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先輩方と話す

以前の職場の同僚だった3人の先輩方にお会いした。

久しぶりである。
何年ぶりだろう。
こうして再開できることが、感慨深い。

場所は、老舗のコーヒーショップ。
(カフェとちゃう。喫茶店ともちゃう。)
お客さんの年齢層は高く、みなさんのんびりと過ごされている。
私たちが、そこに混じったとて、たいした違和感を感じないことに、
また別の感慨もあり。

そこのコーヒーショップは、
モーニングが有名で、
午前7時の開店前には、もう数人が並んでいる。
そして、開店するや否や、あっという間に満席となる。

珈琲がまあまあ美味しいのと、
カップが美しいのと、
モーニングメニューが豊富なのと、
天井が高いのと、
椅子やテーブルが昭和チックなのと、
店員さんが出しゃばり過ぎないのと、
(一人だけ、飛び出す絵本のように、前面に出てこられる方がいるけど。)
ゆったり過ごせる雰囲気が漂っているなど、
人気の理由は、たくさん考えられる。

ただ、ひとつ。
私にとっての難点は、
駐車場に車が入れにくいところ。
いったい、何回切り返せばいいねん!というくらいに、
せまい駐車場である。
そこに、おじい様がたは、大きな異国の車で乗り付けてこられる。
みなさん、運転がお上手やねんなあ。

と、そんなお店で、私を入れた4人でお茶会となったのである。

そこで、私はブレンドを注文した。
先輩の一人は、抹茶ラテを。
1人は、ブレンドとモンブラン。
そして、もう一人は、
「う~ん。今、家でお茶を飲んできたからなあ。おなかタプタプやし。
わたし~。注文せんでもいい?」
と、きた。
それも、まったく動じずに、毅然と言い放っていた。

びっくりした。
たとえ、おなかタプタプでも、お店に来たからには、なんぞ注文するもんとちゃうんやろか。
お店とお客との、最低限のルールではないのか。
ここで、注文しなかったら、
ただで席を貸しているだけになり、お店としては、なんのメリットもないやんか。
それはないやろ。
そらあかんやろ。
あかんて言われたら、どうしはるんやろ。

でも、そんな心配は必要なかった。
お店の人は、先輩の言葉に、
「はい。」
と言って、承諾していた。

えっ?
いいのん?
それって、許されるの?
なんか、わたしが代わりに注文したらいいんやろか。
え~~~。


でも、相手は先輩なので、差し出がましいこともできず、
他の先輩方も、まったく普通にしておられるので、まあいいかと、納得することにした。


このように、出だしでかなり大きく心は乱れたものの、
本来素敵な先輩方なので、
いろいろと励まされたりして、楽しく有意義な時間を過ごすことができた。
困ったことがあると、すぐに駆けつけてくれ、話を聞いてくれる方たちである。
そして、忖度なしで、思ったことをはっきりと言ってくれ、アドバイスをくれたりする。
とても頼りになる方々である。

あっと言う間に、1時間半が過ぎていた。

すると、さきほど注文を拒否した先輩が、おもむろに手を挙げて
「わたし、のどが渇いたわ。珈琲をくださる?」
と店員さんに注文した。
「くださる?」て。
無注文で過ごしていたというのに、その上品な表現。
これいかに。

他の3人も慌ててお代わりの注文をする。
なぜか、他の3人の方が、あたふたとしていて、まだ1杯目の注文者であるその先輩が、一番堂々としていたのが、なんとなく腑に落ちなかったけど。

今でも、そのお店の前を車で通ると、あのシーンを思いだして笑けてくる。
すっごく素敵な先輩なんやけど、夫にその方のことを話すときには、
毎回、
「コーヒーショップで注文しはらへんかった人」という説明をしてしまう。
他に形容すべきいいところはいっぱいある方やのに。


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