もったいない、の行く先
「もったいない」という言葉は、まだ使えるのに捨ててしまおうとすることに対して使われる。
私は、もう使えないだろうと思われるものにも、つい役目を探してしまう。これはもう特技なのかもしれない。
例えば、届いた郵便物に貼られている切手。
ここ最近電子化の波は感じるものの、伝票処理が多い事務職の仕事柄、取引先からの納品書や請求書が日々郵送で送られてくる。
手元に集まってくる郵便物の中で、目についたのが記念切手だった。
季節の花々、外国の風景、ポップなアイコン。
どれも色とりどり、個性があってかわいい。
小学生の頃夢中になって集めていたシールを思い出す。
自然と封筒から切手部分を切り取っている自分がいたのだった。
うーん、届いた封筒から切手を切り取るなんてなかなかしないよな…でもこの花柄、水彩タッチできれいだなぁ〜あとで手帳にでも貼っておくかぁ〜…。できるだけ自然にスピーディーに、周りの人に不思議がられないようにそそくさと…。
こうしたものを集めることは苦にならない。お金もかからないし。捨ててしまうものに何らかの価値を見つけることは楽しいものだ。
集め始めて2、3年がたつ頃、まとめていた古封筒がパンパンになるほどになってきた。
となってくると、これはこれでどうしたものか、である。
色柄は豊富だけれど、これといって私個人での使い道が見当たらない。
しかし、集めてしまった。集まってしまったのである。
そんなある日、せっせと切手を集めている様子をみた人から、使用済み切手を寄付という形で回収できることを教えてもらった。
手元に集めていた切手に言及されたときは(使用済みの切手集めてる変なヤツだと知られてしまう…!と)内心ヒヤッとしたけれど、とても有益な情報だった。
調べてみると、海外のコレクター向けに一定の需要があるようで、自治体や企業が窓口となっていた。
これだ!
そのままだと捨てられてしまうものが、有効活用される。こんな一挙両得なこと、なかなかないぞ!
日々の苦労が報われる気がして、とても嬉しかった。…ん、苦労?いや苦労して集めてるわけではないですよ。楽しいのですよ。
寄付先が身近な自治体にあることを知ると、さらに収集熱に拍車がかかった。
今までスルーしていた通常の切手も集め始め、切手が貼られていない料金後納郵便が届くと「ちぇ…」とテンションが下がるようになってしまった。重症だ。仕事はどうした。
挙句の果てには、他の人宛ての郵便物を渡しつつ「切手、集めているのであとで封筒だけください!」という図々しさを発揮してしまうのであった。
郵便物に貼ってある切手を集めよう!と思えば思うほど、取りこぼしのないように頑張ってしまう。いや、プラスになるばかりだから大丈夫なんだけど、頑張るところはそこではないような…。まぁいっか。ハサミで切るだけだし。
そうこうしているうちにかなりの量が集まり、私の産休入りに合わせ収集に区切りをつけ、窓口へ送ることができた。
後日自治体の窓口からお礼のハガキが届いて、ささやかな、でも心地よい達成感を味わえたのだった。
あのまま捨てられてしまうはずだった切手たちが、ちょっと役に立つように手助けできたのかな、と。