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リニア中央新幹線の挑戦:葛西敬之氏の懸念と未来への課題
リニア中央新幹線は、超電導リニア技術を活用した日本初の次世代高速鉄道として注目されています。しかし、その実現には多くの課題があり、特に巨額の建設費用や需要予測の不透明さが大きな障壁となっています。
葛西敬之氏のリニアへの複雑な立場
当初、JR東海の葛西敬之氏はリニア中央新幹線に対して積極的な関心を持っていませんでした。国鉄分割民営化後、中央新幹線は在来型の新幹線規格で建設される可能性もあり、東海道新幹線のような収益性が見込めない路線を押し付けられる懸念があったためです。
この状況が変化したのは、政治的背景によるものです。田中角栄氏が1985年に脳梗塞で政治の表舞台を退いた後、その後継者として影響力を持ったのが金丸信氏でした。金丸氏は山梨県出身であり、地元への利益誘導を重視。1990年には山梨県にリニア実験線(全長40km)が建設されました。これにより、リニア技術の実証実験が進む一方で、地元経済の振興も図られました。
技術革新と進展:超電導リニアの可能性
山梨実験線は全体計画(東京~大阪間)の約7分の1に相当し、技術的な進展の場として機能しています。特に、高温超電導技術の採用により、冷却コストの削減やエネルギー効率の向上が達成され、従来型の発電システムが不要となりました。この技術革新は、リニア中央新幹線の持続可能性を高める重要な一歩でした。
建設費用と需要予測の現実
当初約9兆円とされた建設費用は、現在では10兆円を超え、名古屋~大阪間の延伸を含めると20兆円に達する可能性があります。東京~大阪間のビジネス客や観光客をターゲットにした需要は一定数見込まれるものの、少子高齢化による人口減少が進む中、その需要が十分に伸びるかは不透明です。
さらに、既存の東海道新幹線や航空路線との競争が激化する中で、リニアの高価格な運賃が利用者に受け入れられるかが課題です。結果として、膨大な投資を回収することは非常に難しいと言われています。
そして、「掘ってみないとわからない」というトンネル工事の不確実性もあり、湧水や地盤崩落といったリスクが建設費の増大につながっています。
リニア技術の輸出構想と課題
葛西氏は、リニア技術を国内に留めるだけでなく、海外に展開することで日本の技術力を国際市場で発揮するという長期的なビジョンを描いていました。しかし、技術輸出にはサプライチェーンの整備やコストの問題が立ちはだかります。
日本の新幹線技術をコピーした中国の高速鉄道技術は国際市場に展開されています。当時葛西氏は川崎重工業が中国へ新幹線技術を輸出しようとした際に「コピーされる」と警告していたエピソードは、日本の鉄道技術輸出における重要な教訓として語り継がれています。
そして日本の鉄道技術は安全性と信頼性で高評価を得ていますが、その分導入コストが高く、新興国市場では中国や欧州勢との価格競争に苦戦しています。
今後リニアが海外展開できるかは、これらの反省を踏まえて行う必要があります。
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