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1億円の壁

財務省が作成した所得金額ごとの税負担率をみてください。1億円以上で税金の負担率が下がっています。

所得税負担率(以下より引用)

https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/4zen19kai2.pdf

日本の税制には「1億円の壁」という現象が存在します。年収が1億円を超えると、かえって税負担率が下がる傾向があるのです。この理由は所得の性質にあります。1億円を超えると、給与所得だけでなく、株式売却益や配当収入といった「金融所得」が増える傾向が強まり、税負担の違いが生じます。

金融所得の税率は一律約20%で、最大55%の累進課税が適用される給与所得と比べると、大幅に低く設定されています。たとえば、同じ2億円の所得でも、すべてが給与所得であれば手元に残るのは約1億円ですが、金融所得であれば約1億6000万円が残ります。これにより、高所得者が金融所得で収入を得ると、所得全体の税負担率が低くなります。この構造が「1億円の壁」と呼ばれる所以です。

こうした税の逆進性を解消するため、金融所得の税率を現行の20%から25%に引き上げる案が議論されています。増税により高所得層からの税収を増やし、税負担の公平性を高めようとするものです。しかし、金融所得の増税には慎重な意見もあります。金融所得の増税が投資意欲をそぐ可能性があり、企業の資金調達や日本経済の成長にマイナスの影響を与える可能性が懸念されています。

また、累進課税の影響も慎重に見極める必要があります。特にスタートアップ企業の創業者が得る一時的な大きな利益に累進課税を適用すると、税負担が重くなりすぎ、創業者がリスクを取る意欲を失わせるリスクがあります。人生で数回のチャンスで得た利益に高い税率が適用されると、挑戦しようとする意欲がそがれ、日本の成長力を削ぐ可能性があるのです。

今後、金融所得への課税強化や累進課税の見直しについて、日本の成長と公正な税制のバランスをどう取るかが問われています。金融所得への増税や累進課税の適用範囲を検討しつつ、高所得者層からの税収増を図るには、多角的な視点からの議論が必要です。

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