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精神科入院の意味

 「入院」と聞くと、「病気の治療」「怪我の手当」「出産」などを思い
浮かべることが多いと思いますが、精神科治療における「入院」は、ちと
違いまして。

いろんな入院の形(精神科版)

 症状が激しい患者さんの入院するか否かの判断材料として一番大きいのは、「自傷他害」です。患者さん自身や、周りの人たちを傷つける危険性
が高ければ高いほど、「措置入院」や「医療保護入院」という形で、本人
の意志とは関係なく入院させられます。

措置入院
2名以上の精神保健指定医の診察により、精神障害のため自分を傷つけたり他人に危害を加えようとするおそれがあると判断された場合、都道府県知事の権限により措置入院となります。

こころの情報サイト より

医療保護入院
精神障害であり、医療と保護のために入院の必要があると判断され、患者本人の代わりに家族等が患者本人の入院に同意する場合、精神保健指定医の診察により、医療保護入院となります。連絡のとれる家族等がいない場合、代わりに市町村長の同意が必要です。

こころの情報サイト より

ちなみに、本人が同意して入院することを、「任意入院」といいます。
患者本人が同意書にサインするものです。

そして、これは制度名ではないのですが、「休息入院」と呼ばれる入院の
形もあります。これは、「日常生活の場にいては心身が休まらず、病状に
悪影響なので、普段の環境を離れて休息することを目的とした入院」です。
サポートする家族にとっても休息が取れる時間となります。

日常を離れる、ことの大切さ

 以前、精神疾患を持って在宅生活をされている息子さんのお母さんと
お話しする機会があったのですが、

「うちの息子は、働いていないし、自宅から出ることもないのに、
入院したいって言うことがあるんです。静かに暮らしているはずなのに、
どうして入院したいなんて言うんでしょうか?」と仰っていました。

 それに対する私の答え。
「外出しなくても、働いていなくても、ご自宅に居る限り、息子さんは
『日常』に居るんです。それは疲れるんです。『日常』から離れる
『入院』は、精神的な休みになるんです」

 お母さんは「そういうものなんですね……」と、答えてくださいました。

 私の友人も、主治医に「あなたはしばらく日常から離れたほうがいい。
ビジネスホテルに連泊するか、入院するか、どちらがいいですか」
と訊かれ、「ホテルだと食事の手配とか、自分でやることが多いので、
入院させてください」と答え、しばらく入院していました。

 かく言う今の私も、心の調子が悪かったところへの父の急逝で、
主治医には
「3食出てくる環境で1週間休むっていう『リセット入院』はありよ」
と言われています。

入院は旅に似ている

 その点でいうと、入院は旅に似ていますね。入院は、レストランを探す必要はなく食事も提供されるし、観光スポットに行くわけではなく病棟内で休んでいるのが基本なので、完全に受け身の生活であるところが、旅との違いです。作家の山本文緒さんも、ご自身の体験からエッセイにそう書かれていました。

 

日常と病院、どちらが楽か

 ただ、病院にいると、完全に管理された生活であり、集団生活でもあります。完璧にストレスがないわけではありません。私も入院経験がありますが、もめごとは起こるし、洗濯機の順番取りも気を遣うし、同室の人が具合
悪いと影響されるし、認知症の方が部屋にずかずか入ってこられたりとか、
いろいろあります。

 だから私はよく、「入院したいけど、入院したくない」という言葉を使います(笑)。日常に疲れ果てると、病棟が脳内に浮かんで、「あそこでゆっくりしたいな……」と思うんです。でも、「3日もしたら退院したくなるしな」とも思うので、なかなか入院はしません。一度入院したら、退院後3か月は同じ病棟に入院できないというルールのせいもあります(このルールは病院によるかもしれません)。必要なときにしっかり入院したい、という気持ちが大きいので、中途半端には入院しないつもりです。

 入院していると、薬の調整がしやすかったり(調子を崩してもすぐ対応
できるので)、話を聴いてくれる専門職が傍にいたりなど、休息以外の
メリットもあります。もちろん、最初のほうで触れたように、強制的な入院が必要な状態で、まずそれの治療、という期間がある方もいらっしゃいます。

みんながんばってるよね、休もうね

 病気を持っている持っていないにかかわらず、現代人は生活に追われています。「どんな環境が一番心身が休まるか」は人それぞれだと思うので、
みんな、一番心地よい環境で、休息を取りましょうね。

 人によっては、「入院」という休み方がある、というお話しでした。


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