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チキンラーメンみたいな日



目を覚ます。
やってしまったという気持ちがにょきょき芽を出す。お空は日暮れ色。

今日のお昼、チキンラーメンを食べた。

子供の頃、コマーシャルを見てまんまと食べたくなり、母親の持つ買い物カゴにこっそり入れ、例に倣って卵一つ落とし、湯を入れ、期待膨らませながら犬のように待ち、丼をあけて、さあいざ、しかし膨らませた期待は頼りなく、みるみるうちに萎んでいく。
期待したほどでは無かった。
それから、コマーシャルに乗せられ、買わされて、うーん、やっぱり思った程ではない、というのを何度も繰り返した。
しかし結果はいつだって同じ、思った程ではなかった。僕はチキンラーメンの相性がよくないようであった。けれど何度だって食べてみたくなるのだった。

しかしこの間、幾度目にあたるか見当も付かぬ、リベンジ。
美味い。
すぐ美味しいしすごく美味しい。
本当に美味しい。
なんでこれまで分からなかったんだろう、なんて。
それから、チキンラーメンに凝って、夜半或いは昼に食べている。
今日もお昼に食べた。そして、ごろん、昼寝をしてしまったようだ、陽が落ちるまで。

やってしまった、という気持ちが、立派に育っていく。何をやってしまったのか?
「いいえ、特にやってしまったことはありません、だって、本日予定があるのは夜、それも22時から。それまでに時間はまだたっぷりあるもの」
という心持ちがある一方で、やってしまったという罪の意識がすくすくと身を絡めて、焦りに駆られた僕は、およおよ、おろおろ、リュックサックをひったくって、つっかけでお外に出る。往来には会社帰りであろう勤め人がまばら、およおよ、呑み屋は開店、殆ど何も入れていない、しなびたリュックサックを背中にはりつけて、夕暮れ時の町をぺたぺた鳴らしながら歩いた。
すれ違うみんなに見られているようなきがした。


いつものハンバアガアショップで冷たくて苦い珈琲をのむ。
唯一入っていた本をめくる。
そしてこれを書いた。

僕の焦燥はいつのまにか滲んで消えていた。
外を見ると、もう暗くなっている。


なんだかチキンラーメンみたいだなと思った。



追記 
9月スケジュール

9月21日 京都 誠光社/桂枝之進
9月22日(日)北加賀屋cafe&bar O'hara/
motion records弾き語り企画
9月29日 金山ブラジル珈琲/坂口恭平

ぜひぜひ遊びにきてくださいな

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