さりとて草履で坊ちゃん日記
よっつの草履はぺたんぺたん(仮)
時間に余裕をもった筈なのに、気づけば余裕をどこかに落っことしちゃって、結果余裕がないなんて事は想定範囲内の事で、どれだけ余裕もったとしても結局は余裕がなくなるのは僕の人生において、瑣末な事、一々気にしていては身がもたぬということで、ある意味余裕を持って、ぎりちょん、発車一分前に、電車に滑り込む。
先に余裕をもって乗車していたタニザワさんの横の席に座る。彼は本日お供していただく男、先輩。(今回の「さりとて裸でちくわ笛」のどれかの話で、彼をモデルにした箇所がある)
はじめての愛媛でのライブ、電車の旅。まずは岡山を目指す。
列車は、人気キャラクター、あんぱんのヒーロー仕様、僕は小さい頃、ビデオを録画するほど好きだったが、タニザワさんはそうでもないらしい。あんぱんのヒーローの正義の鉄槌、あれは恐ろしい、あんなものを間近で見せられてしまったら、平生、まともなコミニュケーションがとれるはずがない、やっぱり一緒に飲みに行きたくなるのはカレーパンのヒーローの方だ、なんてことを話していると、列車の走るすぐ横は穏やかな海。ほんのすぐそこに青がある。
縹渺と穏やかな景色の中に、大きな、といってもここからでは小さいタンカーがゆっくりと進む。
写真をとる。海を走ってるみたいダワ。なんて。
岡山から電車を乗り換えて、瀬戸内海のよこっちょをごとんどこん。
「実は、頭より体の方が先に行動を起こしている」「食パンのヒーローはいけすかない」「自分なんてない」なんて話をしていたら松山に到着した。
手切りで改札をくぐり松山到着。
つっかけでやってきた二人はぺたんぺたん、路面電車に乗って、本日の会場である書店、本の轍に向かう。
店の名はボブディランの血の轍からきているらしい。
店の入り口には額に入ったフライヤー、こじんまりとした店内には、店主オチさんによって丁寧に選ばれてるのだなと一見して分かる本たちがズラリ。僕は帰る前にリチャードブローディガンの「芝生の復讐」を買った。
今回帯同してくださったスタッフのイヌイさんは、鯨の声を集めたレコードを購入していた。
魅力的なもので溢れる店内。
荷物を置かせてもらった後に、食事と一杯。タニザワさんは二日酔いの筈だったのだが、おいしそうに、タイの飯(名物の鯛めしではないですよ)に赤ワインを飲んでいた。
とってもあたたかいお客さんたちと、優しさ溢れる本の轍のおかけで、ほくほくと終演。
お客さんからたくさんの耳より情報をいただき、打ち上げには豚足屋、出てくる料理に舌鼓をうち、どんどんとビール瓶が空く。
そこから梯子をかけて、寿司屋のような体のおにぎり屋でそば焼酎。卵くらいの大きさのおにぎり、僕はしそ昆布と、からし茄子、それに豚汁。愛媛の汁物は、というよりなんでも甘いらしい。(甘いラーメン屋もお勧めされた)
とっても美味い。
「もうチェック時間を過ぎております」
冷酷残虐な地獄からの囁きが電話口から聞こえてきた時は肝を冷やしたが、なんとか入れてもらうことができた。
はらはら。
ぐうすか。
翌朝。
路面電車にのって朝飯。
鍋焼きうどん屋、昨夜ライブを見にきてくれた方が働いておられるお店、タニザワさんと朝から並ぶ。
なんと、前列にはスタッフの乾さんがいた、おはようございます。
アルマイト製の鍋にぐつぐつうどん。
愛媛の料理は甘い。やっぱりうどんも甘い、とってもうまい。いなり寿司を相方にして、するり平らげ、さあ、道後温泉へ、とその前途中の商店街で何やら催し、足を止め、衝突事故体験。
タニザワさん、イヌイさんとマシーンに乗り込み、時速5キロの速さで衝突。あらま。
かなりの衝撃、気をつけましょうねえと、自戒をもちながら、イヌイさんとは別れて、道後温泉へ。
湯の神様にお参りをし、汗をかいてから、湯屋へと向かう。
複雑難解なシステム、料金によって入れる風呂、部屋が異なるらしく、道後温泉に足を運んだ夏目漱石も、「8銭だせば三階にあがって、茶菓子をもらえて身体を洗ってもらえる」なんておっしゃったらしいが、文豪でもない庶民である私たちは松竹梅でいうところの竹付近のコースを選び、湯にドボンと入り、自分できちんと体を洗い、湯上がりには浴衣に着替えて茶菓子をいただく。
さあ、お暇しましょうと、したところで中居さんに声をかけられる。
「テレビにでてらっしゃる方ですよね、、?」
「いえいえ、そんなことありませんよ」
「ええ、ほんとですか?」
納得していなさそうな顔をする彼女は僕のことを誰かと勘違いしているらしい。
湯上がりに一杯、すぐ近くの店に雪崩れ込み、じゃこカツ、じゃこ冷奴、タコの酢の物で、坊ちゃんビイル、焼酎をいただく。
そうすると、隣の席の人に声をかけられた。
「○○さんですよね?」
違う、某有名バンドボーカルではない、タニザワさんである。谷澤ウッドストックである。母親の隣に座る小さな女の子は残念そうにしている。いちおう謝っておいた。
どうやらこの街ではギターを持って闊歩していると目立ってしまうらしい。
近くでタニザワさんの知り合いが、野外イベントで出店されているということで、カレーを食べにいく。ここでもビイル。
カレーにトッピングされた、ハバネロをのピクルスを齧って二人で悶絶、ひいひいひい。
帰りの路面電車に揺られていると、本の轍のオチさんから僕たちに連絡がきた。
「道後温泉で休憩したら、ミュージャンらしき人が、本の轍さんの事を話していました」とある方から連絡をもらいました。ということであった。
本の轍にこの連絡をいれたという方は、なんと大竹昭子先生。大変な作家さんだった。
偶然隣り合わせたみたい。
良くも悪くもこの街でギターをもっていると目立ってしまうらしい。