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鎌田東二先生:ギリシア神話の基本~ゼウス以前の世界とは?~

講座紹介

「ギリシア神話」といえば、多くの皆さまが、ゼウスを中心としたものを思い浮かべるでしょう。夜空の星座の元になっている神話も、ゼウスの時代のものがほとんどです。
 
では、ゼウスの前のギリシア神話とは?
 
実は、ゼウスは神話の世代でいえば三代目に当たると、鎌田東二先生はおっしゃいます。しかも、その神々の世代交代は、次の世代が前の世代を倒す「父親殺し」ともいうべき「闘争」によって成し遂げられていくのです。
 
第一世代は「ウラノス」。このウラノスを生んだのは地母神的な性格を持つ「ガイア」という女神ですが、ウラノスはガイアと結ばれて、多くの神々を生んでいきます。
 
そこで生まれた神々の1人が「クロノス」です。さらにクロノスの子供が「ゼウス」です。ゼウス以前の神話と、その世代交代の闘争については、ぜひ講座本編をご覧ください。
 

講義動画

鎌田東二:ゼウス以前のギリシア神話は3世代にわたる神権交代の物語

 
 さらに興味深いのは、ギリシア神話では、一種の「衰退史観」ともいうべき歴史観が語られていたことです。その物語は、たとえばヘシオドスの『労働と日々』という叙事詩に書かれています。
 
それによれば、第1時代は「黄金の時代」で、ユートピアの楽園のような世界です。しかし、それが次第に劣化していき、第2時代が「銀(白銀)の時代」、第3時代が「銅(青銅)の時代」、第4時代が「英雄の時代」、第5時代が「鉄の時代」となっていくのです。
 
現在は「鉄の時代」で、お互いに傷つけあったり、騙しあったり、不正と非道がはびこる世の中で、ブラック労働をしなければ生きていけない時代です。
 
「父殺し」や「衰退史観」……。これは、「この世界を常に修理固成していきなさい」とか「天壌無窮(あめつちとともにきわまりなかるべし)」ということを説く『古事記』や『日本書紀』の日本神話とは根本的に異なります。
 
しかし「衰退史観」は、日本仏教でも信じられた「末法思想(正法の時代から、像法の時代、末法の時代へと時代が悪くなり、末法の時代には悟りも開けなくなる)」とは割と通じあうと鎌田先生はおっしゃいます。日本では、末法の時代は西暦1052年の平安時代末期から末法の時代に入ると考えられてきましたが、その後、実際に武士の時代になって親子関係も大いに荒むことになったのです。
 
このような神話比較は、とても興味深いものです。

本シリーズのみどころ

さらに鎌田先生は、ギリシア神話の「人間の創造」の物語として、「プロメテウスの神話」を(第3話)、さらに「死生観」として、プラトンの大著『国家』の最後に描かれた「エルの物語」を(第4話)ご紹介くださいます。
 
プロメテウスは、人間を粘土からつくった神とされ、ゼウスをだまして人間に「火」を与えたことでも知られる神様です。
 
一方、「エルの物語」は、臨死体験をして現世に戻ってきたエルという英雄が、自分が見てきた死後の世界を語る物語です。死後の世界では、この世での行ないによって、天の穴(天国)か、地の穴(地獄)かのどちらかに振り分けられる。そこで、この世の10倍の期間を過ごした人は、もう一度、分岐点に戻ってきて、次の人生の運命を選び、忘却の河の水を飲んで、この世に戻ってくる……。
 
さらに鎌田先生は「無理難題物語」として、ギリシア神話の「ヘラクレスの神話」と、日本神話の「オオクニヌシ神話」を対比されます(第5話)。
 
それぞれの神話から見えてくるものは何か? 人間の生き方へのメッセージとは? 鎌田先生のご解説は今回も縦横無尽。多くの気づきやヒントが得られること請け合いの講座シリーズです。
 
YouTubeではシリーズ中第1話のみ無料公開しておりますが、続きが気になる方は以下「テンミニッツTV」よりぜひご覧ください。
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