葛西敬之氏の足跡とその影響力:鉄道事業と保守政治
森功氏は、日本のジャーナリストであり、ノンフィクション作家として知られています。森氏はJR東海の元会長である葛西敬之(かさい よしゆき)氏を取材し「国商」という本にしました。
葛西敬之氏は、日本の鉄道史と政治に大きな影響を与えた人物として知られています。彼は国鉄分割民営化に深く関わり、その後28年にわたりJR東海の代表取締役を務めました。特に東海道新幹線の成功は注目に値します。この「ドル箱路線」として知られる新幹線は、莫大な利益を生み出し、その収益は日本全体の鉄道インフラを支える柱となっています。JR東海の収益構造は、経済的な成功のモデルケースとして高く評価されています。
一方で、葛西氏は経済界の重鎮であるだけでなく、保守的な政治思想の担い手としても大きな役割を果たしました。彼が設立した「四季の会」は、春夏秋冬の季節に合わせて年4回開催される懇親会を通じて、政治家、経済人、知識人が集い、政策議論を行う場となりました。この会には、財政や経済政策で名を馳せた与謝野馨氏も参加しており、日本の伝統的価値観や自主憲法制定をテーマに、保守的な議論が行われていました。
安倍晋三氏との関係も特筆すべき点です。葛西氏と安倍氏は、憲法改正や「戦後レジームからの脱却」といった政策において共鳴し、葛西氏の思想は安倍政権の政策運営に多大な影響を与えました。また、NHKを含むメディアに対する影響力にも注目が集まります。2013年、安倍政権下で就任したNHK会長・籾井勝人氏は、政権寄りの姿勢で批判を浴びましたが、こうした人事には葛西氏やその思想ネットワークの影響があったとされています。
葛西敬之氏は、鉄道事業の成功と政治的な影響力を通じて、日本の経済と政治の両面に名を刻んだ人物です。その功績と思想は、今なお議論を呼ぶ重要なテーマとなっています。