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 昔ロンドンの美術学校に居た時、ある人が言った。
「アートってさぁ、まずは感情表現じゃない?」
 感情よりもまずは技術だと言う自分に、同じ日本人の彼女はそう当てつけた。
 馬鹿言ってんじゃねえ、お前の感情なんて如何ほどのものだよ――と、うっかり口に出かけたけれど、意外と創作にはこんなお花畑アタマもいるんだ。
 今日も無事ケガもなく終わりました、なんて、毎日大した変わり映えのしない社会生活を繰り返している人間が全てを出したところで何になるんだよ。
 感情の表現なんてのは、自分でも嫌というほど基本を繰り返した後の、さらにその後の話だ。それをすっ飛ばして「もしかすると」の可能性を信じるなんて――いや、そういうの、多いな。

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