「代替案なき反論」を言える組織へ
最近は仕事でサービスのUIUXの部分にかなり関わらせて頂いていて、これを期にUIUXについて色々調べています。
特に参考になるのはスタートアップのサービスのUIUXについての考え方です。
とにかく離脱率を下げて、最後の操作までユーザーを導くというところに集中してサービスを作ってらっしゃるというのが、よく分かります。
なぜそんなことができるのか、というのが気になりまして、いろんな方にヒアリングを続けた結果、自分として一つの結論に落ち着いたので、ここに記しておきます。
質問・反論に代替案はセットなのか
話は変わりますが、今の世の中、何に置いてもフレームワークが充実し、そのフレームワークに則ってやれば、大きな失敗がなくなるようにはなっています。
エンジニアの方だったら想像付きやすいと思いますが、LaravelやAngularなどといったフレームワークを活用して開発を行うと、それなりに完成度の高いものができるようになっています。
これは開発に限らず、全てに言えることだと思っていて、PDCAなどはその最たる例です。
Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)という行動を連続して回し続けることで、プロジェクトや製品の完成度を上げていく事ができます。
こういったフレームワークが世の中にたくさんあるからこそ、フレームワークに頼るような行動と、フレームワークありきの評価基準がはびこっているなあと感じる今日このごろです。
上司、先輩への質問にもフレームワークらしきものがあります。
・質問をする時は自分で調べてから質問をすること
・「どうすればいいですか?」という丸投げの質問では無く、「私は~だと思うんですが、〇〇さんはどう思いますか?」といった自分の意見や代替案を含めた質問をすること
・質問をする際は先方が空いていそうな時間を見計らって質問に行くこと
などなど
ネットで調べたり、ビジネス書を読んだりするといくらでも出てくるわけです。
勿論、質問をする上で上記のことを守るというのはとても大切なことだと思います。
上司や先輩の時間を無駄にしないわけですし。
もはやフレームワークというより常識の範疇なのかもしれません。
しかし、世の中のビジネス研修や本を読むと「必ずやらなければいけない」「これができていない質問は悪い質問」かのように教えているものが多いです。
それ故、評価としても「自分で考えてない質問はしてこない様に」「感覚的なふわっとした投げやりな質問はしない様に」などといった評価になります。
ビジネスや組織を円滑に回す上での取り組みとしては素晴らしいとは思いますが、UIUXを育てるという観点で話をすると、この限りではないというのが私の持論です。
UIUXについて議論する
UIUXについて議論する場合は、エンジニアリングやビジネスというより、アートの感覚のほうが強いのかなと思います。
一枚の絵があった時に、その絵を見て「すごく元気になる」と感じる人もいれば、「すごく不安になる」と感じる人もいます。
それと同様にUIUXについて議論する際も、「なんかこのボタンの配置は気持ちが悪い」「操作が何か多いような気がする」など、すごく感覚的なものが多いです。
なので、意見や反論と言ったものも、感覚的になるのはやむを得ないと考えています。
近年ではUIUXやデザインについてもかなり研究が進み、様々な言葉ができていて、言語化が前に比べると容易になったようには思いますが、エンドユーザーはそんな知識は勿論持ち合わせていない訳で
「なんか言葉にはできないけどこのアプリ使いづらいからアンインストールしよー」
と、エンドユーザー自身が表現し得ない感情がトリガーとなり、離れていきます。
なので、実際に作っているエンジニア側も、「気持ち悪さや違和感を感じたときにそれをすぐに表現できるコミュニケーション」が大事ではないのかと思うのです。
「あー、なんか気持ち悪いなー。〇〇さん、この画面すごい気持ち悪くないですか?
このボタンとかもなんか押しづらいし、ここの操作とかもなんか無駄な気がするんですよねー」
上記ぐらいのレベル感です。
これを周りに発信をすると、周りも言葉にできないが、同様の感情を持っているということがよくあり、
「じゃあこの違和感ってどうやったら解消されるんだろうか」
と、チームの議題に上がったりしますし、
周りにUIUXに精通する人がいた場合、その違和感をうまいこと言語化してくれたり、解決策を見出してくれたりします。
「UIUXに精通している人に任せればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、逆にUIUXについて全く知識の無い人だからこそ感じる違和感もあり、その違和感こそがエンドユーザーに近い感覚だったりします。
先程上げたUIUXについての質問の形は、冒頭に述べた質問のフレームワークに当てはめてみると、決して良い質問とは言えないと思います。
「~だという違和感を感じる」というすごく曖昧な質問ですし、それに対する解決策も浮かんでいない状態だからです。
しかし、その質問こそが使う上での違和感を取り除く鍵になるかもしれません。
感覚的な質問をするためには
しかし、実際にはそんな質問ができていないところも勿論存在します。
それには多々理由があると思いますが、私がフォーカスしていきたいのは組織風土についてです。
日本にはSNSの急激な発展故に、「アンチ」という存在がいます。
先程の感覚的な質問というのは、一歩間違えると、この「アンチ」に見られがちです。
なんせ、自分の明確な意見は持ち合わせていないが、「なんか気持ち悪い」と掴みどころのない反論をサービスに対してしてくるわけですから。
しかし、感覚的な質問はアンチとは異なり、質問に対して解決策を提示すると、納得してくれ、UIUXの向上につながることがあります。
そんな質問ができるような人間関係を構築し、組織風土としてお互いの感覚的な議論ができる組織を作っていくことが、UIUX改善に対して組織が取るべきファーストステップだと思います。
ではそんな組織を築いていくためにはどうすればよいのか
そのためには勿論質問者と回答者のどちらもの理解が必要です。
まず、質問者としては冒頭に述べた質問のフレームワークが頭に入っていて、普段から実践できていること。
普段から感覚的な質問ばかりしていると、それこそ「言うだけ言って、自分では解決策を考えないやつ」というレッテルを貼られがちです。
相手へのリスペクトや問題解決を前提とした質問が普段からできているからこそ、その人がする「感覚的な質問」は意味を持つと思います。
そして、回答者としては、感覚的な質問をただのフワッとした意見と捉えず、ユーザーの感覚的な意見のひとつなのではないかと捉え、解決、もしくは議論していく姿勢が重要です。
質問者、回答者として重要な点を全員が持ち合わせている組織はすごく素敵な議論ができるのかなと思います。
この記事を書いた経緯
この記事を書くにあたってヒントになったのは、主に2点です。
1点目はFUN UP INC.のCEO 山口さんとお話させて頂いた時の体験談です。
先日、Yentaを通じて知り合ったFUN UP INC.のCEOである山口さんとランチの機会を頂けました。
FUN UP INC.はmonomyというオリジナルのアクセサリーを作れるアプリを展開しています。
読者の皆様にはアクセサリーに興味がなくても、是非このアプリをインストールして使ってほしいです。UIUXが洗礼されていると感じました。
実際に手元に沢山の材料があり、アクセサリーを組み立てているかのような感覚で作成することができます。
物理エンジンにより、実際にアクセサリーが揺れるところも表現されていますし、実際に身に着けた時のイメージ画像もすぐに出てきます。
このUIUXはどの様にして作られているのかが気になり、色々と質問させていただいたところ、本記事の結論にたどり着きました。
山口さんが、UIUXの感覚的な要望や質問をするのに対し、FUN UP INC.のエンジニアやメンバーは解決策を提示し、チームとしてUIUXの改善に取り組んでいることがよく分かりました。
あのUIUXが生み出せるのは組織体制の賜物であると私は考えています。
2点目は先日、確定申告の際にe-taxを利用して感じたことです。
Twitterなどでも話題になってますが、e-taxのUIはヤバいと思います。
急に語彙力が無くなりましたが、それぐらい本当に使いづらい。
自分がどこのボタンを押せばいいのか急に分からなくなるし、自分のお金が関わっていることなので、確信を持って作業をしたいのに、e-taxの説明だけじゃ確信を持って作業できないので、常にe-tax以外のWebページを参考にしながら、e-taxでの作業を進めていく始末。
ここからは完全に個人の想像ですが、あのUIは国税庁の組織風土をそのまま反映させたものなのかなと感じます。
e-taxの開発者の中にUIについて疑問を覚える人が1人もいないということは無いと思います。
しかしながら、国税庁というお硬い組織を前に感覚的な意見など通るはずがなく、
しかも、確定申告という競合がいない状態でのアプリケーション作成なので、ユーザーとしてはどんなUIであろうと使わざるを得ない。
そのような環境が生み出したUIだと思い、それを解消するにはどうすればいいのかと考えたところ、先日の山口さんの話を思い出したので記事にしました。
世の中にもっとストレスフリーで素敵なアプリケーションが増えることを願って記事を投稿させてもらいます。
ここまで読んでいただいて有難う御座いましたm(_ _)m