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いつか天になる - あるいは猫との別れ

友人と「猫は死ぬと何になって何処へゆくのかな」という話をした。

子猫を庭に埋めた人は「子猫は風になって駆けまわり、庭の草花を揺らす」と言った。

その人はきっと庭の草が風で揺れるたびに、その子猫のことを思い出しては泣くのだろう。小さな命を失った人は長い時間、自分を責め続ける。
しかし同時にその人は、子猫は風になってそばを駆けまわっていることも知っている。風はその人を慰めるだろう。
短く終わった命は、永遠に吹く風になるのだ。

老猫を看取った人は「老猫は月になって毎晩その眼を細める」と言った。

月が次第にその弦を細くしていくとき、その人は老猫がにんまりと笑う姿を思い浮かべるという。
満月の夜は、いったい何を見つめてそんなに楽しそうなのだろう。そうしてまた、だんだんと細められる眼。美しいその瞳孔。
新月の夜だけは、老猫は瞳を閉じて、その夜のどこかに静かに座っているのだろう。

私の世界では、猫は死ぬと宇宙になる。

どちらかというと、宇宙の暗闇が少しのあいだ、猫の形になってそばにいてくれたのだと思っている。
大きくて途方もない、抱えられないほどの存在に、ずっと抱きしめられていたことを知る。
今まで失ってきた、自分の両腕で簡単に抱えられる小さな命は、今や捉えきれないほどの巨大な存在に戻っている。

庭を駆けぬける小さな風、夜を見つめる細められた月、途方もない天。

すべてが静かで安らかで、それが猫に対して思う、私たちのすべてだろう。

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千十九
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