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Photo by
soeji
死期の近い父は歌えなくなった
カラオケを趣味にする父が、歌謡発表会に出場した。その録画を見てわたしは驚き落胆する。ひどい歌唱だった。そのへんの素人と変わらない。特にサビは聞くに耐えない。声量不足でかすれ、高い音はまったく出ない。
わたしが悲しく感じたのは歌だけでない。父は家で威張り散らしているくせに、発表者とはいえ緊張していてみっともない。
父は学生時代に大学のグリークラブ(合唱団) に所属していた。その経歴を錦の御旗に、知識・経験を自慢。皆が褒めそやすものだからますます有頂天になって。
父の歌唱がうまいんじゃない。周りがへたで、そもそも歌と呼べるものでないから。「少しうまい素人」は音程も取れず、リズムもないし、伴奏から外れて、聴衆に聞こえるのは雑音か公害。
たしかに父は歌が大の得意だった。末期がんで入院11回。昭和26年生まれ、73 歳。昔の歌唱が95点だとすると、今は5点。かわいそうに。情けなくてわたしは涙が出た。
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