【論文レビュー】組織風土には何が影響する?
大学院の卒業を数日後に控えたところで、久しぶりにnoteを書いています。というのも、ここ最近の仕事で組織の風土や文化の課題だなと感じる事によくぶつかるため、チマチマと関連しそうな論文を読みはじめました。
今回読んだ論文はChatGPTにおすすめの論文を紹介してもらう中で見つけた以下です。
論文の概要
本論文では、中堅企業(従業員500名以下)の課長以上の管理者が調査対象の中心となっており、定量調査をもとに組織風土を規定する要因の影響力を大まかに捉えることを目的としています。
組織風土については研究者によって様々な定義がありますが、本論文では組織風土を「組織内において共有された行動パターン」と定義しており、規定因を5つに分類し作業モデルを作成しています。また、作業モデルに対する仮説が5つ設定されています。
仮説1:環境変化は, 組織風土に対して影響を及ぼしているだろう。
仮説2:全社的な経営成果の変化は, 組織風土に対して影響を及ぼしているだろう。
仮説3:特定の成功体験は組織風土に対して影響を及ぼしているだろう。
仮説4:組織構造・システムの変化は, 組織風土に対して影響を及ぼしているだろう。
仮説5:経営陣の交代は,組織風土に対して影響を及ぼしているが, 新卒採用・中途採用の増加は、組織風土に対して影響を及ぼしていないだろう。
従属変数となる組織風土は、因子分析の結果「部門間コミュニケーション」、「自主性」、「顧客志向」の3次元となっています。
(信頼性係数の低い仕事中心志向、1項目のみの実験主義は除外)
独立変数となる組織風土の規定因は7つの因子となっています。
本研究のモデルにおけるパス解析の結果は以下の通りとなり、仮説1、2、3は支持され、仮説4、5は部分的に支持される結果となりました。
次に、組織風土の全体的な変動(組織内における行動のパターンがどの程度変化したか)について重回帰分析が行われました。
その結果、有意に寄与している変数は「組織再編成」、「環境変化」、「経営成果の変化」の3変数となっています。
この結果はパス解析の結果とほぼ一致するものであり、組織における何らかの行動パターンの変化に影響を与えるのは、「組織構造を人為的に変革する組織再編成」、「外的な要因である環境変化」、「業績向上という経営成果の変化」であることが明らかになりました。
この結果は、仮説1、2を支持し、仮説4、5を部分的に支持しますが、仮説3は支持されませんでした。
(ただし本分析は非常にラフなものであるため、大まかな方向性のみを示している)
所感
本論文の考察部分では、「経営陣の交代による組織改革の効果が見られなかったが、経営陣の交代は組織再編成と強い相関が見られるため、交代した経営陣が組織変革を実施することで間接的に組織風土が変化すると考えられる」と述べられており興味深かったです。
ただし、組織再編成がすぐに、プラスに組織への影響を与えるとは限らず、むしろ一時的・短期的にはマイナスな影響が出る可能性も十分に考えられます。それを乗り越えるためには、組織再編成の目的と編成後に目指す姿を明確に伝えられるかが1つの鍵になるのでしょうか。
また、他の考察では、業績と組織風土・文化の因果関係についても触れられていました。どちらが原因・結果か単純なものではないですが、感覚的には業績がよければ風土・文化も良くなるだろうと感じます。一方で、業績が良い時ばかりではなく、低迷している時に負のスパイラルから抜け出すためには、組織風土・文化の変革が起こり業績が改善され、その変化を感じることで変革がさらに促されるというイメージもあります。
この辺りも含め興味深い論文が見つかったので、色々と読み漁っていきたいと思います。
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