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ミリしらミドサーが落語を聞きに行ったら思ったより楽しめた話
著者のプロフィール
30代中盤、ミドサーと呼ばれる世代の男性
落語を観に行ったことは今回が初めて
古典や歴史は結構疎い
ふと気になった起源は(きっと)笑点とじょしらく
今まで直接触れたことのない落語を今回聞きに行こうと思ったキッカケというのは、2025年を迎えた三が日でこれまでまともにやったことのなかったやりたいことリスト(いわゆるバケットリスト)を書いたことが実現に至った大きな理由である。基本的には100個を目指してリストを書くそうなのだが、60を超えた頃にはもはや搾りかす程度のトピックしか思いつかず、無理矢理ひねり出して80個を超えたところで打ち止めとなった。こんな有様だが、落語を聞きに行きたいという項目は割と早い段階で思い浮かんだ。
書き出した時にはあまり考えていなかったが、観に行ったあとで振り返ってみると興味を引いたルーツとして笑点とじょしらくだったのだろう。
笑点
現在はテレビを置いていない生活をしているため視聴していないのだが、実家に居た当時、日曜の夕方に付いてるテレビに目を向けると度々映っていたのが笑点だった。大喜利の前の演目については全くと言っていいほど興味はなかったのだが、大喜利自体は自分でもわかる内容も少なくなかったのでうっかり見てしまっていた。
歌丸さんと円楽さんのやり取りが面白くて見てた部分もある。
じょしらく
ぶっちゃけいうとあんまり内容は覚えていないのだが、結構当時の時事ネタがぶっ込まれていたような攻めた内容だった気がする。
マリーさんが特に好きだった。丸京さんも結構ぶっ飛んでたような…?
OPも好きなのだが、世間一般的にはおそらくEDの方が通りが良いはず。
お気づきかと思うが、肝心の落語についてはあまり焦点が当たっていないのである…。ただこんなんでも、おもむろに観に行ってみようと思った動機はここにある。
そもそもどこで観れるんだ…?何を観ればいいんだ…?
と、思い立ったもののそもそも落語はどこで観れるのかすら知らなかったためGoogleで上位に出てきた落語芸術協会のはじめの一歩のページを拝見してみた。
もしや、浅草あたりまで出なければならないのか?などと思ったりもしたのだが、見てみると幸いなことに近場の横浜にも「横浜にぎわい座」と呼ばれる寄席があることを知った。野毛の飲み屋にはたまーに訪れるのに全くしらなんだ…
にぎわい座は2002年の4月に開場したらしく、歌丸さんもかつて館長を務めていた寄席だったそう。改めて桂歌丸という人のすごさを感じる。
観れる場所は判ったものの、今度はなにを観たものかという悩みにぶち当たってしまった。なんせ、定番の落語みたいなものすらも良くわからない始末で良くて寿限無くらいしかわからないいわゆるミリしら(=1ミリも知らない)に近い人間が観に行こうというのだから…
色々初心者向けのページを眺めてみたものの、どれもあんまりしっくりとしたアドバイスとして刺さらなかったので直近の公演をつらつらと眺めていたら自分でも知ってる人の名前が出てきた。「鶴光でおま」でご存じ、笑福亭鶴光さんの一門会があるではないか。他に何か判断材料があるわけでもないし、とりあえず観に行くということを優先してこれに決めた。
(さも、鶴光さんを存じてるような物言いをしているが、「鶴光でおま」、「わんばんこ」以上の情報は私のデータベースにはないのはここだけの話)
いざ、横浜にぎわい座へ
にぎわい座の公演は各種プレイガイドでの取り扱いがあまりなさそうで、公式のWebサイトから座席指定でチケットを取ることが可能だったのだが、バタバタしていたこともあり、取り損ねてしまっていた。そのため、現地で当日券が空いてるのを期待して現地へ赴いた。能天気だなと思われるかもしれないが、空いてなかったら一つ路地に入ってしまえば野毛で飲んで帰れるという立地柄もあり、気軽なマインドで向かった。
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にぎわい座は4階建で、1階には各フロアへ止まるエレベーターが置かれているのみ。2階には総合案内と称されるロビーフロアがある。そして3・4階が芸能ホールと呼ばれる公演会場が置かれている。地下もあるらしいのだが、今回は足を踏み入れていないため割愛する。
想像には難くなかったのだが、もう入口の段階で私より一回り二回りしている人生の先輩方が多くみられた。
入口に立たれているスタッフの方に当日券の購入について尋ね、早速2階の総合案内へと向かった。名の知れた噺家一門の公演で空いてるんだろうか?という心配もあったのだが、幸運なことに1階席の座席が空いていたため、即座に購入して無事会場へ入ることができた。チケットは3,200円。
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早速もらったチケットを携えて3階へ上がるとホール前でチケットの半券を切られる。入場は開始しておりホールへも入れたのだが、開演までは若干時間があったので、ホール前に腰掛けが設けられてるのでそこで少し時間をつぶした。ホールからは開演までの間のにぎやかしか、祭囃子がピロピロと鳴っている。
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開演時間も迫ってきたのでホールの中に入る。ホール内は撮影してよいか不明だったので写真は撮らなかったのだが、目に付きやすい縁日感のある提灯がホール両サイドに飾られており彩を与えている。後は嫌でも目に入る正面にバーンと降りている舞台の幕。この手のホールの幕は毎回見る度デカすぎて勝手に圧を感じる。
自分のチケットが示す座席に向かう。座席間は結構狭く、シネコンのシアターに置かれている座席とは異なる。肘掛は細く、足を置く通路はかなり狭かった。さほど奥まった席ではなかったので苦労はしなかったが、座っている人に手間をかけさせてしまうのは個人的には気まずい。
席について目の前の座席の背面にちょっとした折り畳みテーブルが備え付けられてるのが目に入った。今回は小型のバックに入れてたら事足りたので使用しなかったが、周りを見渡すとこのテーブルに事前に自販機で買ったペットボトルのお茶や今回の公演のビラを挟んだりして使っている方が多かった。
入ってるお客さんの年齢層としては、やはり人生の先輩方が9割以上を占めてる印象。私くらいの同世代が数名くらい、より若そうな方は見当たらず…といった比率。若年層で落語に行きにくい要因はこの年齢層の圧倒的な差もあるかもしれない。にぎわい座は施設の外も内も綺麗だと思うので、入るのにあんまり抵抗はなさそうだが。
開演までのわずかな時間で他に目に入ったのは、先ほどの両サイドの提灯、その下に普通の席とは趣の違う座席が。桟敷席というらしく、遠目で見る感じだと今回私が取った普通の席よりもゆったりと座れるように見えた。後に記載するが、もしかするとこっちの席が取れたならそちらの方が体験としてはより良いものになりそうな印象がある。
そして舞台の幕が上がる
ほどなくして祭囃子も止み、幕が上がり、舞台が観衆の目の前に晒される。舞台背景として一般のご家庭には絶対ないだろう正方形にも近い形をした襖4枚、その上に額に入れられた「笑う門には福来る」という漢字4文字。前方にはこれから現れる演者が座るであろう紫色の座布団。脇には「開口一番」と書かれたスタンド(めくりというらしい)がぽつんと置かれている。
トップバッターで出てきたのはおそらく末弟子的な立場の方が袖から出てきて座布団へ座りペコリと挨拶。そこから話を始めるのだが、緊張しているのか声のボリュームが小さくあまり耳に届かない。話していく過程でボリュームが上がっていき聞き取りやすくなった。古典的や大昔のアニメのネタが挟まれていたりしたので個人的にはちょっと刺さらなかったが、その世代にはウケている様子。ひとしきり話終えたところで袖へ掃けたと思ったら、台と柵のようなものを持ってきて座布団の前に置く。台の上には何か小さなものが置かれている。座布団をひっくり返し、袖への帰りがけにスタンドの題目、次の噺家のお名前をめくり出して掃けていく。
これを1セットとして一門のお弟子さん方が次々と各々話をしていくのだ。
話が進むにつれて分かったが、台の上に置かれてる小さなものは話のここぞというときにバチン!と叩いて鳴らすのに使うものだった。後から名称を調べたところ小拍子、というらしい。ついでに知ったが、小拍子が置かれている台が見台、前に置かれる柵は膝隠しというそうな。
今回の公演は総勢8名が出演する内容で、6名が入れ替わって次々と話をしていった。最初のお弟子さんの話の中では実はあんまりピンと来ていなかったのだが、最初の何名かの話を聞く中で唐突に導入から本編に入るやん!と感じていたのだが、本編に入る合図=羽織を脱ぐという行動で示していることに気付いた。これを理解してからハッキリ流れを理解できるようになった。
(後から出てくる一部の噺家さんはちゃんと本編に入ることを教えてくれたりもした)
この辺りはちゃんと落語のコンテキストとして理解していないと疑問符が浮かんでしまうかもしれない。とはいえあまり大した問題ではないとは思う。
6名の話が終わると10分の休憩時間が訪れた。トイレが男女ともに混雑して列をなすことになる。私は後から尿意を催したので残り5分くらいの時に席を立って3階のお手洗いに入ろうかと思ったのだが、列ができていたので2階に降りて総合案内の脇にあるお手洗いへ向かった。が、こちらも当然列になっており、用を足した後はもう再開間際だったので慌てて戻った。トイレは余裕をもっていくのが吉。
(2階から戻るときは半券が必要なのでちゃんと持っていこう!持ってくの忘れたおじいちゃんはスタッフにふわっと通されてた気がするけど!)
再開後には、位のお高いお弟子さんが話をした後、トリの鶴光さんが満を持して登場。こうして全員が話をした後、最後に大喜利を挟んで公演の終わりとなった。
話の内容を一つ一つを細かく語るのはもしかするとネタバレなどになってしまうかもしれないので割愛するが、初心者ながら「富くじの話」と「終わりのない話」が個人的には良かった。内容的にも予備知識をあまり必要としなくて分かりやすく、話の内容や話し方の抑揚・間の取り方、笑わせ時、話のイメージを膨らませる着物の袖を使った所作などもあり、小気味のいい内容だった。
鶴光さんの話の内容はしっかりついていけてなかったのだが、飲み物を飲む所作や扇子を使ったパイプをくわえる素振りなどは説得力のある動きが見どころだったなと感じる。
後は噺家によっては下ネタのデパートのような方もいらっしゃるようで、今回はそのあたりも初心者にとっては救いになったかもしれない(笑)
下ネタは万国共通、みんな友達。
公演を通して振り返ると、冒頭の末弟子とトリの師匠を比べてしまうとやはり明らかに話のキレというか心地よさというか、何かが違うのを感じ取れる程度には力量というものが如実に表れるものなのだなーとびっくりした。
大喜利は観る側もわかりやすいお題ばかりだったので、話を聞くときよりもクールダウンするようにリラックスして観覧できた。ディスってるわけではないが、アホさのあるパートで結構笑ってしまう。笑点のように座布団を増やす減らすスタイルではなく、ヘマしたら司会の鶴光さんがハリセンで叩いていくスタイル。非常に明快で面白い。お弟子さんたちの連携ボケもGood。
初めての落語の感想
1点だけ不運に見舞われた個人的な事情があり、ネガティブな内容となるためケツだけ読んだ人の最後の記憶とならないように冒頭に記すが、普通席は隣同士の間隔が狭めに設けられている。そのため隣人に左右されるガチャ要素が存在する。今回残念ながら隣人ガチャに失敗してしまったようで、お隣さんがとてつもなく笑い声が騒がしい方だった。笑うたびに私の鼓膜に響くボリュームで笑っており、ホールの中にも一段と声が響いていたと感じた。あとはそうでないときも時々、頭をかいたり、膝をひたすらかいたり、独り言をぶつぶつ呟いたりと個人的には目に余る部分があった。
これを読んで初めて行こうかなと思っている皆様方に置かれては、こういった後顧の憂いがないよう、桟敷席や通路際の席が取れるようであれば、そちらの方が体験としてより良いものになる可能性が高いかもしれない。
とまぁそれはさておき、落語自体についていうと箸にも棒にも引っ掛からない、話についていけないんじゃないかという一抹の不安はあったのだが、実際聞いてみると小噺は割と近況のような話も少なくなく、心配は杞憂だった。公演が進むにつれてつい口角が上がってしまう、くすっと来てしまう、声を出して笑ってしまう部分も少なくなく、体験としては良いものだった。
クラブのような派手な盛り上がりはなくとも、どこか温かみのあるような穏やかな雰囲気がお客さんたちを寄席へと引き付けているのかもしれない。
唐突に本編に入って「あれ?なんか急に変わった?」というのだけは面食らいポイントだと思うので、羽織を脱ぐモーションだけ気に留めておけばよいのではないだろうか。
どうしても古典的な要素がちょこちょことは出てきてしまうので、古典や歴史が得意な人は落語に入門したての方でもより楽しみやすい可能性がある。
(これはバッドマナーの可能性があるが)話についていけない場合はウトウトしてしまうこともあるが、周りを見ると人生の先輩方でもお舟を漕ぎそうな方がチラホラいらっしゃるので一休みしてもよい…かも?
と、徒然と今回伺ったときの内容を文章に出してみたものの、他の公演は別にんなこたぁねぇよ!という可能性もありそうな気もしなくもないので、また機会を作って覗きに行ってみようかな。今度は誰か友達を連れて感想会ができたらなお良いか。
おまけ:少し早い晩御飯に
本項はまったくもって落語とは関係ないのだが、にぎわい座での公演が17時少し前くらいに終わった後、お昼を食べていないことを思い出した瞬間に腹の虫が鳴り出してしまった。
早めの晩御飯を取って帰るか…と、メニューを考え始めた矢先に脳裏によぎったのはおきにいりの「すみれ」の味噌ラーメン。
食べたい衝動を抑えきれずに、食べログで営業時間を確認する。
なんと17時からの営業ではないか!!しかもにぎわい座からは徒歩2・3分の距離!!!行くしかない!!と早歩き気味にお店へ向かう。
到着したときには開店前だというのにすでに10名以上の並びが。流石人気店。普通のお店の並びなら基本的にスルーして他のお店へ入ってしまうのだが、すみれとなると耐えてしまう。それくらい好きな味噌ラーメンがここにある。並んでるといってもこの程度の並びであれば最初のロットでお店の席には着けるので無問題。
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残念ながらこの旨味を語れるほどの語彙力を持ち合わせていないため、気になる諸氏は黙って一度啜ってみてほしい。たのむ。