余命10分 / 2024年8月15日 — キッチン。

小さな引っ越しが続いている。最近あまり使っていなかったキッチンも改めて使えるように整理している。ただ、数年前みたいに大人数を食事でもてなしたり、みんなで料理を作って飲み会をするということはなさそうなので、セットで揃えた食器や、6人がけのダイニングテーブルは捨てた。ひとり暮らしのわりに大きな冷蔵庫には炭酸水だらけ。炭酸水がないと生きられない。出張に行くたびに珍しがって買ってくる調味料や食材、それを収納するためのワゴンで、小さなキッチンはシェフがひとり立てばもういっぱい。その後ろを通り過ぎることさえもできない。

ただ、昔からこのサイズ感がたまらない。

誰かにとっては使いづらいだろうけれど、ぼくにとっては使いやすい。そういう距離や道具の置き位置、棚のスペースの作り方がある(そういえば母のキッチンもそうだった)。

以前、ケータリングなどを行っている友人がぼくのキッチンで料理をしてくれたことがあって、その時「あ、同じだ」とつぶやいていた。使っている道具のことかな?と思ったけれど、流れの作り方のことらしい。だいたいケータリングで訪れた先のキッチンは自分の感覚と違くて、慣れるまで大変だと言っていたからよっぽどフィーリングが合ったのだろう、欲しい時に欲しいものが欲しい位置にあるというので驚いていた。

「キッチンにはそれぞれの表情がある。」

その時に聞いた言葉についてゆっくり考えながら、今日もキッチンを片付ける。

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余命10分
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