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EP1-2 歪み


money 忘れちゃだめ紙切れ

money 塵も積もれば山

money 時に死を選ばせる

生きるために今日もmake more money

          rykey「paper」

少し派手になった身なり 颯爽と歩く街
俺は小分けのpushを続けながら
扱う量を少しずつ増やしていき
ちょっとした卸売的なことも始めていた

上から降りてきたものをまた下に卸す
その間で通行量として商品の値段に
数百円でものせれば多少の儲けになる

車も利君が用意してくれたので 
配達も始めた 1人手伝ってくれる人間が
見つかったので 一緒に組んで動くことにした
その人間は たか、という同級生だった
彼は後輩などの繋がりが多く
俺の商売の拡大に大いに役立った

たかが千円札を扇子のようにして言う

「これ全部万札やったらやばいな」


「全部両替したら…七、八万?」

pusherの悩みとして
千円札と500円玉を大量に持て余すという
今思えば贅沢な悩みがある

やり取りの際
お釣りは出さないようにと頼んでいるので
必然的に千円札や500円玉が嵩む
1gを2人で取りに来たりもするので
致し方ないことなのだが

夜の10時を過ぎる頃 客もまばら
俺達は車に乗り込み配達に出る
客達の住所からルートを考える
近いところからか 遠いところから
気分で流す rolling

ホテルの一室 白煙が渦巻く

ハイハットが心地良い

腰を揺らす 絶頂が遠い

着信 ただいま電話に出ることができません

もうなんだっていいよ
だからさ今だけは幸せでいさせて
今は快楽以外いりません

痛む頭と 赤い目 瞳孔はビー玉
唇は割れて 汗が甘い
オロナミンCとウィダー(エネルギー)
チョコレートが優しい

そんな日々を送っていたある夜

「なぁ白いってるやろ?」

たかが聞いてきた

「あぁ最近いってるなぁ」

「絶対そうやと思った」

「なんで言ってくれへんかったん?
 このあと一緒にいこうや」

junkieは孤独が嫌いだ

時間と少しの金 drugには困らない

部屋では女と jobが終わればたかと

炙る量は増えていった

もっとくれ もっともっと

たかとは寝ずに話した 夢の話

7、8時間 速すぎる頭と顎で

信頼や絆を語る 膨らむ妄想

お前に言っている 横の値段はブラフ

でもお前が必要なのは真実

「俺とお前だけは絶対最後まで一緒や」

答え合わせは2人でできない

あぁ鬱陶しい 

ライターのガスが切れた

蝋燭を買ってきて灰皿に立てたお前

傑作や膝を叩いて笑う

いつから寝てないっけ 今何時 頭痛い

明日の予定が 背中にまとわりつく

少しずつだが確実に
俺は白に溺れていった
生じた歪みには気がつかない


So much shit got me hurt
多くの出来事が俺を傷つけ

I take it day after day
毎日それを受け止めている

It's like I gotta pop these Percs so
I could heal all the pain
この薬を飲めば全ての痛みが治る気がする

     Quando Rondo「Me First」

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