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最低賃金1500円は可能か?
多くの政党が、最低賃金の全国平均を1500円にする方針を掲げています。自民党と公明党は「2020年代に全国平均1500円」を目指し、立憲民主党や共産党、れいわ新選組、社民党は「全国一律1500円以上」を主張しています。
経済界からも同じ意見が出ています。新浪剛史氏(経済同友会)は、「1500円を支払えない企業は退出すべきだ」と述べ、企業の生産性向上を求めています。合従連合して全社が価格転嫁できれば問題はないと言っていますが、1社でも価格を上げないと競争になってしまいます。
一方、中小企業の経営者からは、従業員10人の賃金を1500円に引き上げると年間1200万円のコスト増となり、利益が1000万円から200万円の赤字になるという試算も示されており、従業員削減を余儀なくされる懸念が浮上しています。
過去のデービッド・アトキンソンの提言と実施の影響
デービッド・アトキンソン氏は、最低賃金引き上げが企業の効率化を促し、日本経済全体の生産性向上につながると主張していました。彼の影響を受け、安倍内閣では2015年以降、毎年約3%の賃上げが進められました。これにより、労働者の生活改善と同時に、生産性の低い企業の退出が促進され、経済効率の向上が期待されていました。
実質賃金の低下とインフレの課題
しかし、円安と物価上昇が重なったことで、名目賃金は上昇したものの、実質賃金は低下しています。物価上昇が賃金の伸びを上回り、生活必需品や社会保障費の負担が増えた結果、労働者の実際の購買力が低下しました。
最低賃金引き上げの未来と課題
最低賃金の引き上げによって企業の効率化を促進する結果を期待しましたが、短期的なインフレへの対応や中小企業への支援が課題となっています。また、賃上げを価格転嫁で保障すると、結局は実質賃金が変わらないことになります。本来は企業が効率化して利益を上げてから賃上げするのが望ましいところです。そのためには政府と企業は、コスト増加に対応するための生産性向上や補助金制度の整備を検討しなければなりません。最低賃金1500円という目標を達成するためには、単なる賃上げだけでなく、企業支援と経済環境の整備が不可欠です。
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