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2017年 歌壇賞応募作品「映せるだけのせかいをください」(短歌30首)/とわさき芽ぐみ


洞穴で生まれる予想 絵に描いたような祝福視るための瞳

オルタナティブ・(じゃない)眼です これはわたくしの外界に向かおうとする力だ

無敵的超能力的第六感的心の眼スプーンで隠しとく

欠けていることが分からぬ丸ならば丸でいいだろ 当てに行くかけ

孤島としての瞳は狭し 新しい価値観は眼に入れたら痛い

眼球ごなし 何でもよく見る癖があり君が掲げる打ち出の小槌

この眼では取り出したとて父さんにならない「おい、」とは呼んでくれない

縫い止めてしまえばここに留まると思ったのかよ その通りです

こぼれんとするちからには勝てなくて景色ごと世に産み落としてる

ブルーライト 切なくなって入れる度淵でまどろむやわらかな虫

起動音ぽんぱらぽん、といつ来ても何度来てても同じ歓迎

外野手の発音に似て外斜視は視線を手玉に取り切れてない

ちぐはぐなアンテナばかり立っていて景色も意識も散りゆく定め

二重奏奏でる世界は美しき 断片拾ってまわる休日

眼の色に似た石のあり私より私を視てきたような出で立ち

(眼を皿のようにするとは)ごちそうにしっかり蓋する私のまぶた

均等に描く瞳の大きさは自画像として頼りなきまま

ゆるやかな景色をパン!と突き破る母の両手で現実(リアル)は一つ

「また外を向いていたよ」と叱るべきか叱らぬべきかさ迷う口調

六歳の全身麻酔はヒロインになるのに少々強過ぎたドラマ

どんな糸で縫ったのだろう玉留めは「右向け右」をするとよく見える

結び目に染み渡る時塩分は引き締めていく確かな世界

正しさは一つじゃないと思い知れ(あたまが結びきれない実像)

(私には視えてるものがあなたには視えないという)そういうことだ

眉間の上で転がるくのう錠剤は小粒だけれど呑みやすくない

起きている時に掲げる夢ならば眼球越しにたわわに実る

現実と虚構の狭間で埋もれてる左側だけ分厚いレンズ

鹿の子の眠れるように脚を折る眼鏡ケースで眠れ記憶よ

ふつつかがしたたかになる発酵をまなうらに感じつつ眠る夜

このなまみ生かすなかみを増やしたい映せるだけのせかいをください


/とわさき芽ぐみ 2017


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あれー、原稿をそのままスキャンしたデータがあるはずなんだけどなぁ~、と探し出せなかった画像が見つかったので、今更ですが公開致します。

昨年は「短歌研究新人賞」とこちらの「歌壇賞」の2つに応募致しました。

今年は出来るか分かりません。

どうも30首を上手く扱い切れないようです。

この作品も、何首かは自分でも気に入っているのですが、やっぱりどうしても辻褄合わせのようになってしまっているものが何首もあります。

実際に経験した一つの出来事をもとに、色々派生して作りました。

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