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しあわせのいどころ




僕についてこれば、「幸せのいどころ」に連れて行ってやるよ!そんなところで寝てないでさっさと準備しなよ(仮)



なぜ紙袋を持つと、ちょっこし特別な心持ちになるのだろう。取手がない類の紙袋、カサカサいわせて買ったものを取り出すと、紙の匂いがほんのり漂う。あの時でしか得難い、仄かな幸福の種があるような気がしてならない。
少し不便、それでも許せる。

コロッケが入った紙袋、パンが入った紙袋、ハンバーガアが入った紙袋、ドーナツがはいった紙袋、クッキイが入った紙袋、ポップコーンが入った紙袋、何も食い物だけじゃない。
本が入った紙袋に、雑貨が入った紙袋、まあいいや、他にも沢山あるだろう。
長い間もつと紙袋は手汗で少しだけ湿る、くしゃっとなる、それもよい。
家へ帰ってから取り出す、すぐに取り出す、かさかさ、ぽん。
揚げたてコロッケ、油が少し染み出す、取り出すと、もわっと温い香ばしい匂い、また食い物の話になってしまった。

何が紙袋から飛び出したら嬉しいのか。
紙袋から飛び出す風船。
紙袋から指輪、あらま、ろまんちっく。
紙袋からインコ、手品師みたい。
紙袋からトイレットペーパー、なんだかお尻に優しそう。
紙袋から鳥打帽、紙袋から襟巻き。

「紙袋からつるぴかの泥団子」
魔法の粉をかけたんだよおっ
魔法の粉?
うん、魔法の粉!
なんだいそれは?
学校のね、端っこのところにね、サラサラなお砂ばっかりのところがあるの、それをかけて、こうやって優しくこするんだよ。
へえ、こんなに綺麗にまあるくなって、つるつるすべすべになるんだねっ、すごいね。
ね、すごいでしょ、綺麗でしょ。

「紙袋からドレス」 
こんなに大きな紙袋みたことないわ。彼女は笑う。
仕立て屋がドレスにゃ紙袋だって言うんだよ、おかしいだろ?
とっても素敵よ、ありがとう。
「紙袋から拳銃」
テーブルに向かい合う男二人、ホット珈琲、マグカップから立ち上る湯気、観葉植物、煙草の香り、手渡された紙袋。
紙袋を手渡した男は立ち上がり、レシートを持って店を出る。渡された男は紙袋の重みを感じながらトイレに入る。ちょうど出てきた中年とぶつかる、舌打ちが聞こえる、すぐさま鍵をかける。
音を立てないようにゆっくりと取り出す。
冷たくて艶やかに黒く光るそれを撫でる。


そんな事を考えていたらアイスコーヒーにさした紙ストローがふにゃふにゃになってしまった。
これを嫌う声がちらほらあるけれど(紙の味がして気持ち悪い、時間が経つとふやける等)



僕はそれ程嫌ではない。







追記

今週末東京で2公演ございます
11日は有難いことに満席、13日は豪華バンドセットでのぞみます


10月11日(金)代々木上原CITYLIGHTBOOK
さりとて裸で書店ツアー/みらん(弾き語り)
10月13日(日)青山 月見ル君想フ
いちやなぎ(バンドセット)、ベランダ、東郷清丸匚

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