感情
きっと、今だったらもっとうまく立ち回れただろうなと思うことが山のようにある。でもそれは今だから言えることなのだといつも思う。
記憶だったり思い出だったり、頭の中に残っていることは噛み合わなかった何かばかりだとしても、現実ではきっと、霞んでいる中に幸せだった気持ちがあったはずなのだと。
気持ちが通じた時間が、例えば短くて一時の間だけだったとしてもそれは紛れもなく事実であって、同じものを見て笑ったことも本当のことだった。
置き去りにしてきた気持ちは今、何処にあるんだろうなと周りを見渡してみても見つからないままで、自分がそこから動けないでいることだけは、結局は変わらない。
伸ばしてくれた手を掴めないでいるのは、誰のせいでもなく自分のせいなのは分かっているのに。
移ろいやすい感情を守ることに必死になりすぎて、他の大切なものが手の中から離れてしまうとしても、それでも多分、何かのきっかけを待つだけの暮らしを重ねて行くしかないんだと思う。
とても痛い、重い、思い。
感情。移ろいやすい感情であるからこそ、僕らはそれをとても大切に守ろうとする。
いつかどこかでこの手の中から離れてしまうものなのだとしても、それでも。
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