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哀れなモンミレイユと僕に外交官のプリンを




「シャトーブリアン」って洋菓子のようだけれど、違うのか。なんでまた、そんな名前が、おかしいじゃないか、なんだか違和感があるぞ。
喫茶店やカフェの冷蔵ケースにアートのように陳列されてそうなものだけれど、なぜそう思うのか自分でもわからないけれど、この感覚に確固たる自信はないのだけれど、シャトーブリアンの正体は牛の肉、、、こうなると納得するまでに時間がかかる。
納得しようがしまいが、「あちらさん」はどちらでもいいことだろうし、第一これまでも、そしてこれからも、シャトーブリアンという言葉を発する機会なかなかないだろうから、僕としてもどちらでも良いのは良いのだけれど、また今日みたいにテレビなんかでシャトーブリアンが目の前に出てきたときには、魚の小骨が喉につかえたときのような気持ちになってしまうだろうから、それはやっぱり腹が立つ。
パティシエが丹精込めてつくったシャトーブリアンということにしてもらえないだろうかと、考えているうちに、鼻のよこっちょが痛んだ。
嫌な痛みにほとほと嫌になった。鏡で自分の顔をみるのも億劫で、たしかめて、赤くなってでもしたら、いよいよシャトーブリアンはお菓子ということにしてもらわないと気が済まなくなる。痛みを伴うデキモノは赤くなるのだということを経験上知っている。
詰まった鼻をぐずぐずさせ、咳払いを一つ。
肌が乾燥でぴりぴりと痛む。昔からアトピーで、すぐ肌が駄目になっちまう。
奥歯の奥にできた口内炎のせいか、今この瞬間に産声をあげたデキモノのせいか、鼻詰まりのせいか、乾燥した肌のせいか、シャトーブリアンのせいか、なんだか機嫌が良くない。
なにがヒレの真ん中だ。勝手に牛さんのお肉に小洒落た名前をつけて、いい気になって。
食う方も食う方だ、知らぬ存ぜぬ、ただただうまそうに肉を食っている。おかしいじゃないか、そんな菓子みたいな名前の肉、おかしい、どうもおかしい、口内炎、鼻詰まり、デキモノ、乾燥肌が同時に発症するのはなんとなくわかるけれど(賛同はできぬものの)、肉の件は納得できない。


シャトーブリアンの語源はフランスの政治家であり、ロマン派の作家フランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンという人からきているらしい。
お抱えの料理人モンミレイユという人が考案して、それを食べたシャトーブリアンがハマったのだそうな。
もともとはモンミレイユがつくったレシピそのもの、料理名だったのが転じて肉の部位を指す言葉になったようだ。それに、このモンミレイユ、「シャトーブリアンプリン」というデザートの考案者でもあるようだ。(今は「外交官のプリン」とよばれているらしい)
そっちの方がよっぽどしっくりくる。うんうん。
やはりな、、してやったり!未来が開けた、やまない雨はないのだ、という気になって、気晴らしになりました。

つくったのはモンミレイユなのに、ただうまいうまいと食べただけのシャトーブリアンの方が名前になっちゃうのは、なんだか可哀想だなと慮れるほどに心にゆとりができた。


鼻の横っちょは、やっぱり赤。








追記
ついでにサーロインステーキの語源も調べてみましたら、腰の肉(ロイン)と貴族階級の呼称であるサーを合わせた言葉なんだそうな。
王様があまりに美味くて、サーの称号をあげちゃったみたいです

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