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不意打ち冬将軍は小銭を数えてる
不意打ち冬将軍が小銭を数えてるのを見た(仮)
寝床で物を食うのは行儀が悪いのですよと教えられたからなのかどうなのか、誰も見ていなくとも寝床で食い物を持ち込むことはしない。
ただ横になって、テーブルの上にあるスナック菓子を見つめて暫しが経つ。
何をするにも億劫で、ただ座って菓子を口を運ぶという軽作業ですら面倒がって二の足を踏み、動けないでいる。
昨日お酒を飲んで晩飯を軽く済ませてしまったから朝から腹が減っているのに、いつまでも布団の中でもぞもぞしている。
最近いきなり冬らしくなって、本当にそれは急で、冬将軍の不意打ちの襲来。
だからもぞもぞしている。
すぐ用意できる食事はなく、あるのは目の前のジャガイモの薄切りスナックのみ。
ぼんやりとしていると、ちゃぶ台の下に五円玉があるのに気がついた。
あずかり知らない五円玉が落ちているのだけれど、ここは自分の家の中だから、「落ちている」というよりそこにあるという感じだ。
僕のもので違いない。
きっと脱ぎ捨てたズボンのポッケから出てきたのだろう。
菓子袋が置いてある、丁度真下に5円玉がある。
僕は5円玉を見つめて、ああ、そこに五円玉があるなと思った。
そしてまた菓子袋を見た。
そして携帯電話を探したりする。
えいっと起き出して、ぱりぱり朝食がわりのポテトチップスを食べると、買い物へ出かける元気が湧いてきた。
やっぱり国民的スナック菓子の力はすごい。湧き出た力を活用して、服を着替えて顔を洗って、靴を履いて近所のスーパーマーケットへ向かう。
一通り買ってお勘定場へ。細かいお会計になった。財布を開くと小銭がたくさんで是非ここで消費したいところで、いち、にい、さん、しいと小銭を数える。
あらま。
五円足りない。
僕は咄嗟に家にある五円を思った。なんだか責め立てられている気になった。
あれが百円だったならば見つけた時点で財布に納めていただろうし、五十円でもそうしただろうと思う。
家に帰ってすぐに五円玉をたくさん小銭が詰まった財布に入れました。