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青で渡って、赤でとまって、黄であくび

夕方、急に冷え込んだ京都の街を歩いていた。
平日なのにもかかわらずそれなりの人で賑わっていた。
僕と同じように信号待ちをしている人が20人はいたと思う。
信号待ちをしている間、「やっぱり新品で買わなくても古本屋を一通り探してから買えばよかったんじゃないか」と先程丸善で買った本についてせこいことを考えていた。

そんな中信号が変わった。

かと思ったが違った。
一緒に信号待ちしていた人の幾人かが渡ってしまっているだけであった。
車道の車は止まっていたから歩道が青になる前のほんの隙間のような時間だったのだろう。
つられるようにして渡る人が大勢いる。まだ赤のままだということに気づいてそのまま止まっている人も幾らかいた。
秩序が掻き乱されている中僕はというと、赤だということには気づいて一度は立ち止まったのだが、ある程度歩き出してしまって、どうしようかとたじろいでいた。
いや、もっと正確に白状すると歩き出す一瞬先に赤だと気づいたが心奥底の渡ってしまえという思いに従って足を数歩動かしたものの貫き通せず立ち止まってしまったのだ。
赤に気づいたことの方が先行していたと思う。
結局おずおずと、一度は立ち止まったもののそのまま歩いていく人達にひきずられるようにして赤信号を渡り切ってしまったのだった。
渡り切った後うしろを振り返り、少しすると青信号に変わって決まりの悪い思いをした。
流れに完全に流されるでもなく、自らの意思を貫くのでもなく判然としない自分の心の内が、恥ずかしいもののように思えてしまった。

信号についてまだある。

時間がなくて急いでいる時、自転車を忙しなく漕いでいた。
前方の信号が赤に変わってしまったのを確認する。とても距離が短い信号で車も通っていないので無視してしまおうかと思った矢先に、少し先を走っている自転車に乗った女性がしっかりと停車した(当たり前だけど)
それにつられるようにして僕は意思に反して無意識のうちにブレーキを踏んでしまったのであった。

逆もある。

近所のコンビニに行くために夜道を歩いていた。前方の信号が点滅しているのが見える。
今から走れば間に合わないこともないが急ぐこともないのでそのまま歩くことにした。
赤信号に変わる。深夜のため車通りはない。
ほんの少し前を歩いていた若いお兄さんが、駆け足で変わりたてほやほやの赤信号を渡った。
なぜか僕も雛鳥が親鳥についていくように、とことこと走って、赤信号を渡ってしまった。おそらく前方のお兄さんが止まっていたならば僕も止まっていたのだろう。なんとも言い難い、赤、黄、青のどの色にもあてはまらぬ気持ちでコンビニに入った。


これを全部混ぜればこの気持ちを表現できるのかもしれないと出る時思った。




10月23日 京都西陣さらさ
10月24日 大阪心斎橋pangea
今月はライブこの2本のみ。来月以降もそんなにライブができなそうにないなのでぜひ遊びにきてください。寒くなって家出るの億劫になると思うから気が向いたらね。

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