社会人一年目のときに知りたかった仕事のコツ
「やってやんぜ」
「うまくやっていけるだろうか」
街を歩けば、期待や不安が入り混じった、そんな新しい空気を感じ取れる時期になった。私がリクルートスーツに身を包んでいたころも、似たような空気をただよわせていたのだろうか。
当時の私は何も考えずに就職し、何も考えずに働いていた。
上司からいわれたことを、いわれたとおりにこなす日々。向上心もなく、ただただ無為な日々を過ごしていたといえる。
我ながら生産性のない、お世辞にも優秀とはいえないビジネスマンだった。
だが、そんな平凡なビジネスマンにも、優秀なビジネスマンにも、その大きさは違えど、こなさなければならない仕事がある。
仕事は『生産性』がすべてだ。
何かを生み出さなければ、成果をあげることができないからだ。
営業であれば顧客の信用を、イラストレーターであればイラストを生み出さなければ、お金を稼ぐことができない。ソファに寝転がってテレビを見ているだけでは、ただ消費しているだけではお金を稼ぐことはできないのだ。
生産性とは『投入した資源に対する成果の割合』である。
会社は、その存在目的のために大きな成果が必要だ。そのため、喉から手が出るほど生産性の高い個人、すなわち成果をあげてくれる優秀な人材がほしい。優秀な人材が多ければ多いほど、そのぶん大きな成果があがる可能性が高くなるからだ。
優秀な人材は市場価値が非常に高い。
需要が供給を上回ることで、どの企業も提示する報酬を上げていくという現象が起こるからだ。
これらのことから、仕事をするうえで、生産性を高めることは個人にとっても企業にとっても、もっといえば社会にとっても有益だといえる。
個人はより多くの収入を得ることができ、企業はより大きな成果をあげることができる。そして、社会は、人類は、より大きく進歩することができるからだ。
この記事では、新社会人になったばかりの残念だったころの私に向け、『社会人一年目のときに知りたかった”生産性を上げるための”仕事のコツ』をまとめていく。
新年度を迎え、新たな一歩を歩み出す方の一助となることを願って。
生産性が高まる5つのコツ
生産性は以下の公式で求めることができる。
生産性=達成した成果÷費やした資源
達成した成果が大きければ大きいほど、費やす資源が少なければ少ないほど、生産性が高くなることがわかる。つまり、生産性を高めるためには、より少ない資源でより多くの成果をあげることが重要となるということだ。
この章では『生産性が高まる5つのコツ』を紹介していく。
なお、以下で紹介するコツは、生産性の基準ラインを引き上げることに重点を置いている。高い生産性を維持し続けることができなければ、本当の意味で生産性が高いといえないためだ。
①最高の状態を維持する
「健全なる精神は、健全なる身体に宿る」 ―――デキムス・ユニウス・ユウェナリス(古代ローマの詩人)
体は資本であり、土台だ。
そのため、最も大切な財産であるともいわれている。健康でなければ、仕事でもプライベートでも本当の意味で充実することができないからだ。
体調不良のときを思い出してみてほしい。
そんな状態で、いい仕事ができるだろうか。体がだるくて、実力の100%は出せないだろう。旅行に行って、プライベートを楽しむことはできるだろうか。頭がぼーっとして、100%集中して楽しむことはできないだろう。
このように、肉体の不調は精神的にも悪い影響を与えてしまう。したがって、仕事の生産性を高めるためには、心身ともに健康である必要があるのだ。
健康で在り続けるために、特に重要なことが食事と睡眠、そして運動である。
これらの効果は科学的に証明され、その知識は一般化されている。そのため、詳細な解説は他の記事に任せることにする。が、その中で最も基本的な知識を以下で紹介する。以下を実践し、リズムのいい規則正しい生活を送ることを意識したい。
食事:無添加の食品をバランスよく食べる
睡眠:8時間以上の睡眠をとる
運動:週に2~3日、12分/回の散歩以上の運動をする
また、第二の脳と呼ばれている腸の環境を整えることも、健康のために重要だといわれている。
上記を実践することで腸内環境も整うが、自然と触れ合って有用な微生物を体にとり入れることや、腸内細菌を殺さないために抗生物質を摂取しないことも、腸内環境を整えるためには効果的だ。あわせて実践していきたい。
上記で紹介した内容を確実に実践していくためには、時間的な余裕も必要となってくるだろう。時間がなければ、健康に気を使うことも、上記の施策を実践することもできないからだ。余白を生み出すためには、以下を実践することがおすすめだ。
やるべきことを少なくする
見積もり時間を1.5倍とする
身の回りをきれいに整理しておく
生産性の高い仕事をこなすために、身体を整え、精神も整える。そして、心身ともに健康的な『最高の状態』を維持する。
これが、ビジネスマンとして、いや、人として生きるうえで最低限のマナーだといえるだろう。
今、この瞬間の自分が、相手にとって最後の自分になるかもしれないのだから。
②仕事の目的を理解する
「目的を見つけよ、手段は後からついてくる」 ―――マハトマ・ガンディー(インドの政治指導者)
会社とは一種のチームであり、チームとは『目的を達成するために在る集団』である。
そのため、すべての仕事は、会社の目的に沿っている必要がある。目的に沿わない仕事をしていては、目的を達成することができないからだ。そのため、『会社の目的に沿った仕事』が『正しい仕事』であることがわかる。
一方、目的に沿わない、誤った仕事をすることは、目的地とは違う、間違った方向に歩みを進めてしまうことと等しい。それは、いらない仕事をする、求められていることと違うことをしてしまう、という最も愚かな行為だといえる。
仕事において、無駄なナニカを生み出す必要はない。
正しい仕事による必要な生産こそが、真に求められている生産であり、高めるべき生産性なのだ。その正しい生産をするためには、仕事の目的を理解することは必須条件だといえる。
また、目的を理解していれば、やっている仕事が正しいか正しくないか判断できるようになる。そうなると、いらない仕事を削って重要な仕事に時間を費やしたり、求められた仕事を求められたとおりに無駄なくこなしたりできるようになるだろう。そして、タスクの優先順位付けや取捨選択もうまくできるようになっていく。
目的達成のための手段となる正しい仕事を、目的達成のために最適化する。
たったこれだけのことなのだが、少ない資源でより多くの成果を生み出すことができるようになる。生産性の公式『生産性=達成した成果÷費やした資源』のとおり、仕事の生産性が向上するのだ。
仕事の目的を理解するためにはロジックツリーが有効だ。
ロジックツリーとは『ある要素をツリー状に分解して論理的に考えていく問題解決フレームワーク』である。以下のようなイメージで、今やっている業務を当てはめて考えてみるといいだろう。
目的は会社に必要なものだ。が、仕事自体は人生の目的にはならない。あくまで、目的を達成するための手段だ。
「目的を見つけよ、手段は後からついてくる」という言葉のとおり、なぜ、なんのために働くのか、改めて考えてみてほしい。
③相手目線で考える
「成功の秘訣があるとすれば、相手の立場を理解しようと努め、相手の立場から物事を考えることだ」 ―――ヘンリー・フォード(アメリカの実業家)
ビジネスの本質は問題解決であり、それはすなわち『人の求めに応えること』である。
そのため、対象となる人の視点に立って考えることが非常に重要となってくる。相手のことがわかれば、相手が求めていることを理解することができるからだ。
そのため、マーケティングの世界では、ターゲットの視点に立つために以下のような手法が用いられている。相手を理解するために有用な手法であるため、参考までに以下に明記しておく。
共感マップ:ターゲットの情報や感情、思考を書き出してイメージする
没入アプローチ:ターゲットに近い生活を送って問題を発見する
ターゲットに刺さる大ヒット商品を生み出すことができれば、それは会社にとって大きな成果だ。そして、その大きな成果は、前述した生産性の公式『生産性=達成した成果÷費やした資源』から、高い生産性につながることがわかる。
さて、ここからは交渉相手や社内の人間に目を向けてみたい。
これらの人を理解することで、より円滑にコミュニケーションがとれるようになる。この点についても、生産性の向上につながってくる。情報交換や普段のやり取りがスムーズに行われることで、コミュニケーション上の妨げなく仕事ができるようになるからだ。
まったく知らない人と無人島でサバイバル生活するより、毎日顔を合わせる親友とサバイバル生活を送るほうがずっと楽なはずだ。親友のことであればよく理解できているため、親友のやり方や考え方を理解しているからだ。阿吽の呼吸までいかなくとも、コミュニケーション上の問題が発生するリスクはかなり少ないだろう。
ビジネスシーンにおけるコミュニケーションのコツは『相手の貴重な時間を奪わないように考える』ことである。前述したとおり、時間は資産であり、その資産を効率的に利用しなければ成果をあげることができないからだ。
つまり、相手の時間を奪うということは、相手の生産性を下げることと等しい。そのため、人と相対する際は以下を心がけるべきだろう。
短く端的に、かつ的確に応える
YES/NOで答えられるように質問する
結論から話す(PREP法:結論→理由→具体例→結論)
その中でも、多くの人が、質問に対してまったく違う答えを返してしまうということをやりがちだ。
上司「お願いしてた資料の進捗は何%くらいかね?」
ワイ「え、あっ…はい。実はさきほどBさんから明日の企画立案プレゼンを任されまして、今その資料を作っています。実は、その資料作りが難航してまして…。おそらく今日はほとんど眠れないと思います。なので、明日のプレゼンが終わったら休ませてください…。資料は来週末に使う予定でしたよね。資料作りの期限は今週末だと聞いていましたが、ちょっと間に合いそうにありません。できれば、来週頭ごろまでにしてほしいのですがいかがでしょうか?」
上司「…大丈夫だけど、今の進捗は何%くらいかね?」
ワイ「あと3日ほどあればできます!」
上司「…そ、そうか(今日まで3日間くらい時間あったし50%くらいかな…)」
これでは、文字通りお話にならない。
もはや言葉のキャッチボールすらできていない状態だ。
これは仕事上のコミュニケーションだけに限った話ではない。
常日頃から、身の回りにいる家族や友人のことを理解し、その人の視点に立って考えるべきだろう。
そして、相手の大事な資産である時間を、無為に奪わないよう留意すべきである。
④信用を積み重ねる
「私は、あなたが私に嘘をついたことで動揺してはいない。私は、今後あなたを信用出来ないということで動揺しているのだ」 ―――フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(ドイツの思想家)
会社はチームであるため、目的を達成するために社員全員が協力しあう必要がある。
頭は前を向いているのに、足が後ろに向かって動いていたのでは、目的地までたどり着くことができないからだ。社員全員が、脳と腸のようにうまく連携しあわなければ、このような無様な事態に陥ってしまう。
個人同士がうまく連携するために必要な、潤滑油となる要素が『信用』だ。
信用とは『過去の実績をもとに信じること』であり、『ビジネスマンとしての価値』である。
大きなプロジェクトを何度も成功させているA氏と、プロジェクトを一度も成功させたことのないB氏。どちらにプロジェクトを任せたいと思えるだろうか。どちらと一緒にプロジェクトをやりたいと思うだろうか。
信用は、人格や成果、スキル、個人同士のコミュニケーションといった要素が複雑に絡み合って生まれる。そのため、上記の例では一概にはいえないところもあるが、ほとんどの人がA氏を選んだはずだ。
信用しているからこそ、安心して自分の背中を任せることができる。そして、背中を任せることができるからこそ、うまく連携することができるのだ。
せっかくチームを組んだのに、1+1を1.5にしていたのではチームを組んだ意味がない。うまく連携し、1+1を2以上にできなければチームを組む意味はないはずだ。
うまく連携しあい、チームとしての仕事の生産性を高めていくためには、ビジネスマンとしての価値である『信用』を積み重ねていく必要がある。
そのためにできることとして、まずは以下の5つを意識してみてほしい。特に、初期状態で信用が装備されていない新社会人の場合は、小さな信用を地道に積み重ねていくべきだろう。
書いて覚える
相手との約束を守る
ミスをしないよう二重チェックする
報告・連絡・相談及び雑談を適宜行う
わからないことをわからないままにしない
これらを確実に実行するためには、スケジュールやタスクの管理、ミスをしない仕組みづくりなどを行うといいだろう。最近ではそれらを管理できる優秀なツール(Notion、Slack、Googleカレンダーなど)が揃っているため、それらのツールを使うことをおすすめする。
また、信頼を積み重ねるにあたり、素晴らしい人格や需要があるスキルの習得にも勤しむべきだろう。
あわせて、身だしなみにも気を配りたい。
ハロー効果と呼ばれる『その人の一部にポジティブな印象を抱いた場合、その他の部分もいい評価をしてしまう心理効果』が存在するからだ。
⑤タスクの所要時間を少なくする
「何をするにも時間は見つからないだろう。時間が欲しければ自分で作ることだ」 ―――チャールズ・バクストン(アメリカの政治家)
時間は『在るもの』ではない。『つくり出すもの』だ。
どうしても見たい映画が公開されたとき、全力でその映画を見に行くだろう。そのとき、仕事や遊び、睡眠といった、ほかの時間を削って見に行くはずだ。映画の時間をつくり出すために、他のことをする時間を犠牲にしているとも受け取ることができる。
有限のリソースである時間には、トレードオフの関係が成り立つ。
トレードオフとは『ある選択をしたときに、ほかの選択肢を放棄しなければならない状況』のことだ。それはすなわち、何かを得るためには、何かを失う必要があるということだ。
タスクをこなすためにかかる、そのための時間においても例外ではない。
あるタスクをこなすためには、ほかのタスクをこなす時間を犠牲にし、後回しにしなければならないのだ。優先順位付けが重要であるといわれているのは、このトレードオフの関係性からきていることをここで補足しておく。
仮に、一つのタスクを早く終わらせることができるのであれば、その分の時間をほかのタスクにまわすことができる。タスクをこなすスピードが上がることで、同じ時間でより多くのタスクをこなすことができるようになるのだ。
前述した生産性の公式『生産性=達成した成果÷費やした資源』から、仕事を素早くこなすことは生産性の高さに直結する。費やす時間が少なくなるからだ。
正しい仕事を、正確に実行する必要性はこれまで述べてきたとおりだが、それにあわせて『スピード』という要素も必要というわけだ。
タスクの所要時間を少なくするためには、以下の5つを実践することが特に有効だ。
無駄な作業を省く
タイムリミットを設ける
マルチタスクで仕事をしない
ルーティンワークを自動化する
邪魔の入らない環境で仕事をする
ただし、これらを実践するためにはタスクへの理解度が重要であるため、経験を積み、仕事に慣れてきたころを見計らって実践すべきだろう。
全体像を把握していない状態では、まともに機能しないはずだ。
レベル1でラスボスを倒しに行くくらい無謀だといえる。
さいごに
これまで、仕事は『生産性』がすべてであることを伝え、生産性の公式『生産性=達成した成果÷費やした資源』を示してきた。そして、その内容をもとに、社会人一年目のときに知りたかった5つの仕事のコツをまとめた。
最高の状態を維持する
仕事の目的を理解する
相手目線で考える
信用を積み重ねる
タスクの所要時間を少なくする
これらは小手先だけではない、本質的な仕事のコツである。
これらの5つのコツを意識し、実践していくことで、見える世界がガラっと変わるはずだ。
少なくとも、私自身は変わった。色褪せたセピア色の世界が、急に鮮やかなビビッド色の世界に変わったのだ。
この記事をここまで読んでいただいた心優しい方には、ぜひその感動を味わってみてほしい。
最後にひとつだけ。
量はいずれ必ず質になる。
しかし、考えながら量をこなさなければ質はついてこない。だからこそ、自分の頭でしっかりと考え、量をこなさなければならない。それさえ押さえていれば、いずれ必ず高品質な、生産性の高い仕事ができるようになるだろう。
会社では、どんなミスをしても致命傷にはならない。たとえ、どんな大きなミスを犯したとしても会社が責任をとってくれるからだ。
失敗を恐れずに、ただひたすら量をこなしていこう。そうすれば間違いなく、多くの人に求められる優秀な人材になれるはずだ。
道中を楽しみながら、この理不尽な社会という大海原を、ともに泳いでいこう。
ただし、自分の目的だけは見失わないように。
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