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もういいよ#02 いつもと違う平日の午後

たった今、数分前には想像もしないことが起きた。なんと昼の12時半にもかかわらず、夫が帰宅したのだ。予期しておかずとも、私のひとり時間を遮る可能性のひとつに常に入れておかなければならなかったのに、すっかりノーガードだった。

平日毎朝6時前に出勤して、定時に退勤しても11時間も働いてくる彼なのだから、むしろこんな日があるべきだ。「仕事があまりなかったから帰ってきた」のだそう。どんなに不意打ちでもやさしく迎え入れるべきなのに、小さな舌打ちが出なくてよかった〜(あぶね〜!)と心の中で胸を撫で下ろすくらいには「…なんだよ!」と思った(事実に忠実な文章を書くこともひとつの目的としておりますため、時折出てしまう口の悪さはご容赦ください)。

彼は自分でラーメンのようなものを作って、私の向かいに座って食べ始める。私は残念な気持ちをやり過ごすように、ひたすら三四郎が出演しているバラエティー番組をTVerで次々と視聴し続ける。こんなにTVerタイムを取る予定じゃなかった。ほほのみのキャンドルメイカーみきちゃんによるキャンドルの炎も、なんだか気まずそうに揺れている。場違いなのは誰だ?誰でもない。みんなここに居ていい。

今日、家でひとりでしたかったこと。なんていってもそれは、ひとり静かにnoteを書くとか、オンライン講座の視聴とかであって、そんなにも家族が居ると都合が悪いわけことではなかった。しかしこの時間は、家族のいない空間で私だけの時間を過ごせる、貴重な至福のme time。とにかく誰にも邪魔されたくなかったのだ。

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それにしても、こうして娘がいない家に2人で居るなんて、いつぶりだろう。


夫婦から3人の家族になり、5年以上が経つ。私たち2人は娘の存在があっての2人となった。娘の世話の必要がない時は、それぞれがそれぞれの内容のひとり時間を過ごしているし、2人が揃う時はそこに必ず娘がいる。そういうタイプの夫婦。だからだ、2人で居ることにこんなにも違和感を感じるのは。平日の昼間に夫が家に居るから、ということだけが理由ではない。

“自分の時間を邪魔された私”ばかり強調してしまったが、それは彼にとっても同じだと、冒頭よりも冷静になってきた頭で想像する。彼にとって自分だけの時間は、私よりも少ない。仕事が休みで在宅となれば、私から子の世話のバトンを渡される。毎週末大好きなゴルフに出かけるなど、生活のバランスは彼なりにとっているはずだけれど、もっと家で寛ぎたいと感じているかもしれない。

なんとか脳内にとどめるも、その瞬間は口汚く愚痴っていた私だったが、ゆるやかに寄り添いモードへ移行。不意に訪れた彼との2人だけの時間に、温かさを感じ始めた。

間もなく娘のお迎えの時間となり、家を出た。

「彼も、、もっと家で寛ぎたいと感じているかもしれない、、」なんて言い出す少し前、彼が帰宅した数分後には、午後、ひとりで出かけようと決めていた。普段は娘に合わせた時間を過ごしている平日の午後だけれど、今日はひとけの少ない街にひとりで繰り出すこととした。私のひとり時間は彼の帰宅により奪われたんじゃない、別の時間に違う形となって新たに生み出されたのだ。この発想の転換があまりに速くて、自分でも可笑しかった。

とある平日の午後に起きたできごと。

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