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四文日記


朝。

東の都の或る安宿にてこれを書いている。

明日道玄坂の教会で歌いにいく。
その唸るほど安い宿に着いたのは昨日夕方で、
夜は同郷の友人と新宿で呑んでいた。
今日はぽっかりと空いているのだが、この余白を予め決め込んで前乗りしたというわけではなく、自分のとんちきからできた余白なのだ。
お呼ばれしたイベントが催されるのは日曜なのだけれど何を勘違いしたか土曜日だと思い込み、その体で予定を組んでしまっていたのだ。友人が見に行くと言ってくれていたのに、土曜日と伝えてしまっていた。
このあいだギタアを家に忘れてきてしまったりと自分の粗忽さには本当に呆れてしまう。
(これは今に始まったことではなく物心と同時についてきたオプションのようなのでどうすることもできないのです)

何もやることが無い事自体は全く問題ないのだが宿は1日分しかとっていないので、いやでも午前中の間にほっぽり出されてしまう。
どこへ行こうかと考えているところにこれを書いているというわけだ。
思えばここらへ歌いにきたとしてもとんぼ返りで、東の都で1日ゆっくり過ごすということをこのところしていない気がする。
1人で街をぶらつくのもありなんじゃないかしらん。

昼。

持ってきた一冊。中上健二著「岬」
何年も前に友人から同作家の「枯木灘」お薦めされたものの読むことは無く、不意に思い出しその足で書店へ買い求めた。
あいにく枯木灘はおいてなくて、短編集の岬を買うことにした。
調べてみると、新宿に彼が通っていたブラジル珈琲館という喫茶店があるというので、そこで岬を読むことに。宿からてくてくてく。歩く。

丁度昼時であったのでめしも兼ねようと考えたけれど、店の前に掲げられているランチメニューがミックスサンドのみだった。
もうちこっと腹に溜まるものを食べたい気分だったので周辺でよさげなところがないか散策することにした。ブラジル珈琲館は大きな交差点に面しているのでそこから路地に入ってみることにした。

「偶羅奈陀」という洋食屋を見つけた。
階段を登ったところに置いてある豚の夫婦アンティーク人形に誘われたような気がして、すぐここにすることに決めた。
「paypay」やめましたの貼り紙。

西洋風丸太小屋のような店内。
まだお客はいない。夫婦で営んでおられて、どことなく表の豚をおもってしまった(失礼すぎますでしょうか?)
海賊が一杯やるにふさわしい木製の丸テエブルに座る。アンティーク人形や印象派の絵画、「主役は選手だけじゃない。私たち全員が主役だ、みんなで一緒に応援しよう」と書かれた2020東京オリンピックのうちはが10ほどテエブルの脇に挿してある。腰掛けたすぐ後ろには、木製のピッチフォークが立てかけられている。
スペイン風オムレツと迷った末に煮込みハンバーグにした。
とっても美味しいハンバーグ。ご飯をおかわりした。
ハンバーグは美味かったのだけれど、応援する側は流石に主役ではないんでないかしら。と首を傾げながら喫茶店へ。

アイス珈琲を頼むと女給さんが驚くほど早く持ってきてくれた。
彼は此処で執筆活動をしていたみたいだが、席は原則60分以内とある。
中上健二は文体が独特で、今のところいまいち馴染めずにさくさくと読み進めることはできないけれど惹かれる。何故だろう。これから好きになっていきそうな予感がむずむずとする。

喫茶店のあとはすぐそばの大きな公園へ行こう。


夜。
今日泊まる宿から程近いスタジオへ。
いつも使っているスタジオと勝手が何から何まで違って苦労した。アンプさえ置いていない、DJ用のブースだったみたいだ。

スタジオ終わりに呑み屋を探す。
雨が降っていて湿気ているのを晴らしたく麦酒が飲みたくなった。昼が洋だったから夜は和と決めて蕎麦屋を見つけこちらで一献、と思ったが閉店間際だったので断念。
ウロウロヨタヨタ回った末、三好弥という老夫婦が営む洋食屋に入ることにした。今日はそんな日みたいだ。

今年初の冷やし麺(冷やし中華)そして突き出しはほうれん草の白和え。
麦酒を呑む。からしをたっぷりとつけて冷やし麺を食べる。
麦酒の値段が、あちらとこちらの貼り紙で値段が違う一体どっちなのかしらん。

二軒目は四文屋。芸人のサンシャイン池崎さんがよく1人呑みに来るという四文屋。
京都には無いチェーン居酒屋。
芋焼酎とホルモン漬けをいただきながらこれを書いている。

あんまり呑みすぎないようにしなければ、








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