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月組バウ"Golden Dead Schiele"感想⑤ フィナーレ/さいごの瞬間まで

やっとここまで辿り着いたよ…。
フィナーレの始まりを告げるごきげんなミラーボールが、いつだって全力全壊の大回転情緒クラッシャーすぎて大変好きでした。あの空気読まない「待!た!!せ!!!た!!!!な!!!!!」感。
やかましw

って思ってたら、男役のシンプル黒燕尾が来るのでまったく侮れない。
クラシカルに、しっとりとオシャレ。
具体的にどこがどう、と言える選別眼が私にないのが残念なのだけれど、「月組の黒燕尾」だなあ、と思う。
思っていて。
あみちゃんがひとりだけキラキラのベスト着て真ん中に降り立ったとき、「ウワーーーーーーー!!!」って、情緒が崩壊する。(笑)


・「彩海せら」としてのゼロ番

それこそ演目と演出家が発表された当初は、「フィナーレ…ある…?絶対あってほしいけど…どう…?」と首をかしげていた私。(「ベアタ・ベアトリクス」がフィナーレなしの構成だったと聞いていたため)
そんななか、「フィナーレがあるよ!」という話が最初に(熊倉先生からのお話で確定として)流れて来たとき。
めちゃくちゃ楽しみで、うわーもう本当に是非是非絶対見たい!と思うと同時に、私は「どうなるんだろうな」と思った。
正直な話、あみちゃんが「本編中でお芝居の・ミュージカルの」真ん中をやるのは、ふつうにできるだろうと思っていた。
いや結局そんな言葉で片付けてしまえるような出来ではまったくなかったんですが(じゃなきゃこんな長文書けない)、でもまあ、特に、心配はしていなかった。
一方で、フィナーレ。
ショーアップされた、場面の真ん中。
そこで真ん中ゼロ番の、芯を取るあみちゃんって、どうなんだろう。どんなふうになるんだろう。どうやってくるんだろう…?と、思ったのも正直なところだった。

この「どうなんだろう」には、2022年暮れの別箱「ELPIDIO」フィナーレの男役群舞を見たときの印象が大きく影響している。
あのときのあみちゃんは、なんというか、はっきり言ってしまえばまだ地味だった。いわゆる二番手の立ち位置、ポジションとしてはかなりの前方で踊っているのに、押し出しが足りなくて埋もれてしまう、「大勢」のうちのひとりになってしまっているような感じがしていたのだ。
ああ、こういうとこはまだまだなんだなあ、これからどんどん伸びてってほしいなあ、と。
何度か見ながら、そのたびに思っていた。
踊りのキレはあのときからもう素晴らしかったし、あのお衣装(ターバン…扇子…!)もすごく似合っていたんですけど、そういうことではなくて。
「セシリオ」として劇中でソロを取り一人で場面を埋める、3階席まである天井の高いKAATもしっかり満たしきった姿が素晴らしかったからこそ、そんなところで見えた「まだまだ発展途上」の彼女を、がんばってほしいなあ、伸びてほしいなあ、と思ったのだ。

だから。
あのときから約1年の時を経て、「役を演じる」のではなく、「彩海せらさん」をショーアップして魅せる。そういう力って、どうなんだろう、どれくらい進歩できてるんだろうって、思ったんですよね。
ものすごく楽しみだったけれど、それと同時に。
また埋もれてしまう、ように、見えたりするんだろうか…?なんて、どこかで、ちょっとだけ思ってしまったり、していた。
ほんと失礼な話である。
まだまだ私は彩海せらさんの成長曲線爆伸び率を、全力で見誤っていたわけである。

だってそんなふうに思ってたところで、出てきたらこれだったんだもんよ。

ちょ、え、え、え、か、か、、
カ ッ コ い い ん だ が ー ー ー ー ー!?!?!?!?(動揺)

・男役・黒燕尾

初見時、あみちゃんが後ろから登場して場内からの拍手を受けた瞬間、本当にものすごい衝撃を受けた。
この、シンプルな黒燕尾で、主演のあみちゃんが他の方とお衣装として違うのは、内側のベストのキラキラだけ。
なのに、なのに。あまりにも、まんなかで躍動する彼女は眩しかった。
とてつもない勢いで発光しながら、バチバチにキメた踊りこなしが、次々決めてゆく瞬間の見得が、男役として、ゼロ番にただ一人立って一番強いライトを浴びるに足る格好良さと美しさをもって、確かに、いつだってあの舞台上に在った。
あのときまで本当に知らなかった。
あみちゃんが、あんなにもゼロ番で全員を率いるのがサマになる男役さんになっている、なってきているなんて。

この写真の一瞬にも美しく切り取られている通り、しみじみ、男役のあみちゃんの根底に流れているのは「望海さんの黒燕尾」だなあと思う。
ほんのわずかに口の端をゆるめて、薄くわらうように軽く天を仰ぐときの顎の角度、男役としての見栄の切り方、肩甲骨を張って伸ばして胸をはる、そのやり方。それらはなんだかもう泣きたくなってくるくらいに全部、ぜんぶ、私をここにつれてきたあのひとがいつだって素晴らしく、まんなかで魅せ続けてくれていた格好良さだった。
その技術を、確かに自分のものとして取り入れて、芸名の自分という存在をより強く輝かすための方策として使う、発信する。
そんな強さを、うつくしさを、確かに観客を魅了するものを、
他の誰でもないあみちゃんが、彩海せらさんが、こんなにも生き生きと観客へと見せつけてくれることが、本当に毎回、ひたすらに、ただただ、ものすごくうれしかった。
ゼロ番の位置を確たる己のものとして、常に誰よりもつよく輝く彩海せらさんの姿が、いつもよりもさらに大きく、まばゆいものに見えた。

・デュエットダンス

そんな眩しさでもう胸がいっぱいなのに、さらにさらに続いていくので本当にしんでしまう。
また何がエグいって、デュエットダンスになる直前のあみちゃん、まのんちゃんと組んで踊ってるんですよね。
キメッキメの男役の表情で。笑顔のまのんちゃんを、誑し込むみたいなスカした顔で…。
それがりりちゃんが下手セット上に登場した瞬間、ふわりとやわらかく解ける。
足許も軽やかに、スキップするような振りもこめて、走って笑顔で彼女をお迎えに行く。
あみちゃんが娘役さんに差し出す手の優しさが本当に大好きなんですが、またその中で「自分だけのただひとり」に差し出すときの手が、常よりさらに優しくリードするような感じを増すのが最高に好きです。
たしかこれは「月の燈影」のフィナーレでも思ってた…。毎回「アー!!」ってなってた…爆発してた…。

やわらかく踊りあうふたりは、本編でほとんど幸せな場面がなかった「エゴン」と「ヴァリ」のifのようにも、少しだけ見える。
何のしがらみもなく、ただ楽しそうに舞台上をすべるふたりがとても綺麗だった。全体的にやわらかな振りが、しっかりひとつひとつ、決まっていくのが素敵だった。
あんまりにも最後の最後まで全力であみちゃんがばっちばちに踊るので、「がんばれ…がんばれあと少し…!」って、毎回、特にちょうど軽くりりちゃんをリフトして半周くらいくるっと回る振りのところくらいで、ちょっと心の中でこぶしを握ってしまう自分もいたりした。
本当に余計なお世話である。やかましい。

・カーテンコール

さいごのさいごのさいごまで、あみちゃんの声が爆音で、とっても、とってもよい。
ちょっと気を抜くと、音の出だしで声がドバーンって出過ぎちゃうのも爆音族特有で好き。二回ほどあってンフフってなった。がんばって。がんばってあみちゃん。

そうやっていちばんさいごにみんなに迎えられて真ん中に登場するあみちゃん、さいごにみんなと歌う曲が、本編のエゴンとクリムトが交わす、あのやさしいデュエットなのがいつだってじんと来てしまう。
それこそここの彼女は「彩海せらさん」だから。
まだまだこれから成長していく、もっと伸びていく彼女へ向けられるあの歌詞が、どうしても、そのまま、彼女へのエールみたいに聞こえてしまってダメだった。
「君なら/僕なら いつか必ず」で終わるのが本当に…すごく良い…。

でもって、丁寧に三方礼をして。
一度降りた幕がもう一度あがると、そこに、かわいい「あみちゃん」がいる。

・ごあいさつ

もうさあ、ホント本編ではこんなにも文章を連ねてもまだ語りつくせないくらいにとんでもなくとんでもない「彩海せらさん」なのに!
もうあみちゃんなんて呼べないなって、何度も何度もいろんな場面で思ったのに!
いちばんさいごのご挨拶で、かわいいを全面に出してくるのやめてくれませんか!ギャップでグッピーが死んじゃうよ!!(古い)
しかも別に本人はただ真面目にやっているだけ、という、その絶妙な…かわいすぎるトンチンカン…。

個人的に、あまりに唐突に始まったクイズがものすごく印象に残っています。
クイズしてたのは全部で3回だったんですが(そしてラッキーなことにそれを全部観られてしまったんですが笑)
・一番最初の回だけやたらに数の開きが大きい
・その次の回からは数字を1ずつ刻む
・全部答えが「B」
だったのが、なんかもうじわじわ私の腹筋にダメージを与えてきてだめでした。
完全に問題と正解の数字だけ事前に入れて、その場で選択肢の数字作ってたでしょあみちゃん…でもってほぼ確実に1回目のクイズの後、誰かに「数字開き過ぎだよ」って言われたでしょ…w
毎回我々観客だけでなく、一緒に板の上に乗っている月組子たちまで「???」ってなってるのがホントにだめでした。客席とうしろがわの困惑にも本人はぴかぴか笑顔で、「あれー?」みたいな顔してるので尚更堪えるのがつらかったww
なんで…なんでほんと、そんな、かわいい…
そんななので、最終的に「あみちゃんかわいいなあ…(ほっこり)」で感想がまとまってしまうのである。いいのかそれで。
いやもうお願いだからずっとそのままでいて…そのまま愛されていて…あみちゃん…。

なんかまだまだ全然語れる気がしますが、それこそ熊倉先生の話とかほとんどできてないんですが、とりあえず①~⑤トータルでふつうに3万字をこえてしまったので、これにて一段落としたいと思います。我ながら狂い過ぎですね。
ここまで長々お付き合いいただきまして、本当にありがとうございました。
それくらい、この作品が、最初から最後までそうやって狂い続けていられる、作品世界への没入を阻害する要素がほぼ一切ないものであったことが本当にうれしい。
彩海せらさんのバウ初主演作を、こんなふうに、幸せな気持ちで見つめ続けていられた幸せを、あともういましばらく、味わい続けていたい所存です。


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