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掴み損ねた毎日を


1 夜のディープスポット

夜目には速いのかどうか判別つかない川の流れ、黒色に塗られた風景に紛れ込んだ蛙の大勢が、ゲコゲコ野太く鳴いている。蛙は水草につかまって流されないようにしているのだろうか。
そんな中、なぜ自死はいけないのかという話をする。
やっぱりいけないことなのかしら。
川は眠らないのだなと遠くを眺めながら、なぜ自ら命を絶ってはいけないのか、その答えは川の流れの中に刻み込まれているんじゃないかしらと思ってみたけれど、雄大な自然の前では愚問、塵芥同然。川辺は湿気て髪の毛がべたつく。
闇に沈んだ無数の石ころたちは今も川の流れを、時を受け流し続けている。


2 朝 目覚めれば

おかしな夢の話を聞いた。

台風。家の窓をみると、暴風にさらされたゴリラがいた。
ベランダにぽつねんと座るゴリラの唇は強風に煽られてひっくりかえっている。
犬猫ならまだしもゴリラ。家に入れてやるべきかどうか逡巡。しかしいくら屈強なゴリラとはいえ雨風吹き荒れる台風、可哀想。
結局家の者がゴリラを家に入れてやることにきめて、和室に避難させた。
ゴリラの様子が気になって、ふすまを少しだけ開けて中を覗き見ると、ゴリラの催眠術にはまってしまう。
ゴリラの目から紫色の光線が飛び出していて、それを目にしてしまうと、かかってしまうのだ。

家の中にゴリラがやってきたら、さぞ大迫力だろう。

3 干物に注意、昼

僕は肌が焼けやすい。長い間外にいたわけでもないのに、焼けてしまう。
日焼け止めクリームは好きでないけれど塗っている。でも焼けちゃう。
お肌に含まれる水分量が少ないと、すぐ焼けてしまうらしい。干物がすぐカリカリに焼けてしまうのと一緒で。
なるほど。僕は乾燥肌だから、そりゃそうだ。
干物肌。


4 朝餉 にがい思い出

コンビニエンスストアで朝食を買う
お勘定場には、ゆでたまご、豆大福、カレーパン、豆大福はふつうのとよもぎがある。
よもぎ餅に苦い思い出がある。あれは二十年以上前。
学校の課外授業、川をお散歩、川畔のヨモギをつんで、よもぎ餅を給食のおばちゃんたちにつくってもらう。
よもぎ探し、たくさんとる。
給食の時間、みんなで摘んだよもぎをつかった餅。わいわい。食べる。
吐き出す子供達続出。僕も嘔吐。
原っぱがつめこまれた餅、くさい餅、こんなもの食えない。
不味いまずい、口々に文句垂れる子供達。先生は笑っていた、気がする。

教師である兄に聞いたところ、生徒に採らせた野草を使って調理するのは、現在の教育の現場ではなかなか難しいようだ。
これで拾い喰いする子供はいなくなりそうなものだけれど。



僕は普通の豆大福、カレーパンを買った。



5 昼餉 のっけてみた


ぬか漬けにした大根をおろして、冷やしうどんにのっけてみた。悪くない。
部屋が暑くなりすぎるのもあって、ぬか床が安定しないというか、乳酸菌が増えすぎて酸っぱくなってしまう。
ぬか床が小さいと少しの変化でも影響を受けやすく、味が全然安定しない。
その酸っぱさが功を奏して、うどんに結構あう、けれど、普通の大根おろしのが好み。


6 なぜさんまは黄色くなるのか、誰も知らないまま夕餉のさんま



あらま、なぜ今ここに??
目の前には秋刀魚、さんまといえば秋の味覚の代表格で今は6月になったばかり、随分と早い登場に、思わず足を止め、暫く考えた。
一尾、百圓、、旬を外れているためがみんなほそっこく、なんだか貧相だ。しかし、この頃さんまを食べてない、百圓だと高くはないのだろうが、旬のものだともっと大きくまるまる太ってる。
買い物かごの中にあるのはカットされてある九条ネギに半分カットされた大根、というのも越前そばを親からもらって、お昼におろしそばを食おうと算段をつけたところで、さんま。
そばに大根おろしもいいし、さんまに大根おろしもいい。

ということで、さんまを買った。
季節外れのさんまちゃん。
調べてみると、秋刀魚漁の不漁によって、改善策として二ヶ月ほど前倒しで出漁しているらしい。
全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)によると、5月半ばから18隻が日本のはるか沖合の公海に向けて出漁する予定という。
早ければ、5月下旬から6月上旬に帰港して初水揚げされる見通し。


「さんまが黄色くなる理由はいまだ解明されていない」

さんまを調べいて目についた。
黄色?さんまが?
買ったものは黄色くない。
細っこく味が少ないので焼いたら干物みたいになった、骨ごとバリバリ食べた


新鮮なものはくちばしが黄色いのだそうな。






追記

第一小説集「さりとて裸でちくわ笛」を持って
いろんな人といろんなところへ
どうぞよろしくお願いします
あなたに会えることを楽しみに

追記

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