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高畑勲展。のんびり見聞録 - 8

静岡の友人に会いに行ったとき、静岡市美術館で高畑勲展が開催されているのを知りました。数年前に東京で行きたかったのに、タイミングが合わずに諦めた展覧会です。

ん〜!見たい!

友人と別れた後に、すぐに電車を乗り継げば夕食までには帰れたのですが、遅くなるのを覚悟して入場料を支払い、じっくりと見てきてしまいました。

「アニメーション映画で『思想』が語れるんだ」


「アニメーション映画で『思想』が語れるんだ」
「『思想』を『思想』として語るというより物に託して語れる」

という言葉にハッとしました。

ちょうど、創作物というのは、自分の見た世界を自分の中で咀嚼・解釈して、自分の力で表し直す作業なのだと最近考えていたので。

そう考え始めると、今までなんとなしに見ていたアニメを思い返して、あの表現は?あの色は?あの画角は?全てが気になり始めますよね。

テンション・チャート

個人的に好きだった展示物は「テンション・チャート」です。映画の時間軸に、テンション(緊張度)の上がり下がりなどを表したものですが、実は小学生の頃、わたしもこれをしたことがあったのです。
(展覧会は撮影禁止だったので、写真はありません…)

あれは確か、『注文の多い料理店』だったと思うのですが、この物語はすごい!!と感激したわたしは、教科書に直接、まさに「テンション・チャート」の線を引きました。ここが盛り上がるのよ!とグラフを周りの友だちに見せたら、「えっ教科書に落書きしたの?そんなことしちゃいけないんだよ!先生にバレたらまずいよ」と非難されてしまいました。えへへ。

でもわたしは、その上下して濃淡のある線に満足していて、心の中で「こ〜んなに面白い作品なのにさ」と口を尖らせていました。

それから20年弱経って、

え〜!ジブリの世界を作った人たちも描いてたの〜!??

と大興奮でした。ちょっぴり、いや、かなり嬉しい。

日本人の顔の新しい表現

『おもひでぽろぽろ』では、笑いじわなども描き込んで、「日本人の顔の新たな表現方法」を探ったとのことでしたが、その後の『平成狸合戦ぽんぽこ』では、細かく書きすぎては見る人の想像の余地を邪魔してしまっているのではとして、描くもののメリハリを意識したのだそう。なんだか音楽の話を聞いているみたい。これでも一応音楽学徒なので、やっぱりそういう風に関連付けて考えてしまいます。

『かぐや姫』では、完成品にスケッチの後を残しているのだそう。でも、たった2秒のカットに50枚以上もの絵を用意するのだというので、メリハリをつけることは手を抜くことではないんだなと思いました。手放したように見せかけて、緻密な作業が行われている。人の営みって美しい。

今みられて良かった

数年前、この展覧会を逃したのは学部を卒業する少し前だったと思いますが、あのときに見てもここまで楽しめなかったはずです。あのときはあのときなりに満足したのかもしれませんが、今回偶然宣伝幕を見かけて、すうっと吸い寄せられるように高畑勲の世界に入り込むことができたのも奇跡的ですし、あのときから数年分、わたしの見方でこの世界に触れ、学び、それからだったから、今みられて良かったという気持ちが強いです。

公式ブックを買ったらインタビュー小冊子を頂き、フォトコーナーで写真を撮ってSNSにアップしたら素敵なグッズも貰えて、至れり尽くせり。地方都市だからこそのゆったりとした雰囲気で、じっくりのんびり味わうことができました。静岡市美術館さん、ありがとうございました!

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