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グッチの危機とケリングの未来:高級ブランドの分岐点

イタリアを代表する高級ブランド「グッチ」が苦境に立たされています。売り上げは20%ダウンし、親会社ケリングの時価総額も低迷中です。ケリングはフランスのピノー家が率いる企業で、グッチの他にイブ・サンローランやバレンシアガなど多くのブランドを擁していますが、グッチが売り上げと利益の大半を占める構造に依存しています。

一方、最大のライバルであるLVMHは、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールを抱え、安定した経営を実現。単一ブランドへの依存を避ける戦略が功を奏しています。LVMHは伝統と格式を重視し、時代を超えて愛される商品を育ててきました。一方で、グッチは目先の利益を追求した結果、ファー付きスリッパやマーモントといった商品を時代を超えた定番商品に育てるチャンスを逃しました。

グッチの黄金期を築いたのは、2015年にクリエイティブディレクターに就任したアレッサンドロ・ミケーレ氏でした。彼の手腕でグッチは若い世代に人気を博し、売り上げを3倍以上に伸ばしましたが、2022年に意見の相違からピノー氏と決別。その後任としてサバト・デ・サルノ氏が就任しましたが、再建には時間がかかる見込みです。

ケリングの経営スタイルにも課題があります。LVMHがトップ主導の決定を行うのに対し、ケリングは各ブランドに大きな裁量を与える放任主義。この方針はブランドの自由を尊重する一方で、混乱やスキャンダルを招くリスクも高めています。

現在、ケリングのピノー氏はグッチをエルメスやシャネル、ルイ・ヴィトンと並ぶ真の高級ブランドにしたいと考えていますが、競争は厳しく、その道のりは平坦ではありません。今後、ケリングが依存構造を克服し、ブランドとしてのグッチを再構築できるかが注目されます。高級ブランド業界は、単なる流行ではなく、時代を超えた価値が問われる時代に突入しているのです。


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