神様はソフトクリーム
神様はソフトクリームに宿るのか?(仮)
「お待たせしました」
はいはい。
げ。あらま。
お待たせしましたなんて滅相もありません、僕は全然待ってなんかいなくて、先程買った本の解説から読もうとほんの数行読んで、これは先に読まない方がいい類いのものかもしれないと、途中で読むのやめたその時、注文してからすぐ、店員さんが和かな笑顔をもってして運んできてくれたのはホット珈琲。
そんな僕の体には細かい汗が滲み、喉はからから、それにくわえて空調が効いてるのか効いていないのか、湿気ている店内、是が非でもアイス珈琲が飲みたいというところで席に座ってポチポチ。
僕が間違えた。端末から注文、なんども間違えたことがある、またやってしまった。
あらま。
店員さんが去った後、少しの間、どうしたものかと考える。
触れてみるとやっぱり、というか思っていたより余程熱い。今はそんな気分ではさらさらない。かといってアイコを追加注文する気にはなれないし、冷めたホット珈琲を二杯目に飲む気にもなれそうにない。
僕に残された時間は1時間もない。
立ちゆかない状況に途方に暮れ、辺りを迂闊に眺め、にっちもさっちもいかぬ人生の厳しさ、己の至らなさに打ちひしがれながら、諦めきれぬ往生際の悪い頭の片隅では、一条の光をさがしもとめて打開案を探るも、やっぱり駄目。どうしよう。
万事休すかと思われたその時。
天佑。
現れたのだ。それは突然に颯爽と目の前に。
着丈の合ったスーツに短く刈り込まれた清潔感のある頭髪、きちんと整えられた髭、ぴかぴかの革靴、中年男性。
ホット珈琲に反対の手にはソフトクリーム。
男らしく時間もかけずに、ぱくぱく。珈琲を飲む、きびきびと迷いのない所作で、ほんの一瞬でソフトクリームを平らげる。
そして彼は人を救った事実をつゆも知らず、席を立つ。
「お待たせしました」
先程とはまた違う店員さん。
ソフトクリーム。
神様が持ってきてくれたソフトクリーム。
本当ちょうどいい塩梅。
はあ、ありがたやありがたや。なむなむ。
今週末
6月
15日 塩屋旧グッゲンハイム邸
16日 二条nano
ウッドベース、エレキマンドリン
三人編成でございます
ぜひ遊びにきてくださいまし