余命10分 / 2024年8月23日 — まつり。

ぼくが住む町には毎年恒例になっている納涼祭がある。東京のど真ん中にも関わらず小さな村のお祭りみたいな空気が漂っていて、好きだ。焼きそば、焼き鳥、かき氷、フランクフルト、太鼓、盆踊り。

会場となっている公園に櫓(やぐら)が組まれ、ちょうちんが吊るされると、いつもの表情から、変わる。夏の始まりのような、夏の終わりのような空気をまとい、近隣の方々を迎え入れる。人口がいちばん少ない千代田区。ビルばかりのこの町に、こんなに人が住んでいたなんてと、毎年思う。

昔、子どもの頃、家の近所に神社があって、そこの境内で似たようなお祭りがあった。親に連れられて準備から手伝いさせられた記憶が蘇る。その日は焼き鳥の担当で、串に刺さった状態で運ばれてくる焼き鳥を焦がさないように、生焼けにならないようにと大人たちから手ほどきを受けながら必死に焼いていたのだけれど、1本だけ「まだ生焼けだ」と返されてしまった。いろいろな大人に「おいしいおいしい」と言ってもらってすっかり焼くのに自信をつけていたぼくは、ピンク色の残った肉のかじりあとを見て、ひどく落ち込んだのを覚えている。好きな作業が「苦手意識」に変わって、あれから祭りにも行かなくなったのかな、それともただの思春期だろうか。

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余命10分
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