が増殖していくんですよね。そういう意味ではみんな野菜でもあり、ある種ぬか床のぬかでもあり、っていう。やっぱり明確に個性の強いお客さんとかは、割と菌っぽい感じ。」
下田「なるほどな。自分が思い描いてる場の雰囲気ってあるじゃないですか。そういう雰囲気になりそうな菌に対してはちょっとアクション多めにするとか、『こいつらやばいな』と思ったらなにもしないで腐らせるとか、そういうこともあったってことですか。」
磯川「あぁ、そうだね。」
下田「コミュニケーションの在り方としては。」
磯川「うんうん。やっぱり単純に好きな人とのコミュニケーションが深くなってしまうから。」
下田「つながっていくうちにっていうことか。」
磯川「そのときに間違っても、『この人と付き合ったら儲かりそうだから』みたいなことは考えちゃいけないなとは思っていて。ぬか床を育てるってことで言うとね。」
下田「人として好きだから付き合うってところを大事にするっていうことだね。」
岡山「なるほど。そうやっていろんな野菜とか菌が混じり合った結果が今のいわしくらぶになってるっていう感じなんですよね。」
磯川「そうですね。自分たちにとっていい菌が、そこにちゃんと集まってきて、たまにちゃんと悪い菌も来るように設計されてる、みたいな感じはあるんですよね。」
岡山「なるほど。そうすると野菜も、ただ入れられてぬかによって自分が味付けされて変わっていくだけじゃなくって、入ってくる野菜自体もぬか床に貢献してるっていうか…」
磯川「そうそう。勝手にね。」
岡山「働きを持ってるっていう感じなんですね。」
磯川「そうなんですよ。」
岡山「だからある種、いい野菜だけじゃなくて、悪い野菜、というかあんまり合わない野菜もそれはそれで役割を持ってそうですよね。」
磯川「そうなんですよ。だから『いわしくらぶ大好き』みたいなお客さんで溢れかえってもよくないんじゃないかなって勝手に思っていて。『なにここ?あぁ、いわしくらぶっていうんだ』みたいな人もいれば、『やーここのシーシャあんまりおいしくないけど、とりあえず近いから来てみた』みたいな人がいたりしてもよくて。多様性の中で、いいぬか床ってできるんじゃないかなって僕は思っているんで。あんまりクローズドにはしないというか。」
下田「なるほどね。最近コミュニティ論みたいなのがあるじゃないですか。場作りもそうだし、サークルみたいなものも。今の話を聞いていると、コミュニティ論っていうのは『どうやって作るか』みたいな話をするじゃないですか。まずはこういうことやった方がいいとか。今のはそういうのと全然違うような話ですよね。ある菌が入ってきたら対応していく、って続けていった結果が今のいわしくらぶみたいな話で。『これ再現性ってないよね』っていう話に思っちゃったんだよね、今。」
磯川「まぁね。」
下田「いや、それがすごく面白い。いわしくらぶがなんでできたかっていう話だと思うし。そういう場作りも面白いなと聞いてて思いましたね。だって、あのときトッキーっていう人をすき焼きに誘わないで「まだオープン前だよ」って蹴っ飛ばしてたら、今のいわしくらぶなかったかもしれないわけじゃないですか。」
磯川「ほんとそうだと思う。」
下田「それが今のいわしくらぶの面白さであり、場作りの面白さなのかなと思いました。受け入れるっていう、オープンでいるっていう、いわしくらぶの磯川さんの姿勢があるからこそ、そういう風になっていくんだと思いますけど。」
岡山「受け入れるとか、周りの人も作る構成要素のひとつになってるみたいな感覚って、磯川さんのどういうバックグラウンドがあるんですかね。どういうルーツから来てるんだろう。」
磯川「それで言うと、僕、高校中退してるんで、学校教育はまぁ一応ね、義務教育まで受けたけど。高校途中までと、大学は行ってないからか、ある種社会を知らずに出てしまったみたいなコンプレックスが一時期まで結構あって。割とそのコンプレックスに対していろいろなものを埋めてくれたのが、街のおじさんたちだったんですよ。例えば、学生の頃から行ってた喫茶店のマスターだったりとか。で、その後はそのマスターが教えてくれたバーのマスターだったりとか。今度はそのバーのマスターが、例えば寿司屋の大将を教えてくれたりとか、服屋を教えてくれたりとか、いろんな人を紹介してくれて。街の、言ってみれば先輩のおじさま方にいろいろ教えてもらったみたいなバックグラウンドがあって。だから、僕も、なにか自分に対して『これを取り入れたいな』みたいな人がいたら、オープンで受け入れられる場でありたいなっていう風に思ってるんですよね。」
下田「あぁ、そういうことだね。」
磯川「そういうときに街が閉ざされているのは、僕はちょっとおかしいなと思っていて。」
岡山「あらゆるものがオープンだからこそ、自分ができあがっていくみたいな。すごいですね。そう考えるとぬか床であり、街であるみたいな雰囲気。」
磯川「そうですね。ちっちゃい街みたいなものかもしれないですね、そう考えるとね。」
岡山「それって10YCのTシャツにも近いものがありますよね。昔、下田さん『街作りたい』とも言ってましたし。」
下田「あぁ言ってましたね、はい。」
岡山「たぶんブランドが『こうだ』って言い切るよりも、だれがどんな風に使うかとか着るかとか、そういうのをすごく大事にしているような感覚。そういうところが10YCと通じるのかな。」
下田「そうですよね。10YCもいろんなところにこだわりを持ってるので、そのひとつのこだわりを押し付けるんじゃなくて、『いくつかあるこだわりの中で、自分が好きなところを見つけてくれればいいよ』みたいなスタンスではいるんで。着心地が好きな人は着心地が好きで10YCを買ってもらえればいいし。作り手さんが見えるからこういうところで洋服を買いたいっていう人はうちで買ってもらえたらいいし。1人1人お客さんが気に入ってる部分が違うとは思っていて。だからこそ、あんまり1つにまとめて言わないようにはしてるんで。その結果なのかなとは思ったりはします。」
岡山「逆に、まとめてしまうと10YCらしさが消えちゃうんでしょうね。」
下田「あとはすごく短くて強い絆になっちゃいそうな気がするんですよね。人から言われたものを好きっていうのと、自分で考えて好きって全然違うと思うんですよ。だからブランドから『こうだよね』って言われたとき、受動的に『あ、このブランド好きだ』っていうのと、いろんなことを能動的に考えて、『あ、俺はここブランドのこういうところが好きなのかもしれない』って思ってくれた方が、すごく長く付き合えそうだなっていう気がしてる、っていう感じですかね。」
岡山「前回の余白の話とか、自分で考えてもらうみたいな話ありましたけど、そこにつながってくるんでしょうね。」
下田「そうかもしれないですね。『おいしいシーシャを吸える場所だよ』っていわしくらぶに言われたら、もしかしたら常連になってなかった人とか、たぶんいたりするんじゃないですかね。いろんな人がいて、シーシャ好きで来てる人もいるし、場所の雰囲気が好きで来てる人もいるしみたいな。本がいっぱいある雰囲気、本を読みたいから来てるっていう人もいたりするじゃないですか。いろんな来れる要素が用意されているからこそ、多様な人が集まって何か面白いことが起きてるっていうのはもしかしたらあるかもしれないなって。それこそ余白なのか、決めつけないからなのか。」
磯川「結構お互い割と長いスパンで考えてるんですよね。商売もね。」
下田「そうですね。あとは優柔不断っていうのも、もしかしたら(笑)」
磯川「そっちだね。」
下田「(笑)」
岡山「よく言えば臨機応変?」
下田「うーん、八方美人?よく言えば。」
磯川「四字熟語大会になってるじゃないですか。」
岡山「そういう、あえて分かりやすさばかりを追求しないというお二人の話ですかね、今回は。」
下田「これ結構すごく大事なことなんじゃないのかなって思うんですよね、最近。今こういう時代なんで、じゃあ10YCもコミュニティ作ろうかみたいなこと、みんないろんなところで言ってるじゃないですか。でも、なんか違うかなと、そう思ってたんですよ。なので、こういうところでね、自分たちであえて作らないことの大切さみたいなのも、面白いなぁと思ってますけどね。」
岡山「というわけで、今回も…」
下田「今回ね、ラスト回でしたけど、磯川さんの場作りの話…って勉強になるんだよな。なので、引き続きね、10YCユーザーとしても、場作りの名人としても、お話聞かせてもらえたらいいなぁと思います。今日は場作りしたい方にとってはすごくいい話だったのかなと思います。」
磯川「ほんとですか。よかったです。」
下田「こういう時期でいろいろ大変だと思うんですけれども、また引き続きよろしくお願いします。」
磯川「はい、よろしくお願いしまーす。」
下田「ということで、磯川さんありがとうございました。」
磯川・岡山「ありがとうございました!」
下田「また次回、よろしくお願いします。さようなら。」
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