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二段ベッドはお空の上

家族でマンション暮らしをしていたことがある。

子供部屋と呼ばれるものがあたえられた。とはいってもとても小さな部屋で、中央にでんと二段ベットが置かれ、それが空間の大体を占めている。あとは衣装ケースやボタン式のテレビが置いてあるくらい。それでいっぱいになってしまうような、子供部屋というよりかは物置部屋のような所だったと思う。(後に判明したのが防音室だったようで、当時感じた閉塞感はそういうことだったのかと合点がいった。)
数年、兄と二人で二段ベットで寝ていた。
兄弟二人で上の段を取りあった。天井が高くない部屋だったので、上の段は、目の前に天井があり一段目にくらべ窮屈且つ、梯子を使って登らなければならいという煩わしさもある。それなのに僕たち兄弟は上の段をとりあったのだった。

兄弟間の力関係ははっきりとしていて(ここでは詳しく書かないこととする)、もちろん上の段で寝るのは、やはり兄のほうだった。
僕は上の段で寝る兄が羨ましかった。兄がいない夜がやってくると上で寝てみたりすることもあった。高いところで眠るという言い知れぬ浪漫がすぐそこにあったのだ。
寝ているのに、目線が人の頭の上ほどの高さがあり、まるで木の上で眠っているような感覚。
何の作品だったか忘れてたが兄弟や姉妹が二段ベットで寝ている時は、だいたいが兄(姉)が下の段だったと思う。うちは稀なケースなんだろうか。
夜中、ひそひそと上下でお話しするのもいいものだなと今でも思う。絶妙な距離感が心地よいのだ。(今は殆ど二段ベットで寝る機会なんかありませんが、、)
思えば恋人同士で二段ベットで寝るというのはあまり聞かないし、そんな作品も目にしたことがない。恋人同士ではこの距離はやや遠すぎるのだろう。
上と下で其々の空間が切り取られていて、同じ部屋にいるというのに其々が見ている風景が違う。この隔たりによって僕の中で、より世界が広がっていたのだ。

「隔たりによって広がる」不思議で面白いなと思う。
林間学校での寝床は二段ベットだった記憶がある。やはり上の段を陣取った。夜中違う部屋で寝ている筈の友達が、こそこそと部屋から抜け出して、ちょっかいをかけに来たのを、少し高い目線から見ていたのをほんの朧げながら覚えている。


今だったら下をとってしまうな。

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