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ネット中傷が映し出す現代社会の課題

近年、SNS上での誹謗中傷が大きな問題となっています。国際政治学者の東野篤子さんが受けたケースは、その深刻さを如実に物語るものでした。

東野さんは、「X」での誹謗中傷に悩まされ、加害者の特定に至るまで法的手段を取る決意をしました。なんとその加害者は茨城県警の生活安全課課長。彼の投稿内容は、「見た目化け物」などの外見に対する攻撃や、陰謀論に基づいた誹謗に加え、暴力的な表現を含むものでした。このような行為が、勤務時間中に行われていた可能性もあるとのことです。

最終的に加害者は侮辱罪で書類送検され罰金30万円が科されましたが、これで問題が完全に解決したわけではありません。SNSでの誹謗中傷は、匿名性が高いことから被害者が顔や名前を知られる一方、加害者の情報は守られるという非対称性が浮き彫りになります。東野さんはテレビにも出演しているため、広く知られる存在ですが、加害者の素性が不明であることに恐怖を感じたと語ります。

特に40代から50代の世代が中傷の中心である現状には驚かされます。彼らはリテラシーが十分に備わっておらず、感情的な投稿を繰り返す傾向が指摘されています。若い世代はメディアリテラシーを学びつつある一方で、中高年世代にはその機会が限られています。この世代が中傷を「批評」として、自分の意見を正当化することで、被害者への攻撃を続けています。

過去テレビの時代は茶の間で批判していた言葉が、SNSで投稿できるようになって、公に出てきたという話もあります。ネット上での誹謗中傷は、被害者を苦しめるだけでなく、投稿者自身の生活をも蝕みます。批判の言葉が建設的な議論に発展することは少なく、むしろ社会全体を分断する結果を招いています。

批判だろ思い込んでいる以上、言論の自由から誹謗中傷を根絶することは容易ではありませんが、被害者が法的手段を講じることは一定の抑止力となるでしょう。また、学生の段階からメディアリテラシー教育を充実させることも重要です。さらに、社会全体で「言っていいことと悪いこと」の線引きを明確にし、健全な議論を行う文化を育む必要もあります。

誹謗中傷が減少しない現状に絶望を感じることもありますが、「正しい情報を発信し続けること」が東野さんの姿勢です。私たち一人ひとりが中傷に対して立ち向かい、SNSの使い方を見直すことが求められています。批判ではなく建設的な意見交換が行える社会を目指したいものです。


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